長野市復興だより

この場所で仕事ができることに感謝して

東日本旅客鉄道株式会社新幹線統括本部長野新幹線車両センター 滝沢和浩さん

長野新幹線車両センターは、北陸新幹線(長野経由)の安全な走行のために車両保全や管理を行う施設です。令和元年東日本台風による千曲川の氾濫等の影響でセンター構内および新幹線車両が冠水するなど設備等に甚大な被害を受け、復旧への取り組みを続けています。被災状況や復旧の現状について、滝沢和浩所長にお話を伺いました。

まさかの冠水

長野新幹線車両センターの構内には運転事務所、車両の検査を行う仕業交番検査庫、信通機器室、新幹線の車輪を削正するための車輪研削庫など様々な施設・設備があります。
令和元年東日本台風が直撃した10月12日は、新幹線自体は計画運休し、午前中で運行を取りやめ、夕方にはE7系の新幹線10編成120両が入庫していました。翌日には台風が過ぎて運転が再開できるだろうと、社員、守衛含め28名が事務所に待機していました。日が変わり避難指示が出され、全員が上階への避難をしていた13日未明に千曲川の堤防が決壊しました、4時半ごろに駐車場まで水が押し寄せ、電源は非常電源に切り替わりました。
その後、1時間ほどで1階の天井まで水が回りました。関連会社を含め避難していた社員については、夜の10時過ぎに自衛隊のボートで救助されました。留置していた新幹線10編成は肘掛けのあたりまで浸水し、2編成は脱線。構内の施設もすべて浸水しました。

運転事務所からの全景(2019年10月13日撮影)

 

JRのネットワークを駆使しての復旧活動

水が引いた10月14日以降は、毎日100名規模の社員等を動員し、泥の撤去作業をおこないました。プールを作り、バキュームカーで吸引した泥水と乾いた土と混ぜて固めてダンプで運び出す作業を繰り返しました。
その後10本の新幹線の入換えや廃車処理を行う際には、新潟の車両センターで使っていたエンジンで動く牽引車を借り、車両を切り離し牽引して動かしました。脱線した2編成の脱線復旧作業は困難が予想されましたが、JR東日本のネットワークの力を借りて、ジャッキアップし横送りして載線させるという方法で、脱線復旧を行い、それぞれの編成にかかる作業を7日間程度で完了することができました。

脱線復旧作業の様子

 

地域とともに、完全復旧を目指して

若手社員を中心に、地域の皆さんを元気付け、感謝の気持ちを伝えようと、センター入り口に「がんばろう赤沼」「がんばろう豊野」の横断幕を取り付け、区長さんたちに来ていただいて除幕式を行いました。また、11月には赤沼地区のりんご農家さんにも元気を出してもらおうと、りんごを長野駅から新幹線で運び、上野駅のコンコースでお客様に配布しながら地域の復旧状況を伝える取り組みも行いました。
12月25日には仕業交番検査庫が復旧し、それまで新潟、仙台、東京や在来線の車両センターへ派遣された社員が戻り、残って廃車の作業に当たっていた社員とともに本来の新幹線のメンテナンスができるようになりました。社員全員がこの赤沼で自分たちの仕事ができるありがたさを実感しました。さらに、今年5月には着発収容線全線が使えるようになりました。車輪研削庫、臨時修繕庫の復旧はこれからですが、復旧のために尽力してくれた皆さんに感謝し、これからも安全・安心な新幹線車両を提供するために頑張っていきたいと思います。

「がんばろう赤沼・豊野」の横断幕

 

 

 

東日本旅客鉄道株式会社新幹線統括本部長野新幹線車両センター

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