FEEL NAGANO, BE NATURAL
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BRAND X Collaboration

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BRAND X Collaboration

グリーン・ヒルズ小学校

都市ブランドデザインで広がる、子どもたちの長野市

長野市では、まちの魅力や価値を伝えるために「都市ブランドデザイン」を策定しています。その考え方を、子どもたち自身の感性や表現につなげる試みとして、飯綱高原にあるグリーン・ヒルズ小学校で、「Feel Nagano Be Natural」の5色をテーマにした活動が合計3日間にわたり、行われました。

文・写真 碓井 綾乃(株式会社ビー・クス)

色から広がる長野市のイメージ

活動に参加したのは1・2年生7名。子どもたちはこれまで授業の中で、「色にはメッセージを伝える力があり、作者はその効果を利用している」というテーマで、色と感情の関係について学んできたそうです。今回の活動はその学びを広げる発展的な取り組みで、都市ブランドデザインを構成する5色のキーカラーから受け取ったイメージを基に、子どもたちが自分なりの「長野市らしさ」を探りました。

自然豊かな飯綱の森の中にあるグリーン・ヒルズ小学校。
自然豊かな飯綱の森の中にあるグリーン・ヒルズ小学校。
昇降口には、児童が描いたアート作品があります。

長野市ってどんなところ?

1日目は、長野市役所の職員3名が学校を訪れ、子どもたちの活動の様子を見守りました。参観日のようなワクワクと緊張が混じった雰囲気の中、「長野市ってどんなところ?」という問いから授業が始まりました。
担任の本木先生が「みんなが知っている長野市のイメージを教えて!」と声をかけると、子どもたちは思いつくコトやモノを紙に書き出し、ホワイトボードに貼って、みんなで共有しました。

「山に囲まれている」「りんご」「長野ACパルセイロ」「そば」「戸隠古道」「鏡池」などなど。ホワイトボードを埋め尽くすたくさんの言葉の中には、飯綱高原で過ごしている子どもたちならではの、身近な風景や体験に根ざしたイメージも多く見られました。

「長野市」のイメージを次々とホワイトボードに貼っていく児童たち
「長野市」のイメージを次々とホワイトボードに貼っていく児童たち

5色のキーカラーを知り、重ねて考える

次は、子どもたちから出たイメージを「都市ブランドデザイン」に使用されている5色の「キーカラー」にわけて考える時間です。はじめに、長野市サイドのスタッフから、キーカラーについて説明がありました。

「自然の緑や山々を思わせるグリーン。人の営みや、これまで積み重ねられてきた時間に敬意を示すゴールド。水や新幹線のように、外と長野市をつなぐ流れを表したブルー。空の広さや、のびのびとした自分らしい暮らしを想像させるライトブルー。そして、人のあたたかさや、挑戦する気持ちを表したオレンジ。これら5色が集まることで、「Feel Nagano Be Natural」の考え方が形づくられています」

この都市ブランドデザインは、自然のこと、人のこと、まちのこと。長野市のさまざまな魅力を、色を通して感じてもらうための考え方だと、説明しました。

「その模様、駅前で見たことある!」と教えてくれた児童も。
「その模様、駅前で見たことある!」と教えてくれた児童も。

話を聞くうちに、子どもたちの中でホワイトボードに並んだ言葉と色が少しずつ重なってきた様子。
「この色、山っぽいね」
「パルセイロは絶対オレンジ!応援の意味もあるよ」

そんな声が上がり始めたところで、
「みんなが考える長野市のイメージを、5色に振り分けるとどうなるかな?」 その問いをきっかけに、子どもたちはキーカラーごと模造紙に整理していきました。

キーカラーの意味を確認しながら、みんなで相談
キーカラーの意味を確認しながら、みんなで相談

正解を決めない、自由な話し合い

「風船虫※1は、青と緑の間じゃない?」
話し合いの途中、子どもからそんな声が上がると、本木先生は「一つの色に決めなくてもいいよ」と伝えました。
教室では、誰かの感じ方をきっかけに、また別の考えが重なっていきます。どれか一つに決めることよりも、「そう感じた理由」を言葉にし、互いに受け止め合いながら、どうするか考える。誰も否定しない子どもたちの話し合いと作業の進み方は、まさに「自分らしく」という都市ブランドデザインの考え方を体現しているようでした。
※1 田んぼや沼の水中に生息する『ミズムシ』の別名

