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#23

地域おこし協力隊&信州わかほジビエB&Bオーナー越前屋圭司さん

東京都出身
地域おこし協力隊&信州わかほジビエB&Bオーナー 越前屋圭司さん
長野でよかった! Echizenya's Voice

人のあたたかさ、ガイドマップには載っていないような自然の暮らしに惹かれています。都心から数時間でアクセスできるのも魅力ですね。

Profile

1974年東京都生まれ。工業系専門学校を卒業後、横浜のプラント機器メーカーを経て、設計事務所に勤務。家族4人の長野登山が毎年の恒例だったこともあり、2016年に若穂の地域おこし協力隊に応募し、2017年1月に着任。野生鳥獣食肉加工施設〈自美恵-じびえ-〉の運営に携わり、民宿〈信州わかほジビエB&B〉の開業を果たす。2019年12月の任期終了後も、「狩猟・ジビエの販売流通・民宿」を若穂で継続する予定。

移住までの道のり

1974東京都生まれ
1993横浜のプラント機器メーカーに勤務
2000東京の設計事務所に勤務
2017地域おこし協力隊員として若穂に移住
2018民宿〈信州わかほジビエB&B〉開業 狩猟免許を取得し、長野地方猟友会若穂支部に所属

千曲川と犀川の合流地点の東岸に位置し、飯綱・黒姫・妙高・戸隠・斑尾の〈北信五岳〉をパノラマに望む若穂地区。人口約1.2万人のこの地区は、菅平の麓の扇状地に、リンゴやブドウ、モモなどの果樹園や畑地が広がっています。長野市中心市街地から、車で約20分ほどのアクセスの良さがありながら、「あるがままの自然の風景」を今に残し、四季折々の日本風土の美しさを物語る里山です。

越前屋圭司

 

▲美しい自然が広がる若穂。写真中央は松代地区へと続く奇妙山。若穂は1959年に、綿内・川田・保科の3村の頭文字をとって「わかほ(若穂)」と名付けられ、1966年に長野市に合併

都会と里山の美しい暮らし

2017年から長野市若穂地区の地域おこし協力隊として、長野市に移住した越前屋圭司さん。野生鳥獣食肉加工施設〈自美恵-じびえ-〉の運営、民宿〈信州わかほジビエB&B〉の運営、地域おこし協力隊としての情報発信、猟師、有害鳥獣捕獲従事者として「狩猟・ジビエの販売流通・民宿」の事業を築いてきました。長野に移住するまでを振り返り、越前屋さんはこう話します。

越前屋圭司

「東京に生まれて、横浜で20年近く仕事をしてきましたが、もともと自然が好きで、家族4人で上高地を起点に登山をして、テント泊をするのが毎年恒例でした(笑)。なので、いずれは農村地域に暮らしたいと思っていましたし、里山における有害鳥獣の被害にも問題意識を持っていましたから、若穂地区の取り組みに応募しました」

越前屋圭司

 

▲若穂地区および長野市の有志、そして地域おこし協力隊で、「信州わかほジビエ」のブランドロゴを作成。そのほかにも、野生鳥獣の捕獲から精肉、流通の仕組みづくりまでを整理し、食肉加工施設〈自美恵〉の有機的な事業化を図ってきた

着任後は、想像以上に、暮らしやすかったと言います。

「市街地へのアクセスも良く、雪も少ないですから。今は神奈川県川崎市の高校に通う長女と妻は川崎市に、私と中学生の次女が若穂に暮らすという二拠点生活ですが、妻たちも月2日ほど会いに来てくれて、不便はありませんね。

これだけアクセスが良いにも関わらず、ガイドブックで大々的に紹介されるような地域ではなく、住民の自然体な暮らしが広がっている若穂。この美しい里山を、後世に残していきたいですね」

越前屋圭司
越前屋圭司

 

