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ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.448

酒井

慎平さん

JINOMONO代表・外食コンサルタント・ジャーナリスト

生産者と飲食店をつなぐ流通サービスで長野から食を豊かに

文・写真 島田 浩美

暮らしに欠かせない「食」。酒井慎平さんは外食向けBtoB WEBメディアの編集長を経て、長野市に帰郷しました。現在は、外食ジャーナリストや地域食材コーディネーターとして活躍しつつ、地元生産者と県内外の飲食店をつなぐ流通サービス「JiNOMONO(ジノモノ)」も展開しています。
 

長野のこだわりが詰まった「地のもの」を全国の飲食店へ

「JiNOMONO」は、地域特化型の業務用専用WEBサイト。長野市を中心とした北信地域の生産者が作る農産物のほか、信州ジビエも販売しています。飲食店はこのサイトにアクセスし、WEB上から生産者が作ったこだわりの新鮮な産直食材を必要な分だけ注文できるうえ、仕入れの手間も軽減できるというメリットがあります。一方、生産者にとっては収益向上のほか、飲食店を通して栽培のこだわりを一般消費者に伝えることができます。結果、生産者のこだわりが飲食店の付加価値にもつながる、新しい形の独自のオンラインマルシェです。
 
「JiNOMONO」は長野市の生産者と飲食店双方のメリットを追求した産直食材仕入れのプラットフォーム
▲「JiNOMONO」は長野市の生産者と飲食店双方のメリットを追求した産直食材仕入れのプラットフォーム
 
「長野駅前周辺の飲食店の方々と話すと、やはり地元食材を使いたいものの、日々の営業に精一杯で、直接仕入れる農家探しは難しいことから、提案すると前向きな反応があります。農家さん側も同じく、卸先の飲食店を開拓している時間はなかなか取れないため、『ぜひやってほしい』といわれることがほとんど。双方が課題を抱えてきたことを感じました」
 
こう話す酒井さん。飲食店と生産者のそれぞれのこだわりを結びつけることで、お互いの顔が見える食の消費を促し、価格ではなく価値で食を選んでもらうことで、長野から日本の食を変えていきたい。それが「JiNOMONO」のめざす姿です。
 
オンラインマルシェ 「JiNOMONO」

外食業界のトレンドを追うなかで見えてきた課題と新たな思い

長野市出身の酒井さん。昔から飲食店の経営に興味をもっていたことから、商業高校を経て、進学した東京の大学でも経営学を学びました。卒業後は都内の外食産業専門の広告代理店に就職。同社が手がける外食向けBtoB WEBメディア「フードリンクニュース」の編集記者となり、日々、外食産業の経営者にインタビューをしたり、外食業界のトレンドを分析した記事を配信し、入社4年目には26歳という若さで編集長に就任しました。また、外食関連の専門媒体で構成される「外食産業記者会」の代表幹事も兼務。「外食のトレンドには若者の視点が必要」との思いで、日本各地の飲食企業と精通し、知識と経験を磨いてきたのです。
 
長野市出身の酒井さん
 
そんな酒井さんが長野市に戻ってきたのは、2019年3月。30歳を迎える年でした。外食産業に携わるなかで、次第に、農作物の生産地である地元・長野の農業の高齢化と、比較的短期間でサイクルしていく外食トレンド、双方の課題が見えてきたのがきっかけです。
 
「長野の農業や食産業の高齢化は大きな問題である一方、東京には別の問題があると感じました。日本初上陸の店やフォトジェニックな店に行列ができますが、それは一過性のものに過ぎません。食の魅力のひとつではあるけれど、本質的なものではないと思ってしまったのです」
 
食の本質的な魅力。それは、酒井さん自身が育ってきたなかで食べてきた、祖父母が畑で作る農産物などではないだろうか。そんな思いが酒井さんのなかに生まれてきました。
 
「農家だった祖父母が作る野菜のように、身近な生産地で作り手の顔が見え、話を聞いて食べることは、小手先の魅力ではなく、本質的に好きになりうる可能性があります。また、農家の高齢化などの問題は、日本各地で起きていることから、都会的な食の消費スタイルと地方の生産者の高齢化などの問題を互いに解決するために、コンサルティングや物流のサービスを作り、それぞれのマーケットをつなぐことで日本の食を長野から変えていけたら。20代最後の年で、挑戦するなら今しかない、との思いもありました」
 
「長野の農業に何か力になれることはないか」との思いで目的をもって長野に帰ってきたと話す酒井さん
▲「長野の農業に何か力になれることはないか」との思いで目的をもって長野に帰ってきたと話す酒井さん
 
