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No.107

笠原

佳世子さん

玉泉寺副住職夫人/ソラテラ主宰

お寺の庭で楽しむ縁日カフェ
五感で感じる自然のありがたみ

文・写真 Chieko Iwashima

空の下でのんびり食の交流会

信州新町の山奥にある玉泉寺。ここで副住職夫人の笠原佳世子さんが毎月8日に開いている「縁日カフェ ソラテラ」が密かな盛り上がりを見せています。

玉泉寺の御本尊である薬師如来の縁日の8日にちなんで、4月から11月まで開催しているこの「ソラテラ」は、大豆料理や芋料理など、毎回テーマを決めて地元のおばあちゃんから郷土料理を教わったり、逆に笠原さんが考えた新しい料理をおばあちゃんたちに伝えたりといった食の交流がメイン。地のものを生かした季節の料理をみんなで作って、みんなでいただきます。例えば5月によもぎの草餅を教えてもらったときには、笠原さんはイノシシの肉によもぎペーストをはさんだカツレツを考案しました。

天気のいい日には外にテーブルをセッティング。目の前に見えるアルプス山脈もごちそう!

しかし、料理教室とは違います。誰かが先生というよりも、お互いにこうしようああしようと言いながら作っていきます。さらに言えば、調理に参加しなくてもかまいません。本堂を見学したり住職や副住職と話したり自由に過ごしながら料理ができあがるのを待っていてもいいので、おじいちゃんもお父さんも、誰でも気軽に参加して一緒にテーブルを囲みます。

「ここは野菜も新鮮だし、普段から地元のおばあちゃんに昔ながらの料理を教えてもらう機会も多かったんです。そういうのって貴重な体験だし、それができるこの場所が好きなので、ほかの人にも知ってもらえたらいいなって思いました。おばあちゃんたちの張り合いにもなっているみたいです」

取材で訪れた日は、いつもと少し趣向を変えて、笠原さんがみんなにベルギー料理を教えていました。参加していた地元のおばあちゃんたちは、おばあちゃんと呼ぶのをためらうほど若々しい人ばかり。手際良く野菜を刻む手元が、まるでスキップをしているかのようにウキウキして見えました。

ベテラン主婦のおばあちゃん(中央)は以前からお寺の大きな行事のときに料理などの支度を手伝ってくれていた檀家さん

このお寺に自分ができることは何か

長野市の高校を卒業後、東京の大学で栄養学を学んだ笠原さん。同級生は栄養士になる人が大半でしたが、作ることのほうが好きだったため、卒業後は東京でレストランに就職しました。その後、1年間ベルギーに渡って料理を学びました。帰国後は地元に戻り、縁あって玉泉寺へと嫁ぎます。

「こんな山奥の寺だけど、けっこうお客さんが街なかからくるんですよ。住職が以前教員をしていたので子育ての相談に来る人も多いです。お祓いとか地鎮祭もあって住職はお寺を出たり入ったりで忙しいので副住職がその雑務をして、私はサポートをしています」

夫である副住職と、お寺も今までの伝統にとらわれずに何か新しいことを打ち出していきたいと常々話し合っていたという笠原さん。

「ここに嫁いで3年が過ぎましたが、このお寺にいろんな人に足を運んでもらうために、自分ができることは何だろうと考えたとき、ずっと食に関わってきたので、やっぱり料理だと思ったんです」

1年前の4月から開始したソラテラには笠原さんのママ友をはじめ、長野市の市街地からも人が集まり、多いときは参加者が20人にのぼります。

「お寺って敷居が高く思われているので、こういった機会でもないとなかなか来られないじゃないですか。意外と本堂とかもじっくり見られたり、住職や副住職と話したりできるし、開かれている場所であることを知ってもらえて、人とのつながりが深くなったのも感じます」

差し入れしてもらった金糸瓜はサラダに早変わり。ほか、珍しい花オクラも届き、予定より2種類もメニューが増えた

ソラテラを通して伝えていきたい思い

最初は、自分に出来ることは何かという思いから始めた笠原さんでしたが、回を重ねるうちに考えが深まっていったといいます。

「こんな山奥に住んでいるというと大体の人に驚かれるんですが、車で40分走れば長野駅まで着くし、そんなに不便を感じたことはありません。価値観はそれぞれだから、田舎暮らしが絶対いいってわけじゃないんですけど、少子高齢化とか心の病とか、現代の社会問題ってけっこう田舎暮らしに解決策が秘められていると思うんです。のびのび遊ぶ息子を見ているとここなら子ども5~6人でも育てられるような気がしてくるし、近所の横のつながりが強いし、野菜の値段が高騰したって自分で作っていたら関係ないし。自分で作ったものを食べられる喜びとか、生きていくうえでの大切なことが田舎暮らしや自然のなかに含まれているんじゃないかって。ソラテラに参加してもらうことで、ただおいしいものを食べてよかったっていうところだけじゃなくて、田舎や自然の良さを少しでも感じてもらいたいと思っています」

対向車とすれ違いができないほど細くて曲がりくねった山道には、南信州の田舎育ちの私でさえも冷や汗をかきましたが、笠原さんはへっちゃら。そして、ソラテラ自体はとてもゆるやかというか、のんびりと進行していましたが、奥にそんな熱い思いを秘めていると知って少し驚いてしまいました。
今後は、食事以外のこともしてみたいと考え、10月は副住職による仏教講座を開催予定です。

この日のメニューはワーテルゾーイ(鶏のクリーム煮)、貝の白ワイン蒸し、フリッツ(フライドポテト)など、ベルギーの田舎料理。いつも地元で採れたものをたくさん使うため、参加費は500円~1000円程度

「ここに嫁いでからお釈迦様、いいこと言うじゃん!と思ったので、仏教の良さも伝えていきたいです。そして、食の交流も続けながら、根底では自然の素晴らしさを伝えていけたらいいなと思っています」

玉泉寺の周辺は、昔は街道筋で多くの旅人が行き交っていたそうです。今も残る屋号には「茶屋場」などがあり、昔はお茶のみ処だったり旅館だった家もあるといいます。この場所に、ソラテラを通して昔のように人が集まるようになった今、笠原さんがここへ来た深い意味を感じずにはいられませんでした。

歴史は古く、平安時代に開かれた玉泉寺。「牛馬安全」や「山犬の御札」など、代々伝わるお札を求めて遠方から訪れた人もいる

(2014/10/03掲載)

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