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荻原 悠司 さん SQUIRREL FOREST

荻原悠司さん

SQUIRREL FOREST

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個性豊かな国内外のクラフトビールが揃う長野初のボトルショップ

文・写真 島田 浩美

いま、都市圏を中心にクラフトビールを販売するボトルショップが人気を集めています。素材や工程にこだわって少量生産されるクラフトビールを国内外からセレクト。豊富なラインアップで、なかなか手に入らない貴重な限定品も少なくありません。そんなボトルショップが長野県に初登場。常時100種類ほどの国内外のクラフトビールが揃う「SQUIRREL FOREST(スクワールフォレスト)」がビール通を唸らせています。

クラフトビール好きが高じ、インポーターを経て“故郷に錦”を

長野駅善光寺口から徒歩7分ほど。長野市中心部の上千歳町一角に2023年3月1日にグランドオープンしたのが、クラフトビールやハードサイダーを扱うボトル専門店「SQUIRREL FOREST(スクワールフォレスト)」です。角打ち(※)もできる10坪ほどの店内に置かれた冷蔵ケースには、ヨーロッパや北米を中心としたクラフトビールの缶や瓶がずらり。どれもラベルのデザインが個性的で、まるでアート作品のよう。思わず“ジャケ買い”したくなるような衝動にも駆られます。

(※)角打ち…酒屋の店内において、その店で買った酒を飲むこと。また、それができる酒屋のこと。


▲長野駅から権堂方面に向かう上千歳町にオープンした「SQUIRREL FOREST」


▲路上の看板が目印。7割程度が海外産で、日本のクラフトビールも気鋭ブルワリーを中心に珍しいものが並ぶ

「セレクトは国内外を問わず、仕入れています。なるべくいろいろな国のもの、さまざまなスタイルやアートのラベルのものを揃えています」

こう話すのが、店主の荻原悠司さんです。東御市出身で、前職は海外のクラフトビールのインポーターだったため豊富な知識を誇りますが、もともとは地元で働く美容師だったそう。しかし「若いうちに別の仕事にも挑戦してみよう」と思い立ち、20代半ばで上京して雑貨などを扱う会社に就職。サラリーマン生活のなかで仕事帰りに楽しんでいたのが、ポップなラベルの海外のクラフトビールでした。

「最初に惹かれたクラフトビールは、アメリカ・コロラド州にある『レフトハンド・ブルーイング』というブルワリーの『ミルクスタウト・ナイトロ』です。原料に乳糖(ラクトース)を加えた黒いビールですが、クリーミーな口当たりとスタウトのビター感があって抜群においしかったんです」


▲「ビールはどんなタイプも好きですが、やはり特にスタウトが好み」と話す荻原さん

さまざまなクラフトビールを購入しては、帰宅後に楽しむ日々。次第に「好きなことを仕事にしたい」と思うようになり、海外産のクラフトビールの輸入業者に興味が湧くようになったと言います。そこで、気に入ったビールの裏ラベルから業者を調べて問い合わせると、偶然にも営業職を募集していた企業が、荻原さんがクラフトビールにハマったきっかけにもなった『レフトハンド・ブルーイング』のビールを輸入するインポーター「AQベボリューション」でした。


▲業界では広く知られる輸入業者「AQベボリューション」。アメリカと北欧、英国の高品質のクラフトビールを取り扱う

こうして北海道から沖縄まで全国各地の飲食店や酒販店、卸売業メインの問屋などと取引をするようになり、都内では仕事を兼ねて飲みに行くことも。

「堅苦しくない営業スタイルだったので、飲食店や酒販店に昼間からフラっと伺って話したり。取引がない店でも気になれば突撃し、お客として軽く飲んでから営業をしていました。いい意味で営業っぽくなくて楽しかったですね」

