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No.02 SPECIAL TOPICS

スミス

アダムさん

陶芸家

全ては窯をあける瞬間のため

文・写真 新津勇樹

日本とイングランドの陶芸

長野市七二会には、イングランドから来日した陶芸家がいます。アダム・スミスさんです。

現在、奥様のすみす 陽子さんと「あだむさんち」というカフェを営みながら陶芸に打ち込む日々を送ります。

来日前に母国イングランドで6年ほど陶芸家として活動していたアダムさんですが、両国の作品を通して気づいたことがあるといいます。

「日本とイングランドでは作品が全く違います。イングランドはボウルやプレートが中心です。でも日本は茶碗や湯呑みが多いですね。湯飲みのような取っ手がない作品は日本に来て初めて作ったので、すごく新鮮でした」

器の形だけでなく、食事に対する向き合い方も少し違うようです。

「それに食べ物の価値観も違いますね。イングランドは、食べものはあくまでも食べもの。だからイングランドの陶器は同じものを大量に作ります。でも日本は、食べものはアートという感覚があります。だから、それを載せるお皿も含めてアートなんです。作品も一つひとつ芸術性が試されます」

そう話すアダムさんの作品は、全て自然のものを材料としています。

「ボディには土を使い、うわぐすりも地元のものを使って手作りしています。リンゴの木や竹を焼いて出来た灰を、洗っては濾すということを何度も繰り返します。800℃で素焼きしたボディに、そのうわぐすりをつけて1250℃で焼いて完成です」

土との相性や窯での焼成時の酸素との関わりなどにより作品に味が出てくるといいます。
それゆえ「窯をあける時が一番ワクワクするし、そこが陶芸の魅力です」とアダムさんは笑顔を見せます。

アダムさんが手がけてきた作品の数々。日英通算で2000点以上も手掛けてきたという

希望者には馬との交流も。妻の陽子さん(中央)が案内してくれる

すみす陽子さんとの出会い

母国でカレッジ卒業後、カーペンターとして働いていたアダムさんですが、イングランド国内の大不況で仕事がなくなり、その時に知り合いから声を掛けられて入ったのが、陶芸の世界でした。

もの作りは好きだったというアダムさんですが、未知の世界に最初は雑用から入り、仲間の陶芸を身近で見ているだけでした。しかし、見れば見るほど、どんどん興味が湧いてきたといいます。

「もともと地道にコツコツやるのが好きでしたし、窯をあける時の瞬間がワクワクして大好きになったんです」

少年のように輝いた瞳で陶芸の魅力を話すアダムさん。最終的にはイギリス人6人と同じ窯で陶芸をやっていたそうです。

アダムさんが陶芸の道に進み始めて4年後の1994年。そこで運命の出会いが待っていました。
お相手は、単身でイングランドに留学に来ていた陽子さん。

当時、初めての海外留学で、慣れない外国の暮らしに心身ともに疲れていた陽子さんは、一人で物思いにふけるたびに、母国日本の風景が頭に浮かんでいました。

そんな時に、友人からある情報が入ります。

「イングランドでは珍しい草野球チームがあるということを聞いたんです。『草野球』という言葉で日本を恋しがる私の心に一気に火がつきました」

そのままグラウンドへ足を運ぶと、何とも言えない光景が陽子さんの目に映りました。

「イングランドには野球文化がないので、ルールがめちゃくちゃでした。打ったら三塁に走る人もいるし、まずファーストが送球を取れないんですよ。だから、打てば必ず塁に出れるんです(笑)。でも、それを真剣にやっている姿が可愛げがあって、妙にホッとしました」

一つ一つを思い出しながら笑みを浮かべる陽子さん。彼女の沈んだ心に元気を与えた出来事でした。

その後、その居心地の良さから何度も通ううちに、メンバーだったアダムさんと親しくなります。

試合では必ず、三振かホームランだと笑うアダムさんは、陽子さんの心のバックスクリーンに恋の特大ホームランを放ちます。

サッカーの母国イングランドで、草野球を通して結ばれた二人は、1995年、日本に渡ることになります。

庭からは遠くにアルプスを望むことが出来る。この景色を見ながら日々、創作活動をしている

アダムさん手製のダルマストーブ。暖気が横の腰掛けに伝わり、快適な食事が楽しめる

田舎、アルプス、古民家

来日してまず住んだ場所が愛知県でした。ここで陶芸家に弟子入りし、4年間日本の陶芸を学びます。しかし、街のマンション暮らしに、当初から息苦しさを感じていたアダムさんは、田舎での創作活動を望むようになります。

「イングランドには山がないんです。なので、山には憧れがありましたね。特にアルプスが大好きで、いつかアルプスが見える場所に住みたいと思っていました」

アダムさんの中で、「田舎暮らしの陶芸家」という夢が徐々に大きくなっていくなか、1998年に開催されたオリンピックを通して長野市を知り、その自然の多さに魅かれます。

すぐさま物件探しに動きまわり、「田舎、古民家、畑、間取り、そしてアルプス」という、全ての条件が揃っていたのが、現在の長野市七二会でした。

現在、一度に100個は入るという大きな窯を使い、陶芸の道に邁進するアダムさん。

「アルプスを目の前に、窯をあける。こんな幸せなことはないですね」

そう話すアダムさんの大きな背中の遥か先には雄大なアルプスを見ることが出来ました。

昨年から始めたカフェでは夫婦で料理する。この日のメイン、ラザニアはアダムさん手製。お皿も自身の作ったものである

(2015/02/23掲載)

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