No.302
鈴木
大地さん
WEBプログラマー・ピアニスト・役者
ライフワークであるピアノ。
表現することを追求する生き方
文・写真 くぼたかおり
門前界隈のさまざまなイベントで、ピアノ演奏をしている1人の青年。彼の名は、鈴木大地さん。かの水泳選手と同姓同名! そのせいか一度聞いたら忘れることはありません。話を聞けば現在26歳だそう。長野市に住む20代ってどんな暮らしをしているのだろう? そんな興味から話を伺ってきました。
幼少期からピアノに慣れ親しむ
鈴木大地さんは、SHINKOJIシェアオフィスに事務所を構えるグラフィックデザイナー・木下光三さんの専属パートナーとして、WEB制作の仕事をしています。他にもピアノを弾いたり、作曲したり、役者として芝居に出たりと、まるでカメレオンのような活動っぷり。
そんな鈴木さんの両親は、ともに東京都出身。設計などの仕事をしていた鈴木さんの父は、「人の顔が見える仕事をしたい」と木曽郡上松町へ移住し、技術専門学校を経て家具職人になりました。フォークソングなど音楽が好きだった父の影響もあったのか、鈴木さんは3~4歳のころからおもちゃのピアノを弾いたり、歌ったりして遊んでいたといいます。
「昔からピアノは感覚的に好きだったんです。小学校の時に楽譜の読み方を習う授業があったんですけど、その楽譜でずーっと弾いていました。それで3年生の時にピアノを習いたいと親に話して、ピアノ教室に通うようになりました」
しかしそこは、町で一番厳しいと評判の教室でした。多くを求められる練習が嫌になることもあったそう。それでも続けられたのは、単純に演奏することがおもしろく、誉められるとうれしかったから。子どもならではの純粋な気持ちが、ピアノに向かわせていたようです。
中学生になってからは、演奏会の発表曲を自分で選ぶようになり、3年生で初めてジョージ・ガーシュウインのシンフォニック・ジャズ「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏。
「そのころの僕は思春期で、背伸びしたい気持ちが強い時でした。そんな時に大人の雰囲気があるジャズナンバーに出会ったんです」
それが転機となり、自分が演奏したいものを楽しむようになっていきました。
楽譜には自作曲のモチーフが書かれている。そこからイメージを膨らませていく
思春期まっただ中に知ったWEBの魅力
中学生になり、思春期を迎えた鈴木さんは「こじらせていた」という言葉どおり、友達といる時間よりもパソコンに向かってでホームページを作ることに熱中するように。「他の人と違っていたい」という意識から、親元を離れて国立長野工業高等専門学校電子制御工学科へ進学しました。
「学生の1/5が寮生活をしていたので寂しいとは思いませんでした。それよりも働くために必要なスキルや、自分で考えて選択していくことを教わることができました。高専に行って、本当に良かったと思っています」
ほとんどが男子学生という環境の中で出会ったのが、現在「鈴木林業」のパートナーである月原康智さんです。文化祭では、月原さんとオリジナルのテクノ曲と芝居を合わせたステージを披露するなど交流を深めていくように。
「鈴木林業というユニット名は……特に意味はないんです。ただ最初から、演劇と音楽のユニットというコンセプトは持って いて、それは今でも変わっていません。最近はお互いに出来ることが増えていって、今はそれにとどまらずおもしろいと思えるものを自由に取り入れていますね」
昨年末9月には、月原さんが作・演出、鈴木さんが作曲・役者として「PARA」という舞台を東町の「花蔵」で開催しました。20代ならではの苦悩する姿がループするように描かれ、効果的な音と映像が迫る、印象的な舞台でした。
鈴木林業による芝居「PARA」。積み重なり、ちらばる紙が、人間の苦悩を表しているようだった
門前でのつながりから得たチャンス
一度は就職したものの、昨年からフリーランスとして仕事をするように。そして鈴木さんが役者として出演している、長野市の演劇ユニットtheeを主宰する長峯亘さんの紹介で木下さんと仕事をするようになりました。実際に30~40代の自営業をしている人たちの姿を間近にする中で、少し先の未来についてヒントをもらっているようです。
「いずれは実家がある上松町で仕事をしたいなという想いがあるので、今は門前界隈で個人で働く人たちの姿から良い部分を吸収したいなって思っています」
この界隈で働くようになってから、少しずつ活動が広がり始めています。2月の「長野灯明まつり」期間中にある「もんぜんまち劇場」では、6・7日に演劇ユニットtheeの「暗い日曜日」に役者として出演するほか、10・11日には染工房kimi2階ギャラリーでピアノ演奏会を開きます。
「今は芝居の台詞を覚えたり、演奏会用のオリジナル曲を作っている最中です。灯明まつりに開く演奏会なので、灯りなどが1つキーワードにあります。真冬に見る灯明の光は、寒いけど温かい雰囲気をまとっています。そんなイメージを、リズム主体の和音編成で伝えられたら。実は裏テーマもあって、演奏会を通じて友達を作ろうと思っています!」
ピアノについて語っていると、時折出て来る”イメージ”という言葉。聞けば、作曲家では印象派と呼ばれ(象徴派ともいわれている)たドビュッシーが大好きだとか。演奏会でも予定している『月の光』など、弾いたり、聴いているうちに風景を連想させる美しさに惹かれるそうです。
「今は本当に充実しているんです。ライフワークであるピアノと、10代から興味を持って続けてきたWEB制作の両方ができているので」
将来の目標や夢について聞くと、少しためらいながらも「いつか自分の曲でCDが出せたら」と語った鈴木さん。控えめながらも常に自分らしくあり続けようと考え続けている姿が印象的な青年でした。
演奏会前に出演するtheeの芝居「暗い日曜日」の稽古風景。右は鈴木林業のパートナー・月原康智さん、左はtheeの脚本・演出をしている長峯亘さん
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会える場所 | 権堂パブリックスペースOPEN白蔵2階 長野市権堂町2300 電話 ホームページ https://www.facebook.com/ceffe.ss まち劇場ホームページ http://monzen-machigeki.com/ ■thee第8回公演『暗い日曜日』 |
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