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No.437

白倉

敦史さん

〈HAKKO MONZEN〉店長

「身近な当たり前こそ特別」信州で親しまれてきた発酵食を届ける

文・写真 小林 隆史

「信州の味噌や醤油の旨み、白麹に地酒を合わせたコク、野菜の水々しさや果物の甘み…。身のまわりに目を向けたら、信州で古くから親しまれてきた発酵食や、豊かな気候風土から育まれた野菜や果物のおいしさを、もっと知りたくなったんです。何より、それらを僕たちに届けている生産者がいます。それがどんなに特別かってことを、たくさんの人に伝えていきたい」
 
ーー土地の恵み、生産者の暮らし、食材を届ける人たちの営み、料理人の思い…。すべてをお客様に届けていきたいと話すのは、2019年9月に善光寺表参道にオープンした居酒屋〈HAKKO MONZEN〉店主の白倉敦史さん。オープンキッチンのカウンターから、お客さんの談笑やおいしい!と喜ぶ声に耳を傾けながら、料理に丹精を込めます。
 
〈HAKKO MONZEN ~Craft Food Parlor~〉のメインは『発酵』。信州門前の老舗味噌店〈すや亀〉の味噌や〈能登重鰹節店〉のかつお節など、門前界隈で古くから親しまれてきた発酵食を使用。野菜は長野県を中心に厳選。信州の食材と発酵食の旨みが引き出され、噛むほどに味わいが深まるメニューばかり(photo : 畔上広行)
▲〈HAKKO MONZEN ~Craft Food Parlor~〉のメインは『発酵』。信州門前の老舗味噌店〈すや亀〉の味噌や〈能登重鰹節店〉のかつお節など、門前界隈で古くから親しまれてきた発酵食を使用。野菜は長野県を中心に厳選。信州の食材と発酵食の旨みが引き出され、噛むほどに味わいが深まるメニューばかり(photo : 畔上広行)
 
「寒くなったら煮込みを仕込んで、秋にはきのこを焼いたり。いつもの定番は信州の味噌を使った豚汁で…。そんな風に、いつ来ても新しくて、それでいてほっとするお店でありたいです」
 
善光寺表参道沿いの立地から、観光客向けと思う人もいるようですが、オープン直後ながら、毎週のように通う近所の夫婦もいるとのこと。「遠くを目指すのではなく、身近な人へおいしいを届けることから」という思いは届いているよう。そんな〈HAKKO MONZEN〉の店長・白倉さんの料理にかける熱意と、食のある場づくりへの思い入れを紹介します。
 
〈HAKKO MONZEN ~Craft Food Parlor~〉は、1925年(大正14年)建築をリノベーション。歴史ある佇まいを残し、内装のデザインはシンプルに。建築設計は建築家の香川翔勲さん。施工は信濃町のゲストハウス〈LAMP〉や善光寺表参道の〈FORET COFFEE〉などを手がけてきた〈GOOD TIME BUILD〉の林拓さん。インテリアは、ヴィンテージ家具リペアを手がける〈Ph.D〉や北欧のヴィンテージ家具を全国展開する〈haluta〉が協力 (photo : 畔上広行)
▲〈HAKKO MONZEN ~Craft Food Parlor~〉は、1925年(大正14年)建築をリノベーション。歴史ある佇まいを残し、内装のデザインはシンプルに。建築設計は建築家の香川翔勲さん。施工は信濃町のゲストハウス〈LAMP〉や善光寺表参道の〈FORET COFFEE〉などを手がけてきた〈GOOD TIME BUILD〉の林拓さん。インテリアは、ヴィンテージ家具リペアを手がける〈Ph.D〉や北欧のヴィンテージ家具を全国展開する〈haluta〉が協力
(photo : 畔上広行)
 

人生の土台を守り、料理の道に芯を通す

人生の土台を守り、料理の道に芯を通す
 
1995年生まれの白倉さん。美容師の母の背中を見て育ち、幼い頃から家族の料理を作る毎日を送りました。「料理はずっと好きでしたね。いずれは母のように、自分で何かをつくること、自分のお店をもつことに憧れを抱いていました」と振り返ります。
 
高校卒業後は、〈長野調理製菓専門学校 石坂学園〉で調理の勉強に励み、東京の一流レストランやホテルへ頻繁に通うなどして、料理のいろはを学びました。在学中には、東京のレストランでインターンシップを経験。しかし、そのまま東京で食の道を極めようと決意する前に、白倉さんは岐路に立たされます。
 
「母が闘病をしていたので、母と姉を長野に残して、このまま自分の道を歩んでいいのだろうかと迷っていました。そこで、研修先の先輩に相談すると、返ってきた言葉は、『自分にとっての土台はなんだ?』という問いでした。ーー将来の夢にいくら芯を通そうとも、人生の土台を踏み台にしては、夢を叶えることなんてできないと」
 
