ナガラボ ながの市の元気研究所

ナガラボとは!?

<世界が誇る日本文化>

近年日本の文化は世界で注目されています。日本人の伝統的な食文化である「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことは皆さんの記憶に新しいのではないでしょうか。

開店前スタッフと、当日に提供する日本酒について打ち合わせる。その姿は日本人のようだそんな日本の食文化の一つである日本酒を世界に広めているフランス人がいます。長野市在住のグランデマンジュ・ドミニクさんです。

「日本酒はワインに負けないものです」

こう話すドミニクさんは、現在諏訪市に本社を置く宮坂醸造株式会社で日本酒「真澄」を海外に広める海外マーケティングアドバイザーとして働いています。

取引先の国は、アメリカをはじめ、ヨーロッパ、東南アジアと25ヶ国近くにのぼります。そのため、母国語のフランス語のほか、日本語、英語、ドイツ語に堪能です。また、日本酒を紹介したパンフレットやホームページ、DVD製作をはじめ世界各国で展示会を開き日本酒をPRしています。
取引先の国には年に一度は訪れ、現地の従業員に日本酒の楽しみ方を教えるトレーニングコーチとしても活躍しています。

「日本酒を世界酒にしたいんです」

遥か遠い海の向こうから渡ってきた敏腕マーケターはそう熱い思いを話してくれました。


<日本酒との出会い>

ドミニクさんはフランスの大学を卒業後、地元で23歳から10年間、貿易関係の仕事に従事していました。そこで海外マーティングのノウハウを学びます。その後、現在の奥様であるシルビー・ジャコさんが国際交流委員として長野県庁に派遣されたのをきっかけに、1992年に自身も長野市に移り住みます。

世界最大のフランスで行われるワイン見本市「ビネスポ」に参加。今、日本酒は海外で注目されているという(写真提供:ドミニクさん)

「私が来た年は、長野冬季オリンピックが決まり、長野市が動き出していた時期でした。オリンピック関連の資料はフランス語も公式語になっていたので、校正の仕事をしていました」
 

こうしてオリンピック前後を含め6年間ほど、校正の仕事などに携わり、2001年に日本酒と出会います。

「全国12社で構成された日本酒を広める『日本八壺会(はっこうかい)』という団体があったんですが、1999年にフランスで行われた世界最大級のワイン見本市『ビネクスポ』に参加した時に、フランス人がいないとうまくPRできないという反省点が残ったそうです。それで一緒に日本酒をPRしてくれるフランス人を探していたらしく、知人から紹介されました」

こうして2001年よりビネクスポに参加し、その時に宮坂醸造株式会社の社長と出会います。その後、酒蔵を見学したときに「こんな世界があるんだ。素晴らしい、是非世界へ広めたい」という思いから海外マーケティングアドバイザーとして働くことになりました。

ラ・シャサニエットのシェフと宮坂醸造の奥様と。グラスで嗜む日本酒がフランススタイル(写真提供:ドミニクさん)<12年間で変わってきた世界の中の日本酒>

現在でこそ、日本酒を数多くの国に広めているドミニクさんですが、当初は日本酒を受け入れてもらうことは容易ではなかったといいます。

「ヨーロッパでは日本酒を中国の白酒(パイチュウ、アルコール度数50以上)に間違われていて、そんな強いお酒飲めるかって拒まれていました。特にワイン原産国のフランス、スペイン、イタリアで受け入れてもらうのは難しかったですね」

しかし、必死に試飲してもらったり、PR活動を繰り返した結果、徐々に「美味しい」との声が広がっていったといいます。

「この12年間日本酒をPRしてきて、ようやく日本酒が世界酒になりつつあります。日本酒は世界のソムリエが注目しているくらいですから」

ドミニクさんは目を細めます。

戸隠トレイルランを視察しに来たフランスのピラトレイル大会のスタッフメンバーらと「フランスでは日本文化が人気なんです。食事に合わせて日本酒を紹介しているくらいです。チーズや生ハムに日本酒が実に合うんですよ。フランス料理と一緒に並ぶワイングラスに、日本酒が注がれる。20年前ではとても考えられませんでした」

お盆に初めて東北に旅行した際に、宿でゆっくり飲んだ日本酒が忘れられないくらい美味しかったというドミニクさん。

長野市に日本の食文化を世界に広めてくれる、こんなにも頼もしいフランス人がいるという自慢話を肴に、今晩は日本酒を嗜みたいと思いました。

(2015.02.23 掲載)

会える場所:宮坂醸造株式会社

住所:長野県諏訪市元町1-16
TEL:0266-52-6161 

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