ただ、仕事にやりがいを感じていたからこそ「いつかは地元・長野県で開業を」との思いも抱いていたそう。

「都内では当たり前のように多くの出店があるクラフトビールのボトルショップですが、長野県にはこれだけの種類を扱っている店がありません。県内の人に国内外のクラフトビールを知ってもらえる場所をつくりたいと思っていました」

こうして「AQベボリューション」で3年半ほど働いた2022年、少しずつ独立開業に向けて動き出しました。

長野県にないものを各地から集め、多くの人に楽しんでもらう空間に

出店場所は、地元の東信エリアではなく長野市を選択。新幹線が停まり、観光客も含めて多くの人が行き交う都市であること、そして、ちょうど市内に「マリカブルーイング」など3つのクラフトビールのブルワリーが同時多発的に立ち上がったタイミングで、地域としてクラフトビールの盛り上がりを感じていたことが大きな理由でした。


▲開店記念として「マリカブルーイング」とのコラボビール「Black Temptation」も製造。アップルパイをイメージし、紅玉のほかに「根元 八幡屋礒五郎」のカカオニブやシナモンも使ったインペリアルスタウト

さらに、新型コロナウイルスの感染状況も少しずつ落ち着きはじめていた頃。競合が出店する前に開業したいとの思いもあったことから、妻の多恵さんとともに市内の市場調査を兼ねて長野市内を歩くなかで偶然見つけたのが現在の店舗です。

「長野駅と善光寺のちょうど中間ほどの位置で、目の前にアパホテル(ビジネスホテル)がある立地もいいなと思いました」

以前のテナントが早期撤退した居抜き物件で、きれいな状態で設備が残っていたため、結果的にほぼ改修の手を加えることなく店舗として利用できたこともよかったと言います。


▲一緒に店に立つ多恵さんは千曲市出身。開業にあたり、店舗選びから二人三脚で歩んできた

ところで、感染状況が落ち着きつつあったとはいえ、まだまだコロナ禍。出店の不安はなかったのでしょうか。

「チャレンジしたいという気持ちが大きかったので、ネガティブな考えはありませんでした。長野県でこれだけの海外や他県のクラフトビールを扱っているお店がどのくらい求められているのかを見てみたい好奇心のほうが強かったですね」

店名は「SQUIRREL FOREST」としました。「SQUIRREL」とは英語でリスの意味。荻原さんが昔、実家でリスを飼っていたことに由来しています。

「リスには食べ物を口に溜め込んで巣に持って帰る習性があるので、同じように僕はクラフトビールやハードサイダーなど長野県にないものを各地から集めてきて、このお店で皆さんに楽しんでいただけたらなという思いを込めました。また、リスのロゴの横にはキブシのデザインを入れたのですが、花言葉に待ち合わせや出会いといった意味があり、お客さま同士の出会いの場や、ちょっとした待ち合わせ場所として利用していただけたらという思いがあります」」

こうして2023年2月のプレオープンを経て、3月1日にグランドオープンとなりました。

一期一会のビールとの出合いと、人と人のつながりが生まれる場所へ

店内の冷蔵ケースには、前職の「AQベボリューション」から仕入れたもののほか、かつては競合他社だった業者のものも並びます。業界的には企業間のつながりが強いため、以前から知り合いだった会社も少なくないそうで「『AQベボリューション』の荻原さんがボトルショップを開く」という噂を聞きつけて声をかけられた業者もあるのだとか。また、同業者や一般客から「松本でも名前を聞くよ」とか「東京でも荻原さんが長野でお店を出したという話が広がっているよ」といった声も聞かれるのだそう。少しずつ評判が広がっています。

「とはいえ、オープンしたのが真冬の寒い時期だったこともあって、まだまだ浸透はしていません。もっと多くのお客さまに来てもらえるように頑張らないと。飲食店だと思って来る人も多いんですが、ボトルショップなので、フラッと立ち寄って商品を眺め、買うも買わないも自由。そういうお店のスタイルを少しずつ知っていってもらえたらと思っています」


