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ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.434

中澤

幸司さん

コーヒー焙煎所 Piano Piano

「日常のコーヒー」を届ける焙煎所兼カフェ

文・写真 石井 妙子

川中島・御厨みくりや公園へと続く通り沿いに現れる、片流れの屋根と板張りの壁が印象的な建物。2019年7月にオープンした「Piano Piano(ピアノピアーノ)」は、カフェスペースもあるコーヒー焙煎所です。オーナーの中澤幸司さんは、コーヒーの仕事に携わりながら15年以上暮らした仙台を離れ、祖父母が暮らしていたこの街に新たな店をオープンさせました。
 

自家焙煎ハンドドリップのコーヒーを手ごろな価格で

天井が高い伸びやかな空間に、穏やかな光が差し込んでくる店内。入り口では、重厚な焙煎マシンが迎えます。ここは、オーナーの中澤さん自ら焙煎した豆の販売と、その豆で淹れたコーヒーを味わえる焙煎所兼カフェ。ゆったりとした空間は買い物帰りの人や近隣に住む家族連れの憩いの場になっていて、オープン2カ月ですでに常連のお客様もいるようです。
 

▲西友川中島店から御厨公園に向かう通り沿いの三角形の敷地に立つ、個性的なフォルムの店舗
 

▲白を基調にした空間に鮮やかな椅子やソファが映える店内
 
「大学時代、アルバイトの家庭教師先で豆から挽いたコーヒーを初めて飲んで『豆から淹れると、こんなにおいしいんだ』と感動して。それをきっかけに近くの焙煎所でアルバイトを始めたことが、この世界の入り口でした」
 
と中澤さん。カフェメニューは豆から選べるドリップコーヒー、エスプレッソ、ラテアートが楽しいラテ類までバラエティ豊か。自家焙煎のハンドドリップコーヒーが1杯350円からと、手ごろな価格も魅力です。
 
「コーヒーは特別な存在ではなく、日常の一部にあるべきものだと思います。近所のカフェで飲むコーヒーが500円や600円だと、ちょっと高いかなと。僕が貧乏性だからかもしれませんが(笑)。以前働いていた喫茶店はコーヒー1杯400円で、朝昼晩と1日3回お店に通ってくださる常連さんもいました。そういう“日常の1杯”になりたいと思うから、価格はギリギリまで抑えています」
 

▲中澤さんの手の中で描かれるきれいなラテアート
 

▲優しい甘さの「キャラメルラテ」(400円)
 
リーズナブルだからこそ、いろいろな味を気軽に試せるのも嬉しいところ。現在Piano Pianoで扱うコーヒー豆は南米産やアフリカ産のシングルオリジン(産地を地域や農園、生産者単位まで絞り込んだ単一品種のコーヒー豆)とオリジナルブレンドの計10種類ですが、知識がないとどれを選べばいいか迷うもの。手ごろな価格だからこそ、中澤さんの解説を頼りにいろいろな味を気軽に試せるのです。
 
「フルーティーなものから苦味の強いビターなものまで、味わいの豊かさがコーヒーの魅力。だからこそ、いろいろな味を楽しんでもらえるバリエーションを揃えています」
 

▲入り口には販売している豆10種の生豆と焙煎後のサンプルが並び、香りと解説をもとに選べるようになっています
 
コーヒーの味を決める要素は膨大にあり、突き詰めると味のバリエーションはなんと何兆通りもあるのだそう。けれど奇をてらうことなく「シンプルにおいしくて飲みやすい価格のコーヒー」を選ぶのが中澤さんの信条。「そこまで強いこだわりはない」と控えめに話しますが、その想いこそがお店の心地よさを作っているのです。
 

コーヒーを通して心地いい時間を提供したい

長野市内の高校を卒業後、仙台の大学で機械工学を学んだ中澤さん。卒業後は仙台に就職しましたが数カ月で違和感を感じ、退職します。「これからどうしようか」と思いを巡らせながら長野の実家に帰る道中、新潟の海辺の漁師町で過ごした夕暮れのひとときが、その後を決める転機になったと振り返ります。
 
「働いていた頃は、技術職だったこともあり進化し続ける最新技術に囲まれて目まぐるしい毎日を送っていました。けれどその海辺の街には、それまでと全然違うゆったりとした時間が流れていたんです。そんな心地いい時間を自分も提供してみたいと思った時、思い浮かんだのが学生時代に焙煎所で働いた記憶でした」
 

