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ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.375

宮澤

さん

旬菜麺酒つた弥 店主 和食料理人

背伸びはせず、でも妥協もせず
季節を感じる料理を丁寧に提供

文・写真 合津幸

長野市横沢町にある「旬菜麺酒つた弥」は、旬の素材や地元産の厳選した食材をふんだんに使った和食の店です。現在、中心となって店を切り盛りしているのは、2代目店主で和食料理人の宮澤達さんです。気軽に味わえる創作和食から本格的な日本料理まで、若い感性と確かな技術により生み出される品々が訪れる人を魅了します。

大阪で過ごした5年間

32歳という若さながら、「つた弥」を任されてすでに約8年。幼い頃から食堂を営むご両親が働く姿を間近に見て育ち、「いつの間にか料理に興味を持つようになっていた」という達さん。高校卒業後は、同じく料理の道へ進んだお兄さんが通う大阪の調理師専門学校へ進学しました。

「飲食業や自営業というよりも、料理に魅力を感じていたのだと思います。だから、この店を守らねばという使命感ではなく、純粋に料理を学びたいという気持ちでした」

専門学校では、1年目に和食・中華・フレンチ・イタリアンなどの各国料理や製菓など、調理に関するあらゆる基礎技術と知識を身に付けたそうです。学校に通いながら日本料理店でのアルバイトを経験し、2年目の専科には日本料理を選択。和食の奥深さに魅了されてゆきました。

「日本料理は、包丁ひとつとっても素材によって異なる形状のものを使い分けるなど、とても繊細で一筋縄ではいかないところがあります。たとえ同じ材料を使って同じ手順で作っても、料理人によって完成した料理にはかなりの差が出るんです。それが難しさであり面白みでもあるし、だからこそやりがいも感じられる。そう思って和食を選びました」

専門学校卒業後は大阪の日本料理店へ就職。そこで3年を過ごしたそうです。そしてこの3年間が、幸か不幸か、達さんの料理人としての経験値をグッと押し上げることになりました。

「1年目にして、経験のある先輩たちが一気に辞めてしまいまして…通常なら何年もかけてようやく任されるようになる役割を、私と同じ専門学校出身の同期との2人でやりくりしなければならないという、とんでもない状況に追い込まれたんです」(苦笑)

ひたすら目の前の仕事を必死にこなし続ける怒濤の日々。内容の濃い充実した毎日ではありましたが、当時はそんなことを噛みしめる余裕などまったくありませんでした。

「たった3年ですが、貴重な経験を数多く得られた時間でした。年数だけを見れば、まだ若いとか経験が浅いという意見もあるとは思います。でも、かなり厳しい状況に置かれても逃げずにやり切った達成感や自信があったため、次の修業先を探すのではなく自分で店を始めようと考えました」

最近始めた「大徳寺弁当」(ランチセット2000円)は、「つた弥」自慢の定番料理から季節の食材を使った逸品まで全9品という豪華さ。内容・品数はその時の食材によって変わるものの、「欲張っていいとこ取りしていただけるような、そんな内容を意識しています」という自信作だ

ご両親の手助けを得ながらの営業だが、調理はほぼすべて達さんが担っている。「大変なこともありますが、いい食材をどう調理をしよう? とか、どうすればお客様に満足してもらえるだろう? と考えて試行錯誤するのはやはり楽しいですね」

“町の食堂”から和食料理店へ

料理の道へ進む決意をした時から、「いずれは自分の店を持ちたいと考えていた」という達さん。とは言え、ご両親からは実家を継いでほしいとも、達さん自身が継ごうと決意していたわけでもなかったのだとか。ではなぜ、実家の食堂があるこの場所で店を始めようと考えたのでしょうか。

初代店主である父・秀次さんが脱サラをして始めた「つた弥」は、近くの高校に通う生徒さんも気軽に立ち寄れるアットホームな“町の食堂”でした。メニューには、ラーメンなどの麺物やボリュームたっぷりの丼物と定食が揃い、安くて旨くてお腹がいっぱいになる店として幅広い年齢層に愛され親しまれてきました。

一方、達さんが目指したお店はちょっと違います。厳選した地元産の素材や季節を感じる旬の食材を使った一品料理とそれらによく合う酒を中心に提供する、しっとりと落ち着いた雰囲気のお店だったのです。

「専門学校時代からしばらく都会で過ごしてみて、もうあんな感じの忙しなさや賑やかさは要らないかな、と。繁華街はこちらが黙っていてもお客さんの方からやって来てくれますから、経営の面ではある意味楽なのかもしれません。でも自分で店をやるなら、ゆっくりじっくり料理を味わってもらえる環境を選ぼうと考えていました」

