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ながのを彩る人たち

CHALLENGE

安心して
挑戦できる

「それな!」と共感してもらえる事業を通して社会課題の解決に挑戦する

伊藤優里さん

株式会社SORENA

メインビジュアル

持続可能な社会への関心が高まる中、ユニークな取り組みが注目されている起業家がいます。株式会社SORENA(長野市)の代表取締役・伊藤優里さんは、高知県出身。信州大学繊維学部を卒業し、リンゴの廃棄物を活用した革新的な素材「りんごレザレット」を開発。食品ロスなど社会課題を解決する取り組みの事業化に、果敢に挑戦しています。

文・写真 吉田 淳子(株式会社ビー・クス)

いま注目のテキスタイル「りんごレザレット」とは

りんごなどの農産物をジュース等に加工する際に出る残渣(ざんさ:しぼりかす)などを粉末にし、人工皮革に加工した「りんごレザレット(旧称:りんごレザー)」。一般的な人工皮革は石油を原料とする樹脂が主成分ですが、「りんごレザレット」はりんご残渣の粉末を混ぜることによって、石油由来原料の使用量を極力減らしてつくることができる、いま注目の「エシカル」なテキスタイルです。
 
「長野の農産物と言えばりんごでしょ、と思って。」と話すのは、開発者で、株式会社SORENA代表取締役の伊藤優里さん。2021年、長野県ベンチャーコンテストにて奨励賞を受賞。2022年には、飯綱町主催のビジネスコンテストで準グランプリを獲得。以来、多くのメディアから注目を集めています。
 

軽くて丈夫な、女性に人気のバッグ。りんご由来なんて驚きです。
高級感がありながら、耐久性も高く、経年の変化も楽しめるのが特長だそう。

創業のきっかけー身近に直面した社会問題。直感から行動を起こす

信州大学に進学後、長野県内にある食品会社に就職した伊藤さん。結婚して子育てをしながらキャリアを重ねていましたが、仕事の中で日々、食品ロスをはじめとした食品業界の現状課題を目の当たりにしていました。加工のために原材料として入荷する果物は輸入物が多く、たまに入ってくる国産の原料も、特に秋口の梨や桃などは虫の被害や傷みがあったりすると品質管理上工場に入れることができず、そのまま廃棄場に運ばれていたそうです。伊藤さん自身もフォークリフトに乗り、それらを廃棄場に運ぶ作業をすることもあったため、毎度やるせないこの現状を何とかできないものかと常々感じていました。
 
「仕事で直面していた『食品ロス』問題に加えて、物価高や円安、食糧自給率の低下など、さまざまな社会問題がどんどん気になっていきました。ちょうどコロナの時期でもありました。会社という小さな環境、狭い常識の中でこのまま働いているだけでいいのか。時代が目まぐるしく変わっていくのに、自分が何も行動しないことで、子どもが大きくなったときに助言もしてあげられない親であっていいのか、と思い立ちました」
 
そうして、10年間勤務した会社を退職。輸入雑貨のネット販売などをしながら事業の方向を模索していたところ、たまたま訪れた東京の国際的な展示会で、運命の出会いを果たします。
 
「バナナペーパーやパイナップルレザーといった『サスティナブル素材』を見て、これは長野でもできるのでは?と直感的に思ったんです」
 
信州大学は繊維学部出身の伊藤さん。食品会社での知識や経験も生かせるこの分野なら、自分も社会の役に立てるかもしれない!!ビビビッと、そして、「しっくり」きたそうです。
 

りんごだけでなく、さまざまな農産物からつくられた粉末のサンプル

よそ(他県)から来たからこそわかる「長野の魅力」

伊藤さんは、高知県生まれで九州育ち。もともと長野県には縁もゆかりもありませんでした。大学進学の際、デザインや芸術に関わるような勉強がしたいと、いくつか受験を考える選択肢のひとつに、信州大学の繊維学部 感性工学科がありました。試験のため、初めて訪れたという長野県。
 
「美しい山々に囲まれて、澄んだ空気に驚きました。これはここに来ないと味わえない空気だわ!!と感動し、信州大学への入学を決めました。私は、長野に住む誰よりも長野の景色の良さを知っていると思います」
 
