長野市復興だより

「やっているよ!」と
皆さんに勇気を与えられるように

穂の香沼倉洋さん

長野市豊野町にあるベーカリー「穂の香」は、10月13日に床上2mまで浸水し、店舗と工場の全てが水没。翌日から再起のために立ち上がり、3ヶ月後にリニューアルオープンを成し遂げた店主の沼倉さんに、復活にかけた想いなどを伺いました。

人生で二度目の罹災

2015年の10月10日に開店し、ちょうど4周年記念のフェアをやっている最中でした。毎朝早朝からパンを焼いているので、当日は車が出せるぎりぎりのタイミングで避難することができました。1階の機械類は全滅でしたが、天井までは浸からずに済み、2階の住居部分が生きていたことが不幸中の幸いでした。
私は若い頃、神戸のパン屋で修業していて、阪神大震災を経験しました。あの時に見た、通りに遺体が並べられているような状況に比べれば、今回は全然マシだと思うようにしました。そうやって考えないとやってらんないですよ。自然にはかなわないし、いつまでもいじけてたってしょうがないと。ただ、お店がなければ収入もないし、遊んでる暇はないので、早く建て直したい一心でした。
翌日から駆けつけてくれた友人たちと壁と床を剥がす作業に取り掛かり、片っ端からやれる事をやりました。大工さんにも優先的にやってもらう事ができて本当に運が良かったと思います。

2m浸水し、什器や機械類が散乱(10月14日撮影)

町に明かりを灯したい

被災して3ヶ月後、自分の誕生日でもある1月13日にリニューアルオープンに漕ぎ着けました。まだご近所さんも戻って来てなくて、夜も真っ暗なので、お客さんも来ないだろうと思っていましたが、とりあえず「ここはやってるよ」という事をわかってもらって、安心してもらえればいいという気持ちで開けました。けれど、開店当日にテレビ取材が来てくれたり、いろいろなメディアに取り上げられたおかげで、あちこちからお客さんが来てくれて、避難所や仮設から来てくれるご近所さんもいて、予想以上の反響でした。心配してくださった常連さんの中には「やってるんだね」って泣いて喜んでくれる人もいて、開けて良かったなと思いました。

穂の香の新店舗に掲げる看板は友人が作ってくれた

恩を忘れず邁進する日々

リニューアルオープンから2ヶ月ほどが経ち、以前とほぼ同数の50〜60種類のパンが並べられるようになりました。パティシエの妻が担当するケーキは焼き菓子の機械や材料がまだ揃っていないので、徐々に再開できるように頑張っているところです。
今回の被災で、お客さんや友人に多くのご心配や励ましの声をいただき、中には「こういうものが一番いいだろう」と小麦粉やパンの材料を大量にかついで来てくれた人もいて、本当にありがたかったです。今度どこかで災害があった時には、自分たちも店を休んででも応援に駆けつけたいと思っています。

パンは国産小麦(うち半分は長野県産)を使用

16時〜17時頃には品切れで閉店になる場合もあるので、早めのご来店を

穂の香

私たちの持っているネットワークを使えば、たとえ一人では解決できないこともその糸口を一緒に見つけることができると思うので、被災された農家やものづくりに関わる方からのお問合せをお待ちしています。

住所 長野市豊野町豊野478-33
TEL 026-219-2009
営業時間 7:30〜18:30
定休日 火曜・第3水曜