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まるで異空間な灯り屋さん

長野駅から長野大通りを北に徒歩8分、南千歳町信号近くに「WAKO SHOMEI」はあります。その異空間な雰囲気で、気になったことがある方もいるのではないでしょうか。入り口は狭く、ショーウインドウには、アンティークの照明や雑貨が置かれています。店内の照明が目立つ日暮れ時には、昼間とはまるで違う姿になり、通り沿いの商店の中でもひときわ目を引き寄せられます。
 
店内に入ってまず感じられるのは、日本とは思えない独特な雰囲気。ここはヨーロッパなのかと錯覚が起きるほど、狭い店内で「WAKO SHOMEI」の世界観は完成されています。古い家具や価値のありそうな雑貨がところ狭しと置かれ、天井では無数のランプシェードが優しい光を灯しています。そんなWAKO SHOMEI の常連客も、ひと味違うこだわりを持った方々。アンティークドールが好きな紳士や、薄暗い5ワット電球をこよなく愛し、「5ワットの会」なるものを立ち上げたコアなお客さん。また、アンティークを買ったが、一向に持ち帰らないお客さん。初めて来店される方も、「蛍光灯より、電球が好き」という方が多いそうです。
 
「みなさん、電球の温かみのある色や心地よさを知っているんです。毎日使う灯りを楽しんでいるお客さんが多いのは嬉しいです」
 
と話すのは「WAKO SHOMEI」オーナーの中沢清さん。長野市で、アングラ劇団「カフェシアター」の主宰としても活躍されている、演出のスペシャリストでもあります。中沢さんが今日まで、照明やアンティークと共に歩んだ20年をご紹介します。

▲ 1920年代のイギリスのアンティークシェードから、デンマークの名品「レ・クリント」など、オーナーの独自の感性でコレクションした人形などがあります。

「WAKO SHOMEI」のはじまり

1970年ころ、長崎屋という大型ショッピングセンターの5階で、今は珍しい国内メーカーの照明器具専門店「和光照明」をオープンしました。
もともと中沢さんのご実家は、長野市でも有名な電気工事を請け負う、町の電気屋さん。電気工事のかたわら、メーカーのカタログを片手に照明器具を売っていたそうです。しかしカタログの写真を見せながらお客さんに営業することは難しく、実物を展示して販売することを考え、それを任せられたのが中沢さんでした。
当時のテナントは全面鏡張りで、敷地面積は40坪、商品の電気が煌々と点いた店内は、「それは明るいお店だった」と当時を振り返ります。
それから数年後、長崎屋が閉店することになり、和光照明が長野駅東口方面にある空き店舗に移転したのが、今から20年前。
オープン当初、照明器具だけでは売上が伸び悩んでいました。少しでもお客さんが来たいと思える店にするべく、雑貨を置いてみたところ、店内の雰囲気はガラッと変わったそうです。
 
このころ、アジアン雑貨がブームだったので、そういった雑貨を置いたところ、大好評。そして、一緒に西洋のアンティーク照明も置き始めました。

▲ オーナーの中沢さん。後ろには年代物の蓄音機。店内は中沢さんのお気に入りの音楽が流れています。この日はサックスとピアノで奏でるオトナ&お洒落なJAZZが流れていました。

1台のアンティーク家具を買って

移転当時の「WAKO SHOMEI」は、まだアンティークの専門店ではありませんでした。中沢さんは、アンティークの雑貨はどれも素敵だけど、置いている棚がイマイチということに気がつき、高級感があり装飾の凝ったアンティーク家具を1台購入しました。その家具に商品を並べると、アンティーク雑貨はグッと魅力が増し、「ああこうしたほうがいい」と思ったそうです。そして、物の売り方、見せ方がだんだん分かって来たのも、ちょうどこの頃でした。
 
「古いものが魅力的に見えるのは、その物に時が刻まれているから」
 
そこで、お店のコンセプトや客層を一新することを決意します。コンセプトは高級感のあるアンティークショップ。
そこから、中沢さんはアンティークのランプシェードや雑貨を少しずつ入荷し、家具もいくつか買いました。徐々に中沢さんが目指す高級感のあるお店に近づいていきます。そして、どんどんアンティークの世界へのめり込んでいきました。こうしてアンティークショップ「WAKO SHOMEI」が誕生するのです。

▲ アンティークはアンティークの家具の上に置くことが理想。まだ完璧ではないとのこと。

バイヤーになるために

高級感のあるアンティークショップを目指した中沢さんは、直接海外に買い付けへ行くことを考えました。しかし、そのノウハウはなく、教えてくれる親切な人もいません。思い悩んで考えたのは、“国内の骨董市へ行ってみる”ことでした。骨董市と聞くと、和骨董をイメージしますが、西洋のアンティークもあるのだそう。そこで、400の露店が並ぶ日本で有名な骨董市の「ボロ市」に通いながら、現在のアンティーク事情や、値段交渉のテクニックを色々勉強しました。
 
「この経験が海外へ買い付けに行く、いいシミュレーションになった」
 
と中沢さんは話してくれました。
 
2002年。中沢さんは13日間のアンティーク買い付けの旅で、念願のヨーロッパへ。向かう場所は、アンティークマーケット規模ではロンドン1のポートベローマーケット。高級住宅街の一角に2キロに渡り、アンティークの露店やフードコーナーなどが展開されています。
中沢さんはこの日のために、ポートベローの下調べを念入りにしました。自身のスケジュールも綿密に考え、購入するアンティーク商品もリストアップしました。
アンティークショップ「WAKO SHOMEI」のハイライトとなる大きな歴史の一幕です。