そんな想いとともに先のことをご両親に相談したところ、達さんがやりたいのならここ(食堂)で始めればいい、と言葉を掛けてもらえたのだとか。しかも、メニュー変更も店舗の改装も自由に進めて良いとも。それでも人生の大きな決断であることは確かです。自分の料理や自分が創る店をお客様が支持してくださるだろうか? と、不安に思う部分もあったそうです。そんな達さんの背中を押したのは他でもなく、あの濃密な3年間の経験と実績でした。

「自由に、とは言ってもらったのですが、私が理想とする店とお客様のニーズとのマッチングもありますし、資金のことも考えねばなりません。ですから、メニューは一気に変えるのではなく、従来の食堂メニューの食材を変えてみたり、新しいものを少しずつ加えたりすることから始めました。改装も、営業しながらでも可能な範囲で順次進めてきました。今ではメニューもだいぶ変わりましたし、店も近々また改装を予定しています。少しずつ焦らずに、私らしい店を創りあげたいと思っています」

達さんオススメの日本酒の一部。実は達さん自身はお酒がほとんど飲めない下戸なのだが、料理とお酒の相性を追求する情熱は人一倍強い。情報集めを積極的に行い、必ず試飲をしたうえで料理との組み合わせを考え、仕入れを決めている

左から達さん、お母様の幸子さん、お父様の秀次さん。店を訪れるとこの3人がいつもの温かな笑顔で迎えてくれる。達さんを中心に幸子さんと秀次さんが「あ・うん」の呼吸で、心のこもった料理とサービスを提供してくれる

細部の演出も店主の大切な務め

帰郷してしばらくは「味の良いものを出せばそれでOK」というスタンスだった達さんも、実際に店を切り盛りするうちにずいぶん考えが変わったのだとか。特にここ3〜4年は人との縁に恵まれ、学んだり気づかされたりすることが多かったそうです。

「たとえば器の作家さんや酒蔵の杜氏さんなど、私とは違うフィールドで活躍している方々と出会ったり、お客様や取引業者さんに魅力的な方を紹介してもらったりと、人と人とのつながりにたくさんの刺激をもらいました。自分とは異なる人生観や経験に触れて、視野が広がった気がします」

また、それらの出会いで得た最大に気付きは、器や家具などの装飾品による雰囲気づくりにも心を砕き、お客様が店で過ごす時間を丸ごと演出することの大切さでした。そしてその気付きによって、これからの方向性も見えてきたようです。

「わざわざ足を運んでいただかねばならない立地ということもあり、口コミで評判を聞いたお客様が訪れてくださるようになっています。今はこの立地を逆手に取って、知る人ぞ知る隠れ家のような店としての個性を磨きたいと思っています。もちろん大前提として、『都合良く妥協をしないこと』というモットーを、料理はもちろん店づくり全般においてしっかり守ってゆきたいです」

ところで、達さんにとって故郷である長野市はどんな魅力を持つ地なのでしょうか? 大阪で過ごした約5年間での経験をふまえて感じたことを尋ねてみると、「程よく田舎」という答えが返ってきました。

「大都市ほどごちゃごちゃしていないけれど、生活に必要なものは何でも揃う。関東圏にも北陸にも新幹線で簡単にアクセスできるので妙な閉塞感もない。しかも、ちょっと足をのばせば大自然も満喫できる。私個人では、畑で土に触れて過ごす時間が最高のリフレッシュになっていますし、これからの季節は趣味のバイクでツーリングを楽しんだりもします。すごく暮らしやすい、いい街ですよね」

達さんのように、都市部で過ごした時期があるからこそ故郷の人の温かさや環境の素晴らしさに気付かされることがあります。だからこそ、ある程度経験を積んだ後に腰を据えて働いたり、余暇を楽しみながら心豊かな日常を過ごしたいと考える人にとって、ここ長野市はぴったりの“程よい田舎”なのかもしれません。

マイペースながら力強く前進し続ける達さんのさらなる成長と、そんな達さんが創る「つた弥」の進化が楽しみです。

「いい酒はいい器で味わってほしい」という想いから、達さん自ら作家さんの個展に足を運んで酒器も探して来るという徹底ぶり。最近は、器との出合いにくわえて、作家さんに刺激を与えてもらえるのもひとつの楽しみになっているそう

器と料理とのバランスを見極めて、目でも舌でも楽しんでもらえるよう演出するのも料理人の役目。写真は「大徳寺弁当」の一品・鰆の馬鈴薯焼き。料理も器も落ち着いた色合いなのに、不思議と季節の彩りのようなものが感じられる

(2017/03/29掲載)

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会える場所 旬菜麺酒つた弥
長野市横沢町1438-2
電話 026-234-2345
ホームページ http://tutaya.jpn.com
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