こうして地元に戻り、「JiNOMONO」を起業。自らの足で小規模生産者を発掘し、販路である飲食店の開拓においても、編集長時代に培った全国の飲食店のネットワークを生かしつつ、長野の飲食店は実際に訪ねてPRすることで営業活動をしています。
 

生産者のこだわりを価値に変えていくブランディングを

現在は起業から約1年。生産者と飲食店、それぞれのこだわりを尊重しつつ双方を結びつけることは苦労もあるそうですが、生産者のこだわりをしっかりと形にし、食材の価値にして食べる人に伝わることを意識しています。
 
「生産者のこだわりは、実際に会って話すと想像以上に強いと感じましたが、同時に、そのこだわりが伝え切れていないもったいなさも実感しました。どんなこだわりでも、共感してくれる人がいたら価値になります。そこで、柔軟に対応し、ブランディングして飲食店に伝えることが僕の役目だと思っています」
 
ブランディングして飲食店に伝えることが僕の役目だと思っています
 
たとえば、そのひとつが、2019年10月の台風19号で被害を受けたりんご農家の支援です。千曲川の堤防の決壊により浸水被害を受けた長野市と須坂市のりんご農家と提携し、「災害支援りんご」マークを発行。地元や全国の飲食店に向けて販売を開始しました。その際、店内に掲示できるよう、ラミネート加工したポップを同封して発送したのです。
 
「最終的に食べる人に背景を知ってもらわないと、食材の価値が生まれません。このりんごを通して伝えたかったことは、長野は台風の被害はあったけど、被災を免れたおいしいりんごがあるということ。事実をより価値として伝えるためのブランディングをし、広告を発信する者として、生産者と飲食店の間に立たないと意味がないと感じています」
 
被災を免れた林檎
 
また、「JiNOMONO」では生産者からの出荷だけでなく、飲食店のリクエストに応じて食材を発掘することもあるのだとか。たとえば、都内のイタリアンレストランから「長野でポルチーニ茸を作っている生産者がいるらしい」と聞き、探してつなげたこともあったそう。このほか、生産者が一番おいしいと感じているレシピを飲食店と共有したり、信州ジビエのどの部位をどう活用したらよいかをジビエ加工施設からシェフに伝えてもらうといったコンシェルジュのようなサービスも展開しています。双方の意見交換によって新たな食材の販路が開拓され、シェフにとっては新しいレシピのアイデアにつながっているのです。
 
「今は飲食店の競争が激化している時代。そのなかで、フォトジェニックな方向ではなく食材で差別化を図ってもらえたら。長野には、その差別化のための秘めた魅力があります。それをどんどん発掘し、小さいながらも個性を発揮したいという飲食店とつなげていきたい。それがこれからも変わらない目標です」
 
飲食店のメニューの裏側に生産者の思いがストーリーとして加えると、料理の価値は高まります。また、小規模生産者にとっては、販路拡大が担い手不足の解消にもつながることでしょう。
 
「JiNOMONO」では、長野市西部と小川村にまたがる西山地区の特産「西山大豆」の魅力も発信
▲「JiNOMONO」では、長野市西部と小川村にまたがる西山地区の特産「西山大豆」の魅力も発信
 
さらに、酒井さんは長野県の「信州ジビエコーディネーター」を務めたり、今まで培った経験を生かし、食品メーカーで飲食店のニーズを伝えるセミナーの開催や、生産者に対して外食業界のトレンドを紹介するといった外食コンサルタントとしても活躍しています。そして飲食店自体のブランディングも行い、東京のフランチャイザーを長野のオーナーに紹介することで、今後は長野市中心市街地に、さらに全国で人気のフランチャイズ店の出店が計画されているのだそう。
 
「長野市街地には全国屈指の売上をあげているチェーン店があり、注目を集めているエリアでもあります。そうしたデータの裏付けのもと、長野で頑張っている経営者にどんどんフランチャイズを紹介し、今以上に長野がいろいろな飲食店が選べる場所になればいいなと期待しています」
 
「長野から食を豊かに」。その思いは、生産者と飲食店をつなぎ、飲食店の付加価値づけや小規模生産者の販路拡大を図るだけでなく、消費者にとっては飲食店の選択肢の多様性という食の豊かさにもつながります。
酒井さんの挑戦は始まったばかり。これからも長野から食を豊かにすべく、新たな視点でさまざまなアイデアを繰り出していくことでしょう。
 

(2020/04/07掲載)

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会える場所 JiNOMONO(ジノモノ)

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