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No.191

山崎

恵理子さん

株式会社一兎舎代表取締役

「貧乏な出版社に勤めたかった」!?
目標のためにひたむきに突き進む

文・写真 Chieko Iwashima

夢は老人マンション完備の会社

長野市吉田にある株式会社一兎舎の代表・山崎恵理子さんは、長野市の女性起業家として注目されている一人です。注目を集める理由の一つが就業規則。6人の会社でありながら、なんと100人雇用できるほど整っているのです。昨年開かれた起業に関心がある女性を対象としたセミナーでは「100人従業員がいてもいい就業規則を創った出版社」という題で講演をしました。

「私は仕事も好きだけど、子育てをしたり料理をしたりするのも好きで、仕事以外にも大切にしたいものがあります。それは社員それぞれに大切にしてもらいたいことでもあるから、経営者の立場としてなるべく子育てしやすい環境を作っているつもりです」

一兎舎では、書籍出版をはじめ、広報印刷物や販売促進ツール、Webなどの企画・編集・デザイン・撮影等を手掛けています。社員は山崎さんと同世代の30~40代で全員が子育て中。一人ひとりの状況によって勤務体制も柔軟に対応しています。例えば、9時~18時の定時を10時~19時にしている人もいれば、出産後職場復帰した人で今は時間給で働いている人もいますが、全員同じように社会保険も賞与もついているそうです。

「15年か20年後には『老人マンション』のついた会社を作りたいんです。これから私たちが50~60代になったときに一番考えなきゃいけないのは親の介護。その辛さを社員に味わってほしくないし、そうなったときに優秀な社員に辞められたら困るので、会社に老人マンションを作って、困ったら利用してもらいたい。自分も社員も日中の8時間は楽しく仕事に集中できるようにしたいんです」

社員が働きやすい環境作りを当然のこととして語る山崎さん。親の介護に不安なく働ける環境は魅力的です。何より社員を大切に思う山崎さんの言葉が胸に響きました。

プロとして、お客さんが想像している以上のものを必ず作るのがモットー

憧れの出版社での仕事

山崎さんは東京生まれ。昔から出版社で働くことが夢でした。

「小学生の頃、『はいからさんが通る』というマンガを読んで、つぶれそうな出版社に勤めた主人公の花村紅緒に憧れたんです。私は、編集、営業、デザイン、全部やってみたかった。小さな出版社なら、全部一人でやらなきゃいけないから”貧乏な出版社で働く”というのがずっと夢でした(笑)。でもマスコミとか出版関係は競争率が高くて書類選考もなかなか通りませんでした」

200社以上に履歴書を送り、大学卒業後は農や食などを専門とする出版社へ就職。配属されたのは全国を飛び回る営業職でした。なんとか憧れの出版社へ入社したものの、入社後初の休みは何とゴールデンウィークというほどの激務。半年ほどで辞めて東京を離れ、印刷会社を経て再び出版社に就職します。

「長野市にある小さな出版社で、お茶くみから、営業、イベントの司会、販売まで何でも全部やりました。雑誌も作っていたので取材にも行って本当に楽しかったです。社長もお客さんもいい人たちで、よく飲みにも行ってかわいがってもらいました。7年勤めましたが、あるとき社長と対立してしまって、辞めることになりました」

2006年に設立し、2年前に現在の事務所に移った。社員一人ひとりの能力を生かせる仕事を大切にしている

お客さんの声に動かされて起業へ

会社を辞め、夫のいる東京へ引っ越した山崎さんでしたが、すぐに長野に戻ることになります。

「お客さんから『今どこにいるの?仕事を頼みたいから早く帰ってきて』って電話をもらったんです。裸一貫で長野に来て、誰も知らなかったところからコツコツと営業してきたけれど、自分を信頼してくれるお客さんがいたんだと分かったことがすごくうれしくて、戻ろうと思ったんです」

山崎さんに仕事を頼みたいという電話は一件だけではありませんでした。多くの人から頼られている実感を得て、山崎さんは起業へ踏み出します。しかし、事務所も決まり、これからというその矢先、妊娠していることが分かりました。

「どうしようと思ったけれど、今更手を引くわけにはいかない。退職して、長野に戻ったのは翌月で、3カ月後に会社を設立して、その半年後に出産しました。生まれる3日前まで普通に高速道路を運転して新潟まで行ったりして働いて、出産後も5日で退院して、その足で事務所へ行って仕事しました」

旦那さんが最初の3カ月は育児休暇を取って長野へ来てくれましたが、その後は山崎さん一人。できたばかりの会社と生まれたばかりの子どもを懸命に育てました。

「毎日が綱渡りでした。どうやってオムツ替えて、どうやって授乳していたのか思い出せないくらいです。でも、お客さんも、印刷所の人も、保育士さんもみんなが助けてくれたので、やってこられました。いろいろあって、子どもが4歳くらいのときに離婚。でも、どうにか少しずつ社員も増えていきました」

書籍出版のほか、さまざまな広報印刷物、販売促進ツールなどを手掛ける

仕事は100%断らない

売上は創業してからずっと上向きだという一兎舎。山崎さんの信条は、頼まれた仕事は絶対に断らないことだといいます。

「100%受けます。だから中にいる社員はすごく大変だと思いますが、世界中のどこかの会社で誰かがやっていることだったら必ず自分たちもできるから。常に考えて最善を尽くします。一つクリアできたら次も絶対できるし、一つずつできるようになっていくことが会社の自信になりました」

仕事を断らず、内心追い込まれることはないんでしょうか。

「毎日のようにドキドキしていますよ(笑)。でも、少し前に、どうしてあのとき(妊娠が分かったとき)取引を切らずにうちに出してくれたのか、あるお客さんに聞いたら、『山崎さんが大丈夫って言ったから』ってサラッと言われたんです。そうやって信頼してくれるお客さんがいるので、ちゃんと応えたいと思っています」

紆余曲折を経て、今もなお失敗を恐れずに仕事への信念を持ち続けている山崎さんは、昔思い描いていた「はいからさん」の花村紅緒のようです。

「まさにそういう(憧れていた)仕事ができて、すごく楽しいです。いろんなところに行って、いろんな人に会えて1日として同じ日はないし、日々勉強させてもらっているんだと思います。大学を卒業してからの20年間は、ひたすら仕事と子育てで激動だった。二度は無理だけど(笑)、でもそれはそれで楽しかったですね」

取材後、すぐ車に乗って飛び出して行った山崎さん。一兎舎とは、うさぎ年の山崎さんが一人で始めたところからつけた社名だそうですが、元気に跳ねるうさぎと山崎さんのイメージが重なりました。今日もお客さんのために駆け回っていることでしょう。

「大切なことはいろんな場面でお客さんが教えてくれた」と語る山崎さん

(2015/02/12掲載)

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会える場所 株式会社一兎舎
長野市吉田2‐9‐2
電話 026‐219‐2233
ホームページ http://www.ittosha.jp/

フェイスブック https://www.facebook.com/ittosha?fref=ts  

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