▲越前屋さんが営む民宿〈信州わかほジビエB&B〉の佇まい。知人を通じて越前屋さんが購入。もともとデイサービスセンターとして改修が十分に行われていたため、民宿を営もうと決めてからは、建築的な要点は見事にクリア。偶然にも順調に民宿開業に至った

「あるがままの自然」と「若穂の人柄」に惹かれて

野生鳥獣食肉加工の事業化を図るほか、里山暮らしを味わえる民宿〈信州わかほジビエB&B〉も運営する越前屋さん。滞在した外国人観光客との出会いから、若穂の魅力を再認識したそう。

「いわゆる観光地ではない場所で長期滞在していくうちに、周辺のリンゴやブドウの実りに、豊かな土壌を感じたそうで、『農家さんから直接買いたい』なんて喜ばれて。そんな時には、知り合いの農家さんに声をかけて農園を見させてもらったり、果物を買わせてもらったりも。私たちが普段眺めている何気ない田園風景に、とても魅了されたようでしたね」

越前屋圭司

どこにでもあるようで、ここにしかない特別な風景。あるがままの自然を享受した若穂暮らしの中で、ジビエ事業や民宿を営む越前屋さんには、若穂地区の人たちのあたたかさも魅力だったそう。

「私が着任してすぐのこと。1月の寒い冬を越すために、近隣の方々がコタツや食料を譲ってくれて。若穂のあたたかな人柄は、何よりの魅力でした」

越前屋圭司

「狩猟・ジビエ加工・民宿」里山で仕事をつくる

若穂ジビエのPRや流通、狩猟の基盤づくりに貢献してきた越前屋さんの知見は、プラント機器メーカーや設計事務所で培ってきた経験から。設計事務所全体の事業推進や人との関わりに、広く目を向けてきたからこそと言えます。

「地域おこし協力隊として移住を果たすまでの間に、自分にできることは何か考え、若穂地域の事業や自治体の取り組みを、くまなくリサーチしました。地域の課題解決となれば、私一人ではとても担えない部分も多いですから、まずは『食肉加工施設の事業推進』を通して、有害鳥獣による農業被害を抑え、農業従事者や猟師の数を安定させることをミッションとして、活動をスタートさせました」

地域おこし協力隊として託された「ジビエの振興およびPR」の任務を洞察し、まずは地域の潜在的な可能性と根本的な課題解決を見据えた越前屋さん。そして自治体のキーパーソンへの聞き取りを進めていく中で、一つの大きな課題が見えてきました。それは、狩猟の担い手が、猟友会の会長ただ一人に託されている、ということでした。

越前屋圭司

まずは人材不足を解決するために、越前屋さん自身が狩猟免許を取得し、猟友会入りを果たします。そして「狩猟から食肉加工までの基盤づくり」と「流通」の整備を計画しました。すると次第に、流通の道筋が整い、いよいよ「ジビエの振興やPR」へと歩を進め、長野県内のレストランやホテルを中心に、販売ルートが拓いていきました。

「ジビエのおいしさは、やはり身近な地域で精肉された状態で、すぐに料理をすること。地産地消を大切にする周辺地域のレストランやホテルから注文が集まりました。どのお店も、私たちの取り組みをひとつのストーリーとして、お客様に届けてくださっているので、若穂のジビエがひとつのブランドとして成立していったように思いますね」

こうして少しずつ、野生鳥獣食肉加工施設〈自美恵〉の稼働率も上がり、狩猟の需要が伸び、若手の猟師が狩猟に参加するまでに至りました。

越前屋さんは、2019年12月末をもって任期を終えますが、これからも若穂地区の人たちとの縁を大切に、「狩猟・ジビエの販売流通・民宿」を通して、若穂の魅力発信を続けていくことを決めています。

越前屋圭司

〈信州わかほジビエB&B〉
長野市若穂保科3060-30
090-6004-6019
https://www.facebook.com/wakahogibier/



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