▲注文を受けてから1杯ずつ豆を挽きます
 
一杯のコーヒーを丁寧に淹れる、ゆっくりとした時間。その贅沢さを体感していた中澤さんは、直感に導かれるように「コーヒーを仕事にしよう」と決意。仙台の老舗喫茶店で働きながら経験を積みました。その後、縁あって学生時代にアルバイトしていた焙煎所の営業を任されることに。小さな店舗だったため一人で焙煎や接客を行いつつ、「もっと気軽に入れるお店にしたい」と自ら提案してカフェ営業もスタート。ちなみにカフェで提供するケーキは、当時から中澤さんが手づくりしているのだそう。
 
「コーヒー豆の店は敷居が高いと感じる人もいるけれど、カフェもあれば入りやすいし、店内にお客様がいることで新しいお客様が入ってきやすい好循環も生まれる。豆販売とカフェ営業、二つを並行させることで得たやりがいが、今につながっていると思います」
 

▲店頭には存在感たっぷりの焙煎機。焙煎は朝、開店前に行っています
 

▲温もりある看板が迎えてくれる店舗入り口
 
会社員時代は大規模なプロジェクトの一部を担い、長い期間をかけてコツコツと取り組む日々。対してこの仕事は、自分が淹れたコーヒーを目の前のお客様に毎日提供し、ダイレクトな反応を受け取ることができます。「お金という対価だけでなく、『おいしかった』と温かい言葉をもらえることもある。その小さな積み重ねが、僕にとっては大きなモチベーションになると実感しました」と振り返ります。
 
そんな中澤さんも、カフェブームやサードウェーブコーヒーブームの中、コーヒーをファッションとして楽しむ文化や安易に新しい器具を取り入れる流れに違和感を感じ、また体力的な不安もあって業界を離れた時期がありました。再びコーヒーの世界に戻ろうと考えた時に決意したのが、独立し、自分の考えにもとづいて自分のペースで働くこと。そうして2016年に営業を始めたのが、車を使った移動販売のコーヒー店「Piano Piano」でした。
 
「店名はイタリア語で『ゆっくり、ゆっくり』という意味です。会社を辞めた後に新潟の海で感じた『せわしない世の中で、コーヒーを飲むときくらいはゆっくりした時間が流れる空間を提供したい』という思いを込めました」
 

▲さわやかなツートンカラーが目印の「Piano Piano号」(中澤さん提供)
 
移動販売を選んだのは、実店舗に比べて初期投資を抑えられるのはもちろん「コーヒーがない場所にコーヒースタンドを作れるのがおもしろいなと思って」と中澤さん。当時出店していた場所は、仙台市内のショッピングモールや福祉施設など。屋外販売なのでお客様を待たせないよう、スピーディーに提供できるコーヒーとラテにメニューを絞り、価格も手ごろに抑えました。
 
「安いね!とお客様に驚かれることもありましたが、自分としては買っていただけるだけで嬉しかったですね」
 

長野で店舗経営という新しい道をスタート

開業から2年がたち、次第に仙台での知名度も上がっていた2018年、中澤さんは大きな決心をします。それは、奥様と二人のお子さんを連れて自分の両親が暮らす長野にUターンすること。数年前に祖父母が相次いで亡くなり「人はいつ死ぬか分からない、今のうちに親孝行をしたい」と感じたこと、そして子どもたちを自然豊かな環境で育てたいと思ったことが決断の理由でした。「商売的には心配されましたが、何もしがらみのない場所でゼロから始めるのもいいかなと思って」と中澤さんは気負いなく笑います。
 
実家からほど近い土地に現在の店舗「Piano Piano」をオープン。当初からコーヒー豆の販売を事業の柱にするつもりでしたが、過去の経験を踏まえて「まずは多くの人に親しんでもらえるように」とカフェを併設することに。気持ちよく過ごせる空間設計はもちろん、自身の経験を生かした「子ども連れでもくつろげる店づくり」を大切にしています。
 

▲客席の一角に、座ったり寝転んだりして遊べるキッズスペースを用意
 
「おしゃれなカフェはたくさんありますが、当店では毎日子育てで大変なお母さんお父さんが、ほんのひと時でもくつろげる店を目指しています。僕自身、子どもを連れてお店に入ると遠慮してしまう気持ちは分かりますから、ここでコーヒーを飲む時は少しでもゆっくりしてもらえたら」
 
日常に寄り添う「普段着」のコーヒー。その味と時間を楽しみに、ぜひ訪ねてみてください。
 

(2019/09/18掲載)

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会える場所 コーヒー焙煎所 Piano Piano
長野市川中島町御厨1037-1
電話 026-285-9305
ホームページ https://www.facebook.com/cafepianopiano

営業時間:10:00~19:00
定休日:月曜、第1・第3日曜

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