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ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.058

荒井

克人さん

ecology&eco-lives信州代表理事 株式会社ラポーザ代表取締役

里山環境の野生生物を追いかけるリサーチリーダー

文・写真 Rumiko Miyairi

「卵を温めているのが見えます。サシバ(タカ科の一種)の雄。放棄していないようで良かった。地元の人に協力してもらってサシバが巣の中で過ごす様子が見られるカメラをつけているので、そのうち生まれたヒナの様子も撮りたいなと思う」

高さ数十メートルほどあるカラマツの合間に拵えられたサシバの巣を、双眼鏡越しに見ながらそう話す荒井克人さん。この春から確認していたサシバを追いかけ、巣の状態や、つがいで交代に卵を温めている姿などをつぶさに観察しています。

サシバという鳥はタカ科の一種。長野県でも絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。一見するとカラスと同大のサシバは北信濃地域では春に飛来し、夏にさしかかる時期まで子育てをします。そして、緩やかな勾配がある北信濃の里山は、山の奥まで人も暮らしているので野生生物と共存できる良い環境だといわれています。

荒井さんは、NPO法人ecology&eco-lives信州代表理事。

主に北信濃に生息する野生生物をリサーチしながら、長野の自然を的確にデータに残す活動や野生生物と人が暮らす環境をテーマとするシンポジウムなどを行っています。

荒井さんが生まれたのは、善光寺近くの往生地地区。家業は昔からりんご農園を営んでいます。

「今思えば、自分の家の周りにはいつもりんご畑があって、そこには鳥や虫が集まってくる自然が日常でした。だから敢えて自然を意識することなく生活していたかもしれません。学生の頃、自然の中で暮らせる環境も計画や設計されて作られることを知り、自分も設計してみたいと思うようになり、大学進学は緑地設計や都市計画が学べるところを選びました」

県外の大学で希望する分野を学んだ荒井さんは大学卒業後、長野市内の測量設計事務所に就職。入社して間もなく都市計画に関わる課に所属し環境調査を任されます。

広範囲に、しかも長時間のリサーチ力が必要とされる環境調査。生息する野生生物に焦点をあてた荒井さんは、絶えず双眼鏡や望遠鏡など、自らで調査対象を確認できる機材を持ち歩いていたといいます。

「生き物の気持ちが分かるといいのですが…(笑)しばらく待っていても出てこないときも、ざらにありますからね。初めて調査をしたのはノスリという鳥(タカ科の一種)。姿を自分で見つけたときは嬉しくてずっと追いかけました。写真が撮れたときは感動しました」

荒井さんが撮影した、この春ふ化したサシバの雛(ふ化後10日)〈写真・荒井克人さん〉

「生き物の動きって、その土地の環境と関わりがとても深いので、土地の特徴も調べながらそこに住んでいる人からも話を聞かせてもらって。気が付くとその地域の人たちも一緒に調査に加わってくれていましたね(笑)」

その土地で生活する人たちの協力も仰ぎながら地域に密着した調査活動をする荒井さん。

人が暮らす町と野生生物が生きる自然との関係に強い興味を持ち、2010年秋、調査拠点として「ラポーザセンター」を戸隠に設けます。

「長野って、例えば善光寺から戸隠まで標高差900メートルくらいあるところを、だいたい30分あれば移動できる。市街地からそんな距離感で行けるところが魅力だと思う」

「それに戸隠には、子どもの頃、父やお爺さんが頻繁に連れていってくれましたから。私にとって、幼い頃からの思い出も残っている大事なところ。だから自分の活動ベースは、戸隠から広がるようにしたい」

戸隠で生息している野生生物が24時間観察できるこのセンターは、通常、自然に興味を持つ人向けのビジターセンターとして、また、夏のシーズンになるとナイトハイクや自然体験ができる学校として活用しています。

そして、荒井さんの調査している生物や自然環境が誰にでもわかりやすく見て触れられるように空撮した写真や鳥の巣箱の中が映し出されているモニターが据え付けられています。

木の上に取り付けた無人カメラを地元の協力者と確認する荒井さん

「戸隠に来る人は、歴史に興味を持つ人や森林浴を楽しみに来る人が多いですが、中でも鳥が見たいとか高原の中で生きる野生生物が見たいという声も聞くので。その要望にはいつも充分応えられるようにと準備しています」

夏休みは県内外から子どもたちの参加者も増え、蛙の夜の過ごし方に興味を持つ子、野生植物の生え方に関心がある子、野鳥の巣の中のⅤTRを食い入るように見続ける子などバラエティに富んだ感覚で新しい発見をしていってくれるといいます。

「関西から来た中学生は、ナイトハイクの体験談をレポートにしてコンクールに出したら優秀賞に選ばれたようで。その話を手紙で知らせてきてくれたときは私も嬉しくて、また来てほしいって思います」

「子ども時代に体験できる事ってどんなことでも意味があるから大切だと思う。戸隠では子供たちに探検をする遊び的な感覚で参加してもらって、新しい発見をしてほしい。自然と野生生物の豊かなこの戸隠で是非冒険心を育ててほしい」

図鑑でもパソコンでも見られないナマのエコツーリズム。その醍醐味を常に発信し、自然や野生生物を絶えずリサーチする荒井さんは、自身のこれからの活動をこういいます。

「いつでも野鳥観察ができるように」とラポーザセンターから見える木々に取り付けてある鳥の巣箱

「昔の環境はどうだったと分かるものを残していきたい」

「正直、なんとなく最近『この鳥見掛けなくなった』とか、『ここにあった花がなくなっている』とか思うことがあります。でもそれって、ただの思い込みだったりするかもしれませんから」

「むしろ、10年や20年くらいの時間経過で、環境の変化を感じ取れてしまったとしたら、かなり大きな問題だと思う。自分が生きている時間なんて地球の歴史単位から比べようもないくらい短いものだと思いますから」

流れていく時間の先々を、野生生物と向き合うことで見据えいきたいと望む荒井さん。

「だから尚のこと科学的根拠に基づいて現状の環境を調査したデータを残して行きたい。こんな野生生物がこの自然環境にいたんだと、結果的に自分の生きる時代ではなくその先に生きる人に役立つデータになってくれれば、という思いです。」

センター内で発見。クロサンショウウオの卵!

荒井さんが操作するマルチコプターで戸隠山を一望。「鳥もこう見ているかもしれない」と鳥の目線を演出する〈写真・荒井克人さん〉

(2014/07/24掲載)

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