発言する児童の声にみんなでしっかりと耳を傾ける姿が印象的でした
発言する児童の声にみんなでしっかりと耳を傾ける姿が印象的でした

5色で描く、わたしの長野市

2日目は大ホールに場所を移し、広い空間いっぱいに画用紙を広げて、ポスター制作に取り組みました。前回の授業で考えた「長野市のイメージ」を振り返りながら、「自分だけの長野市」を5色で表現しようというテーマです。
講師は、グリーン・ヒルズ中学校で美術講師も務める、芸術家の母袋京子先生。「いろいろな描き方を体験してほしい!」と、母袋先生は四つ切画用紙や都市ブランドデザインの5色のアクリル絵の具、3種類の筆を用意してくれました。初めてのアクリル絵の具に子どもたちもテンションが上がります。

絵の具の色を合わせながら、前回の授業で学んだキーカラーの意味を復習しました
絵の具の色を合わせながら、前回の授業で学んだキーカラーの意味を復習しました

制作の約束事は、
・使う線は4本まで
・5色のうち、2色以上を使うこと
・自分の作品が何を表しているのか、考えながら描くこと

みんなで確認したら、いよいよ制作開始です。

描く楽しさを教えてくれた母袋先生

前日にポスターを描く練習をした子どもたちは、鉛筆を手に取ると迷わず線を描き始めました。直線も曲線も、自分のイメージ通りに画用紙にのせていきます。 作業中、「紙が、なみなみになっちゃった…」と不安げにつぶやく子には、「そこも『かっこいい』と思う気持ちが大事だよ」と、母袋先生が前向きに声をかけます。

2時間、手を止めることなく黙々とポスター制作に取り組んだ児童たち
2時間、手を止めることなく黙々とポスター制作に取り組んだ児童たち
2時間、手を止めることなく黙々とポスター制作に取り組んだ児童たち

同じ色でもまったく違う作品に

子どもたちは、それぞれが思い描く「長野市」を色に託していきます。
「サッカーが大好きだから、パルセイロのオレンジを主役にしたよ」
「そばはやっぱりゴールドかな」
「緑の大自然を主役にしたいな」


同じやり方、同じ道具を使っていても、仕上がった作品は一つひとつまったく違う表情に。
中には、色を重ねていくうちに「鳥がキスしているみたい!」と、新しいイメージを発見し、そこから発想を広げていく子もいました。母袋先生は子どもたちに向けて、
「みんなが自分の手で描いたってことがすばらしくて、かっこいいよ!」
と声をかけ、ポスター作りの時間を締めくくりました。

みんなの作品を見て、お互いに感想を言い合いました。
みんなの作品を見て、お互いに感想を言い合いました。

「ぼくのポスター Show & Tell」

最終日となる3日目は、これまでの活動をふり返りながら、自分の作品に込めた思いや物語を伝える発表の時間です。「ぼくのポスター Show & Tell」と題し、一人ずつ前に立ち、自分の作品を紹介しました。

ゴールドをメインにポスターを描いた子は、「カネチョロは僕にとってお宝だから、ゴールドを主役にした」と話します。オレンジは落ち葉が舞う森、ブルーは大座法師池、ライトブルーは鏡池、グリーンは長野を囲む山々を表現。「落ち葉が舞う森の中に僕がいて、カネチョロの住処に遊びに行くんだよ」と、情景が浮かぶ物語も教えてくれました。
新幹線が大好きだという子は、ブルーとゴールドを使って新幹線「かがやき」を表現。長野の森を駆け抜けるかがやきの姿をイメージしたそうです。
発表を聞いている子どもたちも、「どうしてこの色にしたの?」「ここがすごいと思った」と、疑問や感想を投げかけ、それぞれの作品への理解を深めていきました。

「ここが鳥に見えるよ!」など新たな視点を教えてくれる子も。。
「ここが鳥に見えるよ!」など新たな視点を教えてくれる子も。
「ここが鳥に見えるよ!」など新たな視点を教えてくれる子も。

色を通して感じる、長野市への誇り

同じ5色を使っていても、表現も物語も一つひとつ違います。発表を通して、長野市の魅力は一つの答えではなく、感じる人の数だけ広がっていくものだと、改めて伝わってきました。

3日間にわたる活動を通して、子どもたちは「色」をきっかけに、自分なりに長野市と向き合い、それを表現し、言葉にして伝える経験を重ねました。正解を決めず、多様な感じ方を認め合いながら考えること。その姿勢は、都市ブランドデザインが大切にしている考え方とも、自然に重なっているように感じられました。
今回の学びは、子どもたち一人ひとりの中に、小さな「長野市への誇り」として残っていくことでしょう。

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