そして卒業後も長野にとどまり、県内の企業に就職された伊藤さん。登山やスキーなど、とりたてて「山好き」というわけではないものの、首都圏からも近く安心して子育てができる長野という環境は、「暮らすこと自体が心地よい」と、今も感じているそうです。
 

「りんご」の付加価値を高める「レザー」

さまざまあるテキスタイルの中でも「レザー」という形に着目したのは、長野県の代表的な農産物「りんご」の価値を高めたかったから、と伊藤さん。
 
「コットンやシルクなど繊維はいろいろありますが、比較的高価格のレザーなら『長野のりんごは高品質』というイメージを、間接的に高められると考えました」
 
動物の革ではない人工皮革は、世界的に「ヴィーガンレザー」と呼ばれます。当時、海外製のヴィーガンレザーを輸入している人はいましたが、国産で作っている人はいなかったそうです。そのため、開発には海外の文献を参考にするしかありませんでした。翻訳に苦しみながら県の工業技術総合センターで機械を借りて研究を重ね、約半年で基本的な製造方法を確立。
 
「一般の人工皮革や本革に劣らない品質にするため、多くの方々と連携して開発を進めました。りんごの産地・飯綱町から原料を供給していただいたり、量産化に向けてはメーカーさんにもたくさん協力していただきました」
 
製品化できたのが2022年。プレスリリースを発表すると、さまざまなメディアから引き合いがあり、露出が増加。脱炭素社会を目指すための地元新聞社の企画で、長野県の阿部知事とも対談するなど、伊藤さんの活動に対する認知がぐんぐん広がっていきました。
 

メーカーさんの協力によって量産化が可能に。色もいろいろ。大きなものも作れます

止まらない展開、これからの展望

りんごレザレットは、これもまた地元の皮革製品加工会社の協力により、名刺入れやキーケース、バッグなどに加工し、ECサイト「Rerigo」で販売しています。SDGsへの感心の高まりから、ノベルティとしてりんごレザレットを使用した小物を起用する企業も着実に増えているそう。
 
現在は、長野県の創業支援センターの一室をラボとして借りていますが、引っ越し準備中だとか(2026年8月取材時)。今後は長野市の「スタートアップ補助金」を活用して、面談もできる、ギャラリー的な場所を長野市内に作ろうと計画しています。
 
「長野市を訪問された方から、『ちょっと知ってるから見に来たんだけど、どこにあるの?』ってお問い合わせいただいたりすることもあって。実際に製品に触れていただくのはもちろん、りんごジュースを試飲したりしながら、打ち合わせをしたり、ワークショップなども開催できるような、そんな場所にしたいなと思っているんです」
 

手に取りやすいサンプルで商品イメージの打ち合わせもできます。ぜひりんごジュースを飲みながら!

会社名「SORENA」への思い

起業するときに、もう決めていたという社名「SORENA」。お客様に「それな!」と共感してもらえるような取り組み、事業を実現できたらとの伊藤さんの思いが詰まった名前です。
 
「すでに登録している会社があるかと思っていましたが、意外とすんなり登録できて驚きました」
 
県内外の自治体から「うちの地元特産物で何かできませんか?」といった相談や、大手商社やホテルなどさまざまな業界からの問い合わせも増加中だとか。またこのごろは、学校のSDGs教育やワークショップ、講演会などでも引っ張りだこです。
 
「ひとつひとつ目の前のことをこなしていきながら、これからもたくさんの社会課題に向き合っていきたいと思っています」
 
等身大でできることを誠実に積み重ねて、地域の循環を次の世代へつないでいく。そんなコンセプトが、じんわりと、そして着実に広がっている株式会社SORENA。伊藤さんの、直感を行動につなげるバイタリティは、長野という地域がより良い方向に向かうアクセラレータになってくれる予感がします。
 

会える場所

株式会社SORENA

ホームページ:https://sorena39.com/

ホームページ:リンクはこちら

Instagram:https://www.instagram.com/ringo_leather/

Instagram:リンクはこちら

ECサイト:https://rerigo.jp

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