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増屋納豆店 代表取締役 西條純一さん

日本一の納豆店ここにあり

小粒、中粒、大粒、ひきわり…スーパーには様々な納豆が並んでいます。そのなかでひと際大きなパッケージが目を引く「川中島納豆」。実は全国納豆鑑評会最優秀賞に値する農林水産大臣賞を2回も受賞したことがある日本一の納豆なのです。

▲ 全国納豆組合に所属する納豆屋が応募する鑑評会に参加。約200アイテムのなかから、見た目、香り、食感等が審査されます。

住宅街で生まれた納豆

この日本一の納豆、さぞかし大きな工場で作られているかと思いきや、実は長野市篠ノ井のごく普通の住宅街の一角で作られています。増屋納豆店は従業員4人の中小企業。約70年前、地域や近所の方々のために納豆の小売りを始めたことがきっかけで創業されました。その後先代が約40年前納豆屋として法人化、「川中島平」から命名された「川中島納豆」が市場に出回ることとなりました。現在の西條社長は平成17年より2代目として納豆づくりに励んでいます。増屋納豆店で1日に製造される納豆は約2,000個。その大半は県内の北信や中信のスーパーをメインに販売されています。

▲ 住宅街に工場があります。

大粒で生き残る

「川中島納豆」は他の納豆と比較すると非常に大粒です。一粒が1センチメートルほどあり、歯ごたえもしっかりしているのが特徴です。絶妙な油分と皮の固さ、そしてこの大きさがうまみを引き出します。大豆は長野県松本市の松本平で作られた「ツブホマレ」という品種を使用しています。

▲ 他社製品に比べると巨大な豆が特徴です。

「小粒の納豆は大手メーカーでも沢山作られていますが、ほかのメーカーとの差別化を図るためにも、「ツブホマレ」にはこだわりたい。長野県の農作物は良いものが多いですよね。だからこそ、地産地消にはこだわりたいですね。「川中島納豆」には、やや塩気が強く生醤油に近いタレが合います。長野県の方は濃い味が好きなので、意識はしています。やはり、地元の納豆を地元の人に食べてもらいたいですから。それに、タレがしょっぱい方が、大豆のうまみや甘みをより感じてもらえるのではないかと思っています」

古臭さを保ったパッケージ

「川中島納豆」のパッケージはマイナーチェンジさえあるものの、ここ数十年ほとんど変わっていません。
 
「古臭さがいいかなと思っています。実は、社長就任当初、代がわりしたし、パッケージをリニューアルしてみようと試作品を作ってみたことがあります。しかし、色々作ってみたものの、変えてしまったら「川中島納豆」ではなくなってしまう、との思いが強くなり、結局昔のままのパッケージを利用しています。このデザインや色、古臭いでしょ?(笑)でも、大きさも含め、ちょっと特殊なのが「川中島納豆」の個性だと思っています」

▲ 変わらない「川中島納豆」のパッケージ。12~13センチメートル四方の大きさ。

あえて90グラムで勝負、家族団らんの一角に

「川中島納豆」は一箱90グラムと、他社の納豆と比較するとかなり大きめで販売しています。「もう少し小さいパッケージのものを」「パッケージから直接食べられるような形にしてほしい」等、お客さまからも要望をいただくようですが、この大きさは変えるつもりはないそうです。
 
「大きなどんぶりに納豆をガバッと入れて、みんなで食卓を囲んで、シェアしながら食べる。そういう昔ながらの感覚を残したいと思っていて。2,3人で分け合いながら食べてもらいたいですよね。“イマドキ”でないことは分かっています、需要に合っていないことも分かっています。でもね、あえてちょっと変わったもので生き残っていく感じですかね。『それでもこういうのもありだよね』と言ってくれるお客さま、ファンの皆さまに食べて欲しい。家族団らんの一角にあって欲しいと思っているのです」

変わらないことといえば、納豆菌も先代の頃から変えていないようです。何百種類もある納豆菌から、1~2種類の納豆菌を使用し続けています。また、卸値も長らく変えていないそうです。通常通り作って、自然体で。それがそのまま評価されることが社長の思いです。


 
▲ カラカラの乾燥大豆→「浸漬」豆を水に浸すこと約20時間→「蒸煮」豆を煮る・蒸す→納豆菌をかけてのパッケージ→発酵室に入れて18時間、発酵過程では時間によって温度を変化させるのがポイント→冷蔵3時間→市場に出回る。納豆が1個出来上がるまで足掛け3日間かかる。

実はさまざまな食べ方を楽しめる納豆

「卸業者さんの関係や信州フェア等で県外に出回ることはありますが、基本的には長野県の北信・中信のお客さまを大切に考えています。もちろん、他県の方も食べていただく機会があり、豆の大きさにびっくりした、おいしかったと言って注文いただいたりすれば、それはそれで嬉しいことですね。また、「川中島納豆」は正直子どもには大きすぎる豆です。大人でも小粒でサラサラと流し込むものがお好きな方もいますよね。それはそれでいいと思っています。うちの商品は“好みで食べていただくもの”。だからこそ食べ方も本当に人それぞれでいいと思っています。諸説あって、うまみ成分はネバネバの糸から出るのでおいしくなるから300回くらいかき混ぜた方がいい、なんてことも言われていますよね。でも、私個人的には10回くらいかきまぜてサラサラと食べるのもいいと思っています。食べ方は人それぞれ好みがあるので、ご自由に、その食べ方を大切にしてほしい。ネギや玉ねぎ、ミョウガなんか混ぜてもおいしく召し上がれます。それに、チャーハン、カレー、オムレツ、炒め物、巾着や餃子等揚げ物にも納豆が合うんです。油ものと合わせるとコクが出て意外と合います。温めると香りが強くなるので、納豆好きの方は火を入れた食べ方というのもおすすめです。基本は白いご飯に合いますが、私の知り合いはつまみとして食べている方もいます。それぞれ楽しみながら食べていただきたいですね」
と社長は語ります。

▲ 3日間かけた「川中島納豆」いざ納品です。

庶民から愛される食べ物でありたい

納豆のレベルが高い長野県。県内の他の納豆店もそれぞれ賞を取っています。社長も県内の他社のことは本当に頼りにしています。言いにくいことも遠慮なく言い合い、社長同士切磋琢磨し、とても仲が良いそうです。
 
「“納豆=健康食品”ブームのなか、ここ十数年で納豆への需要は増加しています。しかし、当社は、現在の規模で続けていけたらと思っています。大手に集約する時代だからこそ、うちは少し珍しい商品で大手さんと勝負していきます。100年企業のように、多くの人から愛される〈川中島納豆〉というブランドを残していきたいです。そして、何よりも“納豆=庶民の食べ物”でありたいと思っています。庶民から愛されるリーズナブルな食べ物でありたい。毎日でなくてもいいけれど、日々食卓に並ぶ、誰でも食べられるような食品でありたいです」
 
1パックたった90グラムの納豆に込められた、小さな街工場の大きな想い。これからも長野の食卓を豊かにしてくれるに違いないでしょう。

 
 
増屋納豆店
長野県長野市篠ノ井布施高田650
TEL 026-292-0360

たかのしおり
たかのしおり(会社員)

ライタープロフィール長野市出身、千曲市在住
大学卒業後、長野県企業に就職
「おいしいモノ探し」「工場見学」を趣味とする

 

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