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No.006

田上

真里さん

長野相生座ロキシー/支配人

観客とスタッフの距離が近い映画館

文・写真 Takashi Anzai

権堂にある映画館、長野相生座ロキシーは年に100本ほど単館上映を行っています。独立系の映画館自体が減少傾向にある昨今、特に地方では珍しいことです。上映する映画のジャンルは名画、ヨーロッパ映画、アジア映画、ドキュメンタリーなど幅が広いものの、いわゆるミニシアター系と呼ばれる作品が大多数を占め、比較的コアな映画ファンに支えられています。
単館上映とは、全国一斉に上映されるロードショー作品に対して、映画館単独で上映する作品のことです。大手映画会社の系列でないため、新作旧作を問わず、映画館が独自に選んだ個性的な映画を提供します。

単館上映以外でもそのセレクトは熱心な映画ファンを納得させてくれるもので、編集部・安斎が取材に伺った4月も、フランソワ・オゾン監督の問題作「17歳」や纐纈(はなぶさ)あや監督のドキュメンタリー「ある精肉店のはなし」をはじめ、強い個性をもった作品が上映されていました。相生座ロキシーでは隔月で特集も行っていて、5月の特集は小津安二郎監督の作品。9作品を上映します。

国内では珍しい木造の劇場。築年数では日本最古級を誇る

「相生座」、「ロキシー1」、「ロキシー2」の全部で3室があり、それぞれ264席、176席、72席と規模の小さな映画館です。だからこそ、一人ひとりのお客さんとの距離が近く、そのことを大事にしています。

「映画館という空間が好きですね。お客さんの反応がダイレクトに伝わってきます。つまらなくても、よくても。だから、お客さんが帰っていく表情を見るのが一番、楽しいです」

支配人の田上真里さんはそう話します。
映画館では通常、観客はスクリーンの方を向いていて、スタッフはお客さんの背中しか見えません。しかし、田上さんはお客さんの顔を思い浮かべながら仕事をしていると事もなげに言います。

「お客さんの顔を想像して、たとえばこういう映画はあのお客さんは好きだろう、とか考えながら上映作品を決めています。それと、扱う映画のジャンルやテーマを固めるというより、うちがなければ長野では見られないような作品を上映しています」

相生座ロキシーが初めて活動写真を上映したのは明治30年。そして木造の建物は国内最古級です。その古い建物の味わいを生かした「名画特集」も行っています。
その歴史を大事にしつつも、その一方で田上さんはそこにあぐらをかいてはいられないとも考えています。

「歴史に価値があると言っていただくこともあるんですが、残念ながら、映画を見るということと建物が古いということはうまく結びつかないんです。地方で名画座としてやっていくのも難しいですし。ですから、映画を見ている時間を共有する感覚とか、居心地の良さを大切にしていますね」

田上さんは支配人に就任してから5年目。独立系映画館で働いていてよかったことをこう話します。

「上映会に監督さんがゲストとして喜んで来てくださることが多いんです。大手とは違って、うちは間のことをやってくれるスタッフがいないので、ゲストと近くで仕事ができます。お客さんともゲストが近い距離で話をしてくれるので、いい時間を過ごしてもらえているんじゃないですかね」

4月には上述の纐纈監督が、「ある精肉店のはなし」の上映に合わせて舞台挨拶を行いました。

一方で、熱心な映画ファンに支えられている、歴史ある映画館の支配人としての責任も強く感じているそうです。

「自己満足しようと思えば、いくらでもマニアックなものを目指せます。そういう映画館があってもいいのかなとも思いますが、でも支配人になったからには、長く続けるということが一番大事です。
今うちで見てくださっている方たちは、うちがなくなると、生活の中でその部分がスコンと抜けてしまうんです。他にない存在なので、どこかへ流れることができないわけですよ。
私は長い歴史の中でバトンを渡されたばかりです。それを落とさないように、それが私の責任ですね。この映画館があることで喜んでくださっているお客さんがたくさんいらっしゃるので、なくしてしまわないようにと強く思います」

2014年春、相生座ロキシーでは消費税の引き上げと同時に初めて特典付きの会員募集をしました。あっという間に約300人が会員になり、あんまり話したことのない常連客と会話をすることができたといいます。会員になった常連客の中には新潟から通っている人もいて、自分たちの仕事の重要性を再認識したと田上さんはいいます。

映画が大好きでこの世界に入ったというわけではなく、劇場という空間が好きで映写技師という仕事に就き、それから映画が大好きになったという田上さん。そんな田上さんは映画館の魅力をこう語ります。

「映画館は他人同士が同じものをみる空間で、総合芸術を味わう場です。家でテレビを見る場合は視覚的にも聴覚的にも邪魔が入ってきてしまいますが、映画館は正に映画を”体感する”という場所ですね」

単館上映が年間100本近いという

終始やわらかな口調でインタビューに答えてくれた田上さんですが、言葉の端々からお客さんの期待に応えたい、そして支えてくれる映画ファンのために長く続けていきたいという責任感が感じられました。お客さんとの距離が近いだけに、皆のものという思いが強いのでしょうか。
映画を観終わったお客さんが田上さんに「よかったよ」と声をかけてくれることも多いといいます。インタビュー後、写真撮影の最中も、やはりお客さんと気さくに言葉を交わす田上さんの姿が印象的でした。

歴史を感じさせる切符売り場

(2014/05/12掲載)

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会える場所 長野相生座ロキシー
長野市権堂町2255
電話 026-232-3016
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