長野市復興だより

関係人口を増やして地域を元気に

渡辺美佐さん

長野市長沼・津野地区の果樹農家・渡辺美佐さんは、自宅と田畑1ha以上を浸水する甚大な被害に遭いながらも、津野地区の農地の復旧、農業の再生を目指す「津野復光隊」の一員として、災害当初から地域の復興のために尽力しています。これまでの取り組みの経過や、現在直面している課題についてお話を伺いました。

地域の復興なくして、農家の復興なし

津野復光隊は、津野地区の下川英紀さんを中心に、約10軒の農家が協同して地区の復興に向けて取り組むチームで、水害が起きた2019年10月末から活動しています。全世帯が被災した津野では、地域が復興しなければ、各家の復興もあり得ません。住民全員が「復光隊員」だと思っていて、会議で決めたことを皆さんの理解やご協力をいただきながら進めています。
当初は、「農業ボランティア」の皆さんと地区内の各農家さんを繋いだり、自分たちで重機を出して泥出しなどを行っていました。市で発注していただいた土壌復旧業者さんの作業が予想以上に早く進み、大勢のボランティアの方のおかげで、4月までに土壌復旧がほぼ完了しました。

当初は自分たちの重機で土壌復旧作業を行った(提供写真)

コミュニティスペースの再建

津野地区はもともと住民同士の仲が良く、長沼地区の運動会や球技大会では一番人数が少ないにも関わらず、団結力の強さが発揮されます。災害以降は、20代後半から60代後半までの女性たちが復興のために立ち上がり、地域の課題を話し合う”女子会”を行っています(コロナの影響で現在は活動自粛)。そこで出た意見のひとつが、コミュニティスペースとしての津野公会堂の再建です。本格的な再建のためには費用も時間もかかるため、ボランティアさんの力を借りて自主的に仮再建工事を進め、3月末にはキッチンやトイレも使えるようになりました。さらに、津野地区の共有農地にコンテナを設置。地区を離れてしまう人でも気軽に農作業ができるように、道具をシェアできたり、農作業時の休憩場所にもなるように整備を進めています。

津野地区にコンテナを設置しました

住宅解体の際に出た厨房器具などでキッチンを手作り

関係人口を生み出し地域の復興を

被災直後は、“もう農家をやめる”と言っていた人も、畑が予想以上に早くきれいになったので、“またやるぞ”と前向きになる人が増えています。人口を被災前と同じ状態に戻すのはなかなか難しいですが、ボランティアさんを含め、“関係人口”を増やすことが地域の復興につながると思います。そのためにできることには積極的に取り組みたいです。まずは、今年もおいしいりんごができるように頑張ります!  
※定住人口でも、観光などの交流人口でもなく、地域や地域の人々と多様に関わる人々のこと

りんごの受粉を担うマメコバチの巣箱を手作りし、20数軒に無料配布した

津野復光隊