変化を恐れず一歩一歩着実に進化を続ける、新ジャンルのプレミアムファストフード
ごはんサンドmassanさん
JR長野駅の東口から若里公園へ向かい、ホクト文化ホールの交差点近くに、3年ほど前にオープンした「ごはんサンドmassan」。注目を集めたオープン以降、試行錯誤を重ねながら変化と進化を続けてきたmassanの、「今」を訪ねました。
文・写真 吉田 淳子(文・写真)(株式会社ビー・クス)
「ごはんサンドmassan」のオープンは2022年4月、コロナ禍の真っ最中でした。
母体となるのは、老舗寿司店「松栄寿司」。よく見るとmassanのロゴの下にも、小さくマークが入っています。松栄寿司は長野市日詰に本店を構え50年以上、長野駅東口にも店舗展開する人気の寿司店ですが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で2020年から「宴会」需要が激減。ご多分に漏れず大打撃を受けました。このままでは立ちゆかなくなる・・・と、東口店で店長として10年ほど店舗運営をしていた(株)まつえの副社長・望月義春さんが中心となって新規事業を模索。本業である「寿司」をベースに、ファストフードをイメージした商品「マッサンド」を開発し、テイクアウト中心にドライブスルー型の店舗をオープンしました。事業再構築補助金を活用した新業態の店舗は、ユニークなロゴマークも目新しく、コロナ禍でテイクアウトの需要がフィットしたことで、大きな注目が集まりました。
「これまでの伝統的な寿司というものを、手軽にどこでも食べることができ、若い世代にも受け入れられるように。さまざまな業態をミックスして『新ジャンルのファストフード』として新たな挑戦をしました」
当時を振り返る望月さん。新事業開発中には、全国各地で流行っている店をあちこち視察に出かけたそうです。そうして仕上がったのが、おにぎりでも寿司でもない、「ごはんサンド」。
「ヒントにしたのが、『沖縄発のポークたまごおにぎり』。オープン当初はそちらもラインナップしていたんです。でも売っていくうちに、当店の主な客層である主婦の方々からのさまざまなニーズを受け、メニュー構成は変わってきました」
現在は、寿司店の味と技を生かした「漬マグロのネギトロ」「サーモンとアボガド」などが売れ筋となっているそうです。
よく研がれた刃物でスパッとカットされた断面は、ボリュームのある具材が美しく、食欲をそそるビジュアル。実はこの提供方法も、2025年6月に思い切って変えたのだそうです。
「最初は、ライスバーガーをイメージして発進したんですよね。でも現在は、海苔で包んだ巻き寿司をカットしてお出しするという形状に落ち着きました。このほうが見た目も華やかだし、サンドをシェアできることもあって、評判が良いんです」
具材のマグロや鮭、サバ、エビなどの素材は、本業の松栄寿司と同じ仕入れなので間違いない品質です。ごはんは寿司店とは少し変えて、木島平産の白米と長野県産のミルキークイーンに、もち米を加えたオリジナルブレンドで炊いているとのこと。さらに酢の加減も塩加減も、当初から試食はもちろん、お客さまの反応を見ながら、改善を重ねて現在に至っています。
店には大きく「ドライブスルー」の看板がかかっていますが、現在ドライブスルーは稼働していません。
「やってみてわかったんです。受付窓口が2つあるということは、それだけ人員が必要ですし、加えてドライブスルーで来店したお客さまは、そもそも急いでいる方が多い。煩雑なオペレーションはミスを誘発します。実際に入れ間違いなどの失敗があり、お客様にもご迷惑をおかけするので、思い切ってやめました。でもゆくゆくは稼働させたいと思っています」
開店半年で、ドライブスルーサービスを終了。この躊躇ない決断が、厳しい時代を生き残る秘訣なのでしょうか。さらに2025年2月には店舗を改装し、これまでテラス席のみだったスペースに、イートインの店内席を追加。これも、お客さまからの「店内で食べたい」という声に応えた変更で、現在は平日限定のランチも含めてとても好評のようです。
さらに望月さんは、お昼のお弁当需要が多いことに気づきました。そこで、ごはんサンドに卵焼きやから揚げなどのおかずをプラスして、1,000円程度で手軽に買える詰め合わせを開発。店頭だけでなく、デパートの地下食品売り場のほか、県庁や病院の売店などで販売を始めたところ、毎回売り切れる人気となりました。
営業時間も当初は9:00~19:00に設定していましたが、アイドルタイムとお弁当需要を鑑みて、2024年春ころから11:00~14:00の昼営業のみ、と思い切った時間帯に絞ったそう。
「スタッフの勤務も、お弁当を仕込むため朝6:00~15:00勤務に変更しました。いろんな店が開いている、明るいうちに帰れるって社員には好評なんですよ」
お客さまからは「もう少し長い時間(夕方まで)やってほしい」との声もあるそうですが、いまのところは昼の需要に特化して対応していきたい、と望月さん。これまでの3年半を振り返り、
「やるべきこと、やりたいこと、思いついたことは、とにかくやってみました。小さな店なのですぐ実行できて、結果が出ます。もちろん経営という重圧があるので、全部つらいですが(笑)、全部楽しいですね。いろんな声を