自分の感性に忠実に、世代を超えた仲間とともに長野に新しい“何か”を生みだしていく
関谷優さん
合同会社N’s Creative 代表/インスタグラマー
5万人フォロワー(2025年3月現在)を誇り、「ゆう【長野で〇〇】/長野市メインの厳選グルメ」というアカウント名で「絶対に外さない」グルメスポットを紹介する「ゆうさん」こと、関谷優さん。 実はその正体(?)は、企業の営業力を高める人材育成とコンサルティングを行う合同会社N’s Creativeの代表であり、ピラティススタジオの運営や自家焙煎のオリジナル珈琲ブランドも手掛ける経営者さんです。
文・写真 原 有彩(株式会社ビー・クス)
そんなゆうさんがInstagramをはじめたきっかけは3年前。
経営する会社はコンサル業ということもあり、クライアントは完全に法人でしたが、今後を見据えてBtoCへと事業を拡大したいと考えていたゆうさん。
また、営業コンサルタントの視点からみても、販促ツールの一つとしてSNSはもはや無視できない存在であったことから、新規事業の地盤づくりをかねて発信をはじめることにしました。
当時は、折しもコロナ禍の真っ只中。どんなテーマでも発信できるようにとアカウント名を「長野で〇〇」としましたが、食べ歩き・飲み歩きを趣味としていたゆうさんは、自分が好きなことで苦境に立たされている飲食店の支援に少しでもつながれば、と長野市中心のグルメ情報を発信することにしました。
しかし、当時からすでに、県内・長野市内のグルメ情報を扱ったアカウントは多数存在。
そこで、営業コンサルタントらしく、ゆうさんが「差別化」のために立てた戦略は
でした。
お店紹介ではゆうさんの軽快なナレーションに合わせてテンポの良い動画で展開されていきます。投稿の最後には、お店への行き方を解説。ゆうさんが実際に自動車や徒歩で移動する道順を倍速動画としてコンパクトにまとめたもので、これが非常に分かりやすいのです!あとで見返したり、お店に行くときのために投稿を保存しておく人が多いようです。
そのほか人気企画として、長野県発祥の某人気スーパーの商品レビューや食べ比べ、店内ベーカリーのパンのオリジナルランキング発表は、投稿する度に多くの反響が寄せられます。
「投稿では『嘘』をつかない、正直な感覚を大切に、お店を紹介する際も自分が感じたことをしっかりと投稿に落とし込むようにしています。パンのランキングなんかは特にそうですが、完全に自分の感覚で伝えているのでアンチも生みやすい反面、僕自身の感性やアンテナを面白がってくれるファンの方がいてくださるので有難いですね。『コイツ(僕)を追いかけてるとなにかと面白い』とファンの方に思ってもらえるように、これからもいろいろ企画を仕掛けていきたいです」
ゆうさんは、応援してくれるフォロワーとの「オフライン」での交流(直接会う機会)も大切にしていて、定期的に「飲み会」を開催しているそうです。
そしていま、ゆうさんが力を入れているのが、長野をもっと面白くするチーム「THE LOCAL(ザ・ローカル)」での活動です。
はじまりは1年前、Instagramでの出会いがきっかけでした。
「長野市を盛り上げる、何か新しいことをやりたい」という旨が書かれた投稿が、偶然ゆうさんの目にとまり「よかったら一度お話しませんか」とDMを送ったのがきっかけでした。
「ちょうどその頃、フォロワーさんも増えてきてアカウント運営の成果が出せたのですが、今度はその出した成果で何をしたらいいのか、どう生かせばいいのかを考えはじめた時期でした。投稿を見た時に、直感で『何か新しいことがはじまるかもしれない!』と感じて、自分からDM(ダイレクトメッセージ)を送って実際にお会いしました」
その時出会ったのが、長野市のシェアスペース「MADO」を拠点に活動する平野理⼤さんでした。