当時18歳の白倉さんは自問します。そして、これまでの人生を培ってくれた家族のそばで夢を追うことを決めました。
 

「誰のためのお店なのか?」当たり前を考え直すこと

「誰のためのお店なのか?」当たり前を考え直すこと
 
調理専門学校卒業後は、在学中からことあるごとに声をかけてくれた長野市内のイタリアンレストランへ。
 
「料理に関しては、とにかく厳しい店主でした。考えもしないで野菜の根を切ってしまった時には『なんで根が食べられないって決めてんだ?農家さんのことを考えて料理をしてるか?』と怒られたり。いつもそんな風に『誰のためのお店なのか?』を問いかけてくれました」
 
生産者と消費者をつなぐひと皿の意味を、常に考えながら料理に打ち込んだ白倉さん。しかし、母の看病もあり、多忙を極め、倒れてしまいます。
 
「店主からは『いつでも戻ってきていいし、困った時は頼っていいぞ』と声をかけてもらいました。しかし、このまま料理の道を歩むのか、考え直すようにもなったので、中途半端な気持ちではお世話になれないと思い、一度料理の道を離れました」
 
目の前にある食材のこと、これまで学んできて料理のいろは、そして家族のこと。すべてが当たり前ではないと、考え直すようになりました。
 

「尊重し合える仲」母が教えてくれたこと

「尊重し合える仲」母が教えてくれたこと
 
一度は立ち止まった白倉さん。しかし、休業中にあらゆる飲食店に足を運ぶうちに、「やはり料理を通して、お客さんの喜ぶ顔を見れる飲食店こそ、自分のつくりたい場だ」と思うようになります。そして今度は、お店づくりの基礎を学ぼうと、市内の繁盛店の門を叩きました。その頃、時を同じくして、母との別れを迎えます。
 
「母の葬儀に多くの方が参列してくださいました。中には、母のもとで美容を学んだかつての研修生の方もいて、『あの時教えられた言葉が、今でも仕事の原点になっています』と声をかけられたり。誰に対しても嘘のない母の生き方に、人を尊重することを改めて学びました」
 
そんな母の人生を知り、身のまわりの人、誰もが心地よいと思える居場所を模索するようになった白倉さん。長野市内の繁盛店では、こんなエピソードも。
 
「従業員同士であいさつをしない場面があり、『こんな歯車のひとつのように人を使うお店でいいはずがない』と先輩たちに伝えたんです。先輩たちも真剣に考えてくださって、従業員同士が尊重し合う関係になっていきました」
 
母の土台のもと、白倉さんの道に、一本の芯が通っていきます。
 

『生産者・料理人・お客さん』すべてがひとつの円となり、醸成する場を目指して

〈HAKKO MONZEN ~Craft Food Parlor~〉のチーム
▲〈HAKKO MONZEN ~Craft Food Parlor~〉のチーム
 
次第に「お店や関わるすべての人たちとの円を、自分なりにつくってみたい」という思いを強めた白倉さんは、次のステージへと進みます。長野市権堂の〈古民家 dining BAR GOFUKU〉をはじめ、長野県山ノ内町のカフェ〈chamise〉、レストラン〈HAKKO YAMANOUCHI〉を手がける会社へ入社することに。そして、〈HAKKO MONZEN〉の店長を託されることになりました。
 
「会社としてどんな場づくりを目指していくのか、そこに対しては、僕の考え方もまっすぐに伝えています。第一に『人を大切にすること』。料理がおいしいのは当たり前で、お客さんも従業員や料理人も、そして生産者も、誰もが心地よいと感じられる環境や関係をつくれないとダメだと思っているので」
 
そんな思いを、店づくりに反映させています。
 
「アルバイトの学生が、『仕事が楽しくて、早くお店の役に立ちたい』と言ってくれて。お店のことを主体的に考えてくれていることが、とても誇りに思えました」
 
切磋琢磨し、高め合う志。「決してお客さんに見せるようなものでもないですし、お客さんには関係ないことですけど」と白倉さんは言いますが、この場所で育っていく次代の料理人やスタッフが、どんな場を醸成させていくのか、見守り続けたいと思うのでした。
 
『生産者・料理人・お客さん』すべてがひとつの円となり、醸成する場を目指して
 

(2019/11/06掲載)

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会える場所 〈HAKKO MONZEN ~Craft Food Parlor~〉
〒380-0832 長野県長野市東後町16-1-1F
電話
ホームページ https://www.facebook.com/hakko.monzen/

営業時間:Lunch 11:00〜14:30L.O / Dinner 18:00〜22:30L.O
定休日:月曜日

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