長野市復興だより

元に戻すではなく、新しい考え方で課題解決を

長野市立豊野中学校校長 林 理恵先生

令和元年東日本台風で校舎、体育館の1階部分が浸水した長野市立豊野中学校。約1年に及ぶ仮設校舎での生活を経て、昨年(令和2年)11月末に校舎の復旧工事が完了、12月から本校舎での授業を再開しました。災害後の学校運営について、林校長先生にお話を伺いました。

 

何はさておき、安否確認

10月13日の被災直後、校舎の被害状況も気になりましたが、まずやったことは、生徒の安否確認と所在確認でした。豊野東小をお借りして本部を置き、各学級担任を通して生徒に電話連絡をしました。停電のため、電話がつながらない家庭もあり、全校生徒251名の安否確認が終わったのは、翌14日の午前10時でした。安堵したのも束の間、15日からは、クラス担任が家庭訪問を行い、生徒の避難場所や健康状態を確認。その他の職員は校舎の泥出しなど復旧作業を進めました。幸い、水道はすぐに復旧し、トイレも使えましたが、校内に電気を送る変電施設が浸水し、電気の復旧までにはその後1ヶ月近くかかりました。「お手伝いします!」と申し出てくれた生徒もいましたが、安全を確保することが難しかったため、やむを得ずお断りしました。生徒たちの気持ちがとても嬉しくありがたく印象的でした。
災害直後は、学校の周辺道路も通行止めなどで容易に近づけず、敷地内に駐車場もないため、ボランティアの受け入れるも大変でしたが、卒業生、地域の皆さん、長野県下各地の小中学校の先生方など毎日30名ほどのボランティアにきていただき、清掃や洗浄、水没した重要書類の乾燥などを行いました。“早く全校生徒の皆さんと会いたい、学校生活を取り戻したい”という一心で必死に復旧作業に当たり、夕方には市教委に出向いて、翌日以降の対策を練るという日々の中、昇降口に掲げられた生徒会のスローガン「RESTART」が励みになりました。

水没を免れた令和元年度生徒会のスローガンは“RESTART”

 

授業再開まで

10月28日、臨時の全校集会を開き、約2週間ぶりに生徒たちと再会しました。しかし、全校251名の生徒を収容する仮校舎はなく、苦渋の決断で、3年生のみ市立長野中学校の教室をお借りして翌29日から授業を再開することに。1,2年生はやむを得ず、被災した校舎の2,3階で短時間の自主学習。運動不足でストレスがたまっている生徒たちのために、レクや運動の場面を各学年で臨機応変に設けられるようにしました。不安な思いを抱きつつも落ち着いて生活をしようとする生徒たちの健気さに何とか応えたいという思いが募る日々でした。
変電機修理の間、レンタルの発電機を県外から取り寄せ、10月末にようやく教室内の電気が復旧。校庭への仮設校舎の建設も急ピッチで進めていただき、11月11日、ついに3年生を含め、全校生徒が豊野中での授業を再開することができました。

手前が仮設校舎。被災した本校舎の3階には復興を願う横断幕が掲げられた

 

新しい価値観を共有する

災害から1年を迎えた昨年10月は、「防災旬間」を位置付け、災害の歴史を正しく知り、正しく怖がる生徒を育成するため、地域の歴史の確認、家族と「マイタイムライン」の作成、水害を想定した引き渡し訓練に取り組みました。将来、どこで生活をすることになっても、この地で学んだことを活かしてその土地について自ら学び、地域の方々と共に生活できる大人になってほしいと願います。学校の復旧についても、最初は“元に戻す”ことだけを考えてましたが、コロナによって生まれた新しい価値観を共有し、臨機応変に変えていくこと、どんな状況の中でも“やっていくんだ”という気持ちが大事だと思っています。そうして達成できたことは、生徒たちの自信につながっていくということを、豊野中の先生方や生徒たちの取り組みから学びました。
今年の生徒会のスローガンは“日新月歩”(日進月歩からの造語)。大変な状況だけれど、新たな気持ちで進み続けよう、という生徒たちの想いが込められています。

復旧工事を終えて蘇った昇降口

 

 

長野市立豊野中学校

住所 長野市豊野町豊野814
TEL 026-257-2313
HP http://www.nagano-ngn.ed.jp/toyonojh/