そこから出会いが出会いを呼び、IT関係、音楽、デザイン、アートなどさまざま業界で活躍する長野市在住の若者が次々と集り、発足したのがTHE LOCALです。
昨年2024年8月31日・9月1日には活動の第1弾として「ながの表参道セントラルスクゥエア」にて『NAGANO CULTURE FESTA(ナガノ カルチャーフェスタ)』を2日間にわたり初開催。「文化を繋ぎ、人を繋ぐ」をテーマに、県内外から飲食、アート、スポーツ、クラフト雑貨など約53のブースが集結し、ステージでは音楽、トークインベントなどが繰り広げられ、延べ約7000人が来場するほどの大盛況でした。
「メンバーは僕だけ40代であとはみんな20~30代。ジェネレーションギャップは常に感じています(笑)。企画段階でメンバーの1人がステージで『DJブースをやりたい!』と言い出した時は、正直、僕は盛り上がるか半信半疑だったのですが…。これがいざやってみると、大当たりで(苦笑)。来場者の皆さんがとても楽しんでくれていて衝撃でした。何事もすぐに自分のモノサシで判断するのはよくないと痛感した出来事です」
フェスタでは、イベント後も地域のお店と人を「繋ぐ」ことを目的にTHE LOCALが制作した、クーポン付冊子「IKUSHINAI(いくしない)?」の販売も行いました。
「消費者の動向も変わってきて、既存のメディアや広告媒体が届きづらくなってきたいま、各店舗独自の発信が重要になってきています。でも正直、飲食店オーナーの方々はそこまで手が回らないことがほとんどだと思います。そこに僕らがお手伝いできれば、お互いにwin-winな関係が築けると考えました」
冊子持参で、1,000円以上割引になったり、2杯目のドリンクが無料になったりとお得なだけでなく、コラムなどの読み物も充実していて評判は上々。掲載店からの反応も良く、第2弾の発売も予定されています。
そして、THE LOCALの次なるプロジェクトは、かつては商業施設や結婚式場としても賑わった「長野ターミナル会館」にもう一度、活気を取り戻すこと!そのための企画を水面下でいろいろと準備中なのだとか。
「メンバーの多くが他県から長野市に移住してきた人たちなんです。地元生まれ・地元育ちの僕にとってはあたり前の景色でも、彼らにとっては新鮮らしく、逆に長野の魅力をいろいろ教えてもらっています。若い彼らから学ぶことは本当に多いです」
ゆうさんは朗らかな笑顔で語ります。
経営者として、インスタグラマーとして、THE LOCALのメンバーとして多忙を極めるゆうさんに、最後に今後の展望について尋ねてみました。
「そうですね…抽象的かもしれませんが、とにかく、今はもっと『新しいことがしたい』『面白いがしたい』それに尽きるかと。思えば、自分の人生、40歳目前でInstagramをはじめるなんて思ってもいなかったです。でも思い切ってはじめてみて、よかった。THE LOCALとの出会いもそうですが、目の前に現れた『面白そうなこと』に勇気を出して全力で乗ってみることで、新しい扉がひらく。思いもよらない、新しい自分とも出会うこともできます。そして新しい出会いから新しい“何”かが生まれ、それがまた新しい出会いを連れてくる。その連鎖が今は楽しくてしかたがないのです」
「時代とともに世の中も市場も常に変わっていきます。数年前に上手くいった手法がいまも通用するとは限らない。常に新たなチャレンジし続けることは、コンサルタントという自分の職業にとっても必ず糧になります。『いい』『悪い』は経験してみないと分からない。これまでの既成概念にとらわれず、何事にも柔軟にチャレンジしていきたい。それはInstagramでの活動を通して僕が学んだことでもあります」
次は一体、何が生まれるのか―。
長野市を舞台に、仲間たちとしなやかに挑戦を続けるゆうさんから今後も目が離せません。
(2025/03/27掲載)