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No.194

春日

計斗さん

かすが かずと

株式会社ザれもん 相談役

クリーニング界の三冠王

文・写真 Yuuki Niitsu

県下初の快挙

2014年11月28日に東京都で行われたアイロン技術を競う「全国ワイシャツ手仕上げ競技大会」。今年で27回目を迎える歴史あるこの大会で見事、優勝(厚生労働大臣賞)に輝いたのが長野市差出に本社を構えるクリーニング店、株式会社ザれもんの会長である春日計斗さんです。

厚生労働省職員をはじめ、大会会長、全国クリーニング組合理事長らが審査員となり、選手たちは18分の制限時間内の中で競技しました。まず脱水された2枚の綿100%のワイシャツがわたされ、1枚目をアイロンがけし、たたむとすぐさま別室で審査にかけられます。その間にもう1枚はハンガー仕上げをし、出来た2枚が「乾き具合」「シワ」「商品価値」、そして「競技中の態度」の4つの観点で審査され、合計点数で順位が決まります。

「出されたワイシャツを見た時に、1枚7分以上はかかるなと思いましたね。それで時間配分をしながら、仕上げていきました」

見た瞬間に仕上がりの時間が読めたという春日さん。

「アイロンがけの難しい点は、温度調節なんです。温度によって、伸び方が違ってきます。私は46年というキャリアの中で、その適温というものがわかるようになりました。それも優勝できた要因かもしれませんね」

春日さん曰く、ワイシャツなどの綿製品は210度が適温とのこと。210度くらいになると衣服とアイロンとの摩擦面から『ピッ』という音が出るそうで、その音を頼りにアイロンをかけるといいます。まさに技神に入るということでしょうか。

賞状とトロフィーを手にする春日さん。賞状も書道家に書いてもらうため、後日郵送されてきたという

「優勝者が最後に名前を呼ばれるんですが、最後のひとつ前まで名前を呼ばれなかったので、まさかと思いましたね。大臣からの大きな賞ですから、46年のキャリアへのご褒美でしょうかね」

照れながらも賞状とトロフィーを抱えながら満面の笑みで話す春日さんの姿は、自身のクリーニング屋としてのキャリアの集大成を物語っているようでした。

息子であり社長の一成さんと。「父は職人気質で今でも教わることだらけ」と一成さん

呉服屋育ちが一代で築いたクリーニング店

長野市出身の春日さんは、実家が呉服屋ということもあり、子どもの頃から服に携わる仕事に就こうという気持ちがあったといいます。

「高校卒業後は毎週、京都にしみ抜きの勉強に行きました。その後、24歳でクリーニング店を開きましたが、平日はお店で働き、週末は横浜に上級クリーニング技術者の資格を取得するために、勉強に通いました。当時はドライクリーニングの機械なんてないから、電気アイロンを使って霧吹きしながら、表と裏をそれぞれポイントごとにアイロンがけをするんですよ。ここでアイロンがけのイロハを学びました」

その後、約46年にわたり、寝る間を惜しんで走り続けた春日さんも、今年で71歳。今では社長の座は息子さんに譲りましたが、それでも毎日のように現場に出て、従業員にアドバイスをしています。

また春日さんが取得した上級クリーニング技術者は国家資格であり、取得者は県内では2名、全国でも50名しかいないほどの狭き門です。そのため、ホワイト急便に加盟する全国の店舗が参加する大会では、指導者として関わり多くの後輩たちを世に送り出しています。

そんな春日さんが、現状のクリーニング業界において危惧していることがあります。

「この業界は今、工場に指導できる人間が少ないのが課題です。それでどうしても技術を後回しにして料金競争に走る傾向にあるんです。それだけは避けたいですね」

春日さんの煮え切らない気持ちが切々と伝わってきました。

襟カウスのプレス機(手前)と立体の仕上げ機。機械を使っても1枚1枚、人の手によりチェックする

最後は人の手

バブル期には県内に4工場、200店舗というマンモス会社へと発展し、現在でも東北信を中心におよそ80店舗のネットワークを持つ県内最大級のクリーニング店。その創始者である春日さんが常に信条としていることは、チームワークです。

「一人で出来ることは限られています。機械化が進んだとはいえ、やはり最後は人の手がものをいう世界。だから、みんなで協力していくことが大事です。ここまで来られたのも皆のおかげですよ」

低価格競争という時代の流れに待ったをかけ、最後は人間の技術だと自負する春日さんは、今年、敢えて大改革に踏み出します。

「こんな時代だからこそ、通常の5倍の料金を頂き、しみ抜き、防臭加工、そしてそのお客さんの衣服だけを機械に入れて洗濯するという『極みコース』を設定しました」

しかも仕上げは、春日さん自らが丁寧にアイロンがけをするといいます。

取材した1月は閑散期ということもあり、ゆっくりお話を聞けましたが、もうじきやってくる3月から5月の繁忙期には本店1店舗で1日8000点もの衣服を預かり、従業員も普段の倍の12人体制で臨むといいます。

46年というキャリア、上級クリーニング技術者、そして厚生労働大臣賞を手にし、クリーニング界の三冠王と言っても過言ではない春日さんは、柔軟剤のように人の心を軟らかくし、漂白剤のごとく真っ白な気持ちで、今日も工場に立ちます。

市内には1つしかないというシリコーンドライ機。洗いから乾燥まで全てまかなう

(2015/02/17掲載)

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長野市差出南2-1-32(本店)
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