▲商品には1本1本に丁寧な説明書きが添えられている。シールの色はビールの液体の色を示したもの


▲インパクトのある味わいを生み出す製法や、デザイン性の高いパッケージに込められた造り手の思いなどを荻原さんに聞きながら選ぶのも楽しい

もちろん、ボトルを購入して持ち帰るのも、気に入ったものをその場で飲む角打ちを利用するのも自由。「角打ちという言葉も多くの人に知ってもらいたい」と荻原さんは話します。


▲角打ちでは3種類のオリジナルグラスでクラフトビールが楽しめる。珍しいグラスで飲めるからと、角打ちを利用する人もいるとか(角打ち利用の場合は1本あたり別途抜栓料200円〜)


▲リンゴを使ったちょっと珍しいアップルブランデーや、蜂蜜を加えたプレミアムシードルも揃う

そんな「SQUIRREL FOREST」の売りのひとつが、500ml以上の大瓶のクラフトビールも扱っていること。

「樽熟成のものが多く、1本3000~4000円ほどするボトルは高いと思われがちですが、原料は違えど同じ醸造酒のカテゴリーであるワインや日本酒に置き換えると、その価格帯はアリですよね。ビールは気軽に楽しめるのももちろん魅力ですが、ちょっと贅沢したいときの一杯や、プレゼントのシーンなどでも楽しんでいただきたい。本当に素晴らしいクオリティを持っていますし、購入される大半の人が樽熟成のおいしさにびっくりしています」


▲海外産クラフトビールの大瓶がこれだけ揃うのも貴重。その味わいを「ワインやシャンパンのようだ」と表現する人もいるという

また、定番品はなく、訪れるたびに新たな味わいに出合える一期一会の楽しさも魅力です。


▲国産と思いきや、海外産のクラフトビールだったりと、1本1本のデザインがユニーク。写真の和風ボトルのクラフトビール「Ochame」はカナダのブルワリー「Godspeed」のもので、ブリューマスターが⽇本で所有する茶畑でとれた緑茶を使⽤している


▲国産ビールも県内ではなかなか見かけないマイクロブルワリーのものが多数

なお、客層は30~40代が中心で、ひとりで角打ちを利用する人も少なくないとか。

「知らない人同士でも仲良くなれるような気軽なお店にしていきたいので、なるべく共通話題であるビールの話題をお客さんに提供したり、ときには自分がテイスティングしているものを出したりもしています。クラフトビールを通じて、ここでいろいろな人がつながるのはすごく素敵なことですし、うれしいですね」


▲こちらの4本は、取材時に聞いた荻原さんおすすめの4本。香りが高くドリンカブルなセゾンタイプから、自前の醸造所を持たず醸造委託をする国産ビール、ハードサイダーなど


▲左は顧客のリクエストから取り扱いをはじめた「京都醸造」のクラフトビール。右はスウェーデン「OMNIPOLLO」とアメリカ・マサチューセッツ州の人気ブルワリー「Trillium」とのコラボビール。ジューシーでフルーティーなDouble IPA

ちなみに、おつまみはナッツ系や手作りのポテトサラダ、ピクルスなどがあり、今後はフードの種類も増やしていく予定とのこと。また、手軽なおつまみは持ち込みOKで、他の飲食店で購入した惣菜などを仲間内でシェアしてもよいのだとか。


▲フードに添えられるリスの箸置きもキュート!

「目標はこの店を通じて多くのクラフトビールがあることを知ってもらい、さまざまな人にいろいろなお酒を楽しんでもらうこと」と荻原さん。盛り上がりを見せる長野のクラフトビールシーンに新たな風を吹き込む存在となる「SQUIRREL FOREST」に要注目です。

会える場所

SQUIRREL FOREST

長野市上千歳町1189-8

電話:026-219-4471

ホームページ:https://www.instagram.com/squirrel_forest0311/

ホームページ:リンクはこちら

営業時間:14:00~21:00(土・日曜、祝日13:00~) 定休日:不定休 ※営業時間は変更となる場合もあります。

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