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そっとだれかの宿り木となり、寛げる場所を育むカフェ

cafe hoyoさん

メインビジュアル

長野駅から電車に揺られて十数分。かつて善光寺街道の宿場町として栄えた篠ノ井の街並みに、一軒のちいさなカフェが溶け込むように佇んでいます。店の名は「cafe hoyo(カフェ ホヨ)」。塚本航太(こうた)さんと斐佳理(ひかり)さん夫妻が営むこのカフェならではの魅力を見つけてきました。

文・写真 文:くぼたかおり(山庭舎)、写真:塚本斐佳理(cafe hoyo)

夫婦がすこやかに暮らし、働けるカフェ

篠ノ井駅から徒歩約10分の旧北国街道沿いに立つcafe hoyo。店名のhoyo(ホヨ)とは、植物の「ヤドリギ」の古い呼び名です 。ショップカードを手に取ると、そこには「日常から少し離れ、宿のようなホッとする空間で一杯のコーヒーと少しのケーキを楽しめるお店です」と書かれています。
 
店に入ってまず目に飛び込んでくるのは温かみのある木の質感と、窓から差し込む柔らかな光です。テーブル席とソファ席、そしてカウンター席があって、10人入れば満席になるようなサイズ感は、1人でも気兼ねなく立ち寄れる雰囲気です。
 
「どのような場所で、どのような店にするか。自分たちが興味を引くカフェに出かけては模索してきました。たどり着いたのは、夫婦2人で営めるサイズ感であること。最初の頃は長野駅前や善光寺門前も候補に入れてましたが、ほかに素敵なカフェが多く経費がかかるエリアよりも、少し外れたエリアも候補にして探していたんです。そんな中で篠ノ井エリアは高校で通っていたこともあって思い入れがありました。最終的には自分たちのペースで営める環境を優先しました」(航太さん)
 

左は定番メニューの1つ、キャロットケーキ

高校卒業後は松本市の調理師専門学校に進学。斐佳理さんとは同級生で、当時から「いつかは自分の店を持ちたい」という夢を持つ同志として技術や感性を磨いてきました。パティシエとして洋菓子の世界に飛び込んだ2人がたどり着いたのは、ケーキ屋さんではなくカフェ。そこにはどんな思いがあるのでしょうか。
 
「それぞれパティシエとして就職して、工房内での動きや洋菓子の技術を磨いていきました。とてもたくさんのことを吸収できたと思います。一方で洋菓子の世界は一般的に朝は早くて夜は遅い。長時間かつ肉体労働に近いので、精神面でも肉体面でも大変なことがありました。そういった経験もあって、自分たちが心地よく仕事ができることを第一に、お客さまの反応を直に見られるカフェという形態を選びました」(斐佳理さん)
 
自分たちが健やかに店を営むー。「ここに来ると落ち着いて過ごせる」というお客さまの言葉にあるように、2人の心身の余裕が、気づけば店に漂う雰囲気にも現れているようです。
 

いつかは店を開きたい。夢のはじまりはマドレーヌにあった

店主の航太さんが洋菓子に興味を持ったのは、小学生の頃でした 。
 
「母の同僚が、手作りのマドレーヌをくれたんです。初めて食べたマドレーヌは本当に美味しくて……それまで手作りのお菓子に触れる機会があまりなかったので衝撃を受けたんです」
 
そこから自らキッチンに立つようになり、お菓子作りに没頭。中学生になる頃にはパティシエになる夢を掲げていました。専門学校を卒業後は洋菓子の技術を高められる環境を求めて、横浜にあるケーキ屋さんに就職 。2年間の修業時代であらゆる洋菓子の基礎を学べたと言います。その後、松本市のカフェに移り、バリスタとしての技術も習得しました。そこから3年間は独立資金を貯めるために別業種にも挑戦しました。
 
「ある程度の資金が貯まって物件探しを始めたのですが、テナント募集をしている賃貸物件で気に入るものが見つからなかったんです。そこで自分たちで探してみようと、良さそうだと思った空き家に直接交渉していくように。そこで良い大家さんと出会えて購入したのが今の物件です 」(航太さん)
 
オープン準備期間には、クラウドファンディングにも挑戦しました。近隣を回ってポスティングを行う地道な活動もおこない、「楽しみにしています」という声が寄せられたと言います。
 
「物価の高騰などが影響して、当初の予算をオーバーしてしまったんです。そこで資金調達と、自分たちの思いに共感してくれる仲間やファンを見つけようとクラウドファンディングを利用しました。実際にご近所さんも支援してくれて、今も通ってくださる方がいます。カフェを始めてから得たお客さまとの出会いや、ささやかな交流が嬉しいですね」(航太さん)
 

改修作業の様子。かつては商店街だった裏路地にある

定番から月替わりまで。何度でも立ち寄りたくなるメニュー

カフェでは洋菓子の世界で培ったスキルを活かしたこだわりのバナナブレッドやキャロットケーキを通年メニューに据えて、季節や旬の農産物を取り入れたカフェスイーツを揃えています。2人が何度も試行錯誤を重ねて納得したものだけを提供。あわせて楽しめるコーヒーは山梨県にある「the: kokubo」から豆を仕入れて、航太さんが一杯ずつ丁寧に淹れています。夏の時期にはアイスを載せたコーヒーフロートや、不定期で開催する「パンケーキの日」も人気なのだとか。
 
「妻は写真が趣味なんです。店内で飾っている写真も彼女が撮影したものですが、その1枚にパンケーキが写っているんです。その写真を見て『パンケーキは無いんですか?』というお客さまの声が多くて、それならばとパンケーキの日というイベントをするようになりました」(航太さん)
 
小学生の頃からカメラに親しんでいるという斐佳理さんは、Instagramの運用も担当しています。「朝の光で撮影すると美味しそうに写るから」と、どんなに忙しい日でも撮影は必ず朝に行います。そのこだわりが画面越しにも心地よい空気感を伝え、見る人を惹きつけています 。
 

斐佳理さんが撮影した写真が飾られている。たしかにパンケーキがおいしそう!

店内から通りを眺めると、時折ゆっくりと走る車や地域住民が自転車や徒歩で歩く姿が見えます。木枠の窓がちょうど額縁のようにも見えて、過ぎゆく一瞬一瞬が愛おしい日常を切り取るように見えてきます。暮らす人と働く人がほど良く入り混じる篠ノ井エリアの魅力とはどんなところでしょうか。
 
「長野駅前のようなにぎやかさはないけれど、ほど良くゆったりとした雰囲気で暮らしやすいと思います。お店もいろいろあるので、とても便利ですよね。いまは仕事も暮らしも大切にしたい。だから経営を大きくすることよりも、この地域と今ある店のサイズ感で自分たちが納得しながら営むことが大切かなって」(斐佳理さん)
 
背伸びをしない、けれど妥協もしない。木々の間に宿り、冬でも青々と茂るヤドリギのように、訪れる人が明日への活力をそっと蓄えるような店づくりが、大切に育まれています。
 

バナナケーキはアイスを添えて味わう人も多い。温かなパンケーキと冷たいアイスの組み合わせがたまらない。ぜひ味わって

会える場所

cafe hoyo

長野市篠ノ井布施高田712-4 ※店の前の旧北国街道は一方通行です

Instagram:https://www.instagram.com/cafe_hoyo_/

Instagram:リンクはこちら

営業 10:00〜17:00
定休日 火・水曜
駐車場 4台 ※店の向かいの駐車場スペース第1駐車場26番と第2駐車場10番、第3駐車場は2台可

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