ヨーロッパ、ポートベローマーケットへ

ポートベローを隈なく歩き、お目当てのものを探し回る13日間。ポートベローを歩いて品定めをしていると、気に入ったシャンデリアを見つけました。値段交渉の基本を忘れ、自分で相場を決める前に値切りに入ってしまったそうです。少し高めに設定され、一旦その場を離れようと思い、「また来る」というと、「それはないだろう、それでも日本のバイヤーか!」と、若い店主に怒鳴られたそうです。
 
「現地のデーラーが自分を日本のバイヤーとして認めてくれたような気がして、悪い気がしなかった」
 
独学で買い付けを勉強した中沢さんは、この出来事がきっかけで、アンティークの目利きの確実さや、値段交渉の自信が一層ついたのだそうです。

▲ 雰囲気のあるランプスタンド。明るさをコントロールできる調節ねじがあります。その日の気分で明るさを変えて雰囲気のある空間を演出できます。

長野市でアンティークショップを生業にするには

長野駅東口の店舗で5年営業した後、現在の地に移転しました。2018年12月で15年が経ちました。
「WAKO SHOMEI」を立ち上げた当初は、買い付けに奮闘していた中沢さんですが、最近は買い付けをしていないそうです。今では、長年アンティークのお店を続けたことで広がった人脈を使い、信頼できるバイヤーたちに買い付けをお願いしているそうです。そこで持ち込まれたアンティークには、中沢さんの厳しいチェックが入ります。
壊れているところは修理をして、“安全”に使用できる状態にし、はじめて商品としてお店へ並べるのだそうです。この“安全”を一番に心がけていると話してくれました。
 
20年アンティークショップを続けてこられた中沢さんは、アンティークの需要が少ないことを残念に思っていました。
 
「不安定な経営状態でも、なんとか生活ができるのは電気技術の資格を持っていること。その知識があることで、アンティークの修理もできる。それが私の強み」
 
だと話してくれました。
 
アンティークの修理には、とても気を使うそうです。アンティークはとても繊細で、手を加えることでその物の価値を下げてしまう可能性があるため、慎重さが大切です。

▲ 中沢さんの作業台。奥には様々な種類の電球が揃っています。今はLEDでも、アンティークのような揺れる灯りが演出できる物があるとか。アンティーク屋さんだけど、現代技術の良い物だって、お客さんにすすめます。

灯りを楽しむということは、影も楽しめる

日本は“世界で夜が明るい国ランキング”の上位だそうです。家にいるときは、できるだけ落ち着いた灯りのなかで過ごし、ぜひ灯りを楽しんでほしいと話す中沢さん。
 
「いつも点けている蛍光灯を消して、代わりに間接照明だけで過ごすのもいいと思います。テレビも消して、大好きな音楽をかけながら、コーヒーを飲んだり、読書もいいですね。いい雰囲気のなかで過ごすことを時々、生活に取り入れてほしいと思います」
 
雰囲気のある灯りのなかで過ごすと、日常の何でもない瞬間も自分だけの特別な幸せになると中沢さんは教えてくれました。日本では蛍光灯のシーリングライトやダウンライト、ペンダントライトなどの照明で、部屋全体を明るく照らすのが一般的です。明るい部屋は陰影がありません。一方アンティークランプには、現代の照明の明るさや機能はありません。しかし美しいデザインと、暗いからこそ感じる優しい光の美しさが特徴です。意外と、その美しさを知らない人は多いのかもしれません。

▲ お店には市内在住の灯り好きのお客さんが来店。灯りの見せ方や、年代物のスピーカーの話で盛り上がっていました。店内のアンティーク照明を1点目星をつけて、お店をあとにしました。

長野市民は灯り好き

「長野市は灯りが好きな方が多く、お話しするのは楽しいですね。みなさん灯りの見せ方を知っているので私も勉強になります」
 
20年以上照明の仕事をしてこられた中沢さんですが、アンティークの灯りを楽しんでいる方が、ここ長野市には多いことを話してくれました。
灯りは、心地よい空間を演出し、人の心を豊かにしてくれる。そして、長い年月を経て大切に残されたアンティークには、どこか温もりが感じられる。それは代々大切に受け継がれてきた、物を大切にする気持ちや、人を思う気持ちが育まれているからこそ、そのように思うのだと。
 
「私は、お客さんに、少しでも心が豊かになれる灯りを売る灯り屋さんなんです」
 
ほんのりともる灯りはきっと私たちを主人公にさせてくれます。そのときの気分によってロマンティックな色合いだったり、切ない色合いだったりいろいろな表情になるアンティークランプ。「WAKO SHOMEI」には、自分に似合う灯りがきっとある。そして私だけの灯りを見つけて照らしてみたい。
アンティークの魅力と中沢さんのアンティークランプに寄せる思いに、私も魅せられたひとりになりました。
 
中沢さんのアンティークを愛する気持ちと、“灯り”の美しさを体感できる「WAKO SHOMEI」。いつしか、灯りの楽しみ方を忘れてしまっている私たちに、きっと何か教えてくれるでしょう。
 
今日も、灯り好きのお客さんを、アンティークランプを灯して、待っています。

 
 
WAKO SHOMEI
長野県長野市南千歳1-8-12
12:00~19:00
定休日 不定休
(遠方の方はTELしてお出かけ下さい)
ホームページ http://www.wako-shomei.com/
instagram wako ANTIQUES

元澤裕子
元澤裕子

ライタープロフィール1978年生まれ。
長野美術専門学校を卒業後、オリジナルの街路灯メーカーに就職。県内にある街路灯に当時デザインと設計で携わったものが今も立っている。結婚を期に退社し、現在は市内のwebデザイン会社で制作を務める。

 

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