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No.291

吉田

廣子さん

まめってぇ鬼無里

鬼無里に残る、日本の原風景を
残し、伝えたい

文・写真 くぼたかおり

豊かな自然に育まれた山里・鬼無里の中心部に事務所を構える「まめってぇ鬼無里」は、鬼無里の活性化のために作られたNPO法人です。鬼無里に限らず多くの山村地域は若年層の流出が激しく、地域に残る人の多くは高齢者というのが現状です。

嫁ぐまで知らなかった「鬼無里」の地にはまる

「まめってぇ鬼無里」事務局長の吉田廣子さんは、長野市街地から結婚を機に、初めて山里で暮らすようになりました。実は吉田さん、嫁ぐまで鬼無里を知らなかったと言います。

「近くにコンビニやデリバリーの店なんて無いので、何でも自分でまかなわなければなりません。知り合いもいないし、さてどうしようかと思っていた時に生活改善グループに誘ってもらったのがきっかけで、味噌、醤油、漬物などいろんな料理を教わりました。ほかにも羊の毛から羊毛づくり、草木染め、そしてセータにするなど、何でも自分で作れるんだ!と、新鮮なおどろきでいっぱいでした」

街なかとは大きく異なる環境でしたが、地域の人たちと深く関わるうちに、鬼無里の歴史、自然、食、人などさまざまな良い部分を知るように。
そんなある日、同居していた吉田さんの義父が倒れたのをきっかけに、それまで義父が中心に行っていた農業をどうしようかと考え始めました。

「山村地域では、誰もがぶつかる問題の1つです。そのころ家を新築したばかりだったので、夫に仕事を辞めてもらっては困ると思って、私が農業を引き継ぎました」

さらには、ふだん仕事で出ている夫の代わりに地区の区長を受けたのがきっかけで、吉田さんは忙しい日々を過ごすようになるのです。

「鬼無里ふるさと資料館」に隣接する「まめってぇ鬼無里」

持続可能な鬼無里のあり方を考え始める

平成20年、鬼無里では村長をはじめ地域のさまざまな役に携わっている25人で、オーストリアのヴェルフェンヴェング村に視察へ。そこは鬼無里に似た里山で、環境に優しい山岳観光を実践し、地域起こしに成功している村でした。

そこで得た事を次につなげようと、その翌年に行われた長野市の「鬼無里イヤー」では、「こころのふるさとコンシャス」をコンセプトに、鬼無里の美しい大自然と歴史、伝統を伝えようとさまざまなイベントを企画。その一環でヴェルフェンヴェンブルグ村のペーター村長、自然工学博士の青木健太郎さんらを招き、山岳フォーラムを開いたのです。

「鬼無里イヤーを終えて、総括のために実行委員会で集まったんです。せっかくみんなで鬼無里をアピールしていたのに、これで終わっていいのかと疑問の声が湧いてきたんです」

こうして、鬼無里が好きで、伝えていきたいという10人が集まってNPO法人「まめってぇ鬼無里」を立ち上げました。そして平成22年10月、独立行政法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センターの「地域に根差した脱温暖化環境共生社会」の課題に応えて、『環境に優しい移動手段による持続可能な中山間地域活性化』という研究開発プロジェクトが、49もの応募数から採択されました。

当時吉田さんたちは、JSTがいかに権威があるものか知らずに応募しましたが、採択後は大学教授などから「なかなか採択されないのに、よく取れたね!」と言葉をいただくうちに、「なんだかすごいことになってしまった」と感じたと言います。

プロジェクトは「きなさごこち」と名付けられました。そこには鬼無里を訪れる人、住んでいる人それぞれが心地よくありたい、そして暮らしたい、訪れたいと感じてほしいという願いが込められています。平成25年まで行われたこのプロジェクトでは、観光地化せずに今のまま残ってほしいという多くの意見を反映し、自然エネルギーへの転換に向けた活動などをが進められました。

地元の人から薪割りの注意点とコツを教わりながら、イベント参加者も順番に薪割り。腰の落とし方が重要だとか

残していくものと、変えなければならないもの

こういったプロジェクトの中で、各スタッフがやりたいことをイベントやワークショップ形式で開くようになりました。その中のひとつに「もりがーる・林業女子イベント」があります。名前のとおり、山や自然、林業などに興味がある女性を対象に講習会を開き、心得からチェーンソーの使い方、実技までを行います。グリーンシーズンに月1回開かれ、最後には、山から伐採した木を自分たちで薪割りし、石窯を組み立ててピザを焼いて食べる会が催されました。

参加した女性の中には千葉県から来た人も! 参加した理由は「実家が鬼無里だから」「山が好きだから」「何か挑戦してみたくて」などさまざま。それでも知らない者同士がひとつの目的のために一緒にいると、自然に打ち解けていきます。

「このイベントを通して、自然界から木を伐採して、自分たちが食事をするまでの一連のサイクルを体感してもらいたいという想いがあります。あとは、やっぱり林業の担い手を育てたいですね」

これからの鬼無里に、何が必要かを問いかけると「もちろん、人だよ」と即答した吉田さん。

手作りした石窯は、1時間以上薪をくべてじっくり温度を上げていく。耐火レンガの内側がまっ白になれば、ピザを焼けるタイミングだそう

「高齢化が進む地域の大人は『ここにいてもダメだろう』と、子ども達が離れてしまうのを止めようとしないし、止めることができないんです。でも、それって親とその地域の関わり方次第で、子ども達の視点も変わるだろうと思うんです。私たちが真剣に地域と向き合うことで、いずれ若い世代が胸をはってここにいたい!と思ってもらえるようにしたいです」

変わらず残すものの一方で、変革を要されている鬼無里。さまざまなイベントを通じて魅力を発信し続ける「まめってぇ鬼無里」のこれからの活動も目が離せなそうです。

ピザを焼いた後は、これまた近くの木材で組み立てたテーブルで食事

(2015/12/02掲載)

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会える場所 まめってぇ鬼無里(事務局)
長野市鬼無里1657
電話 050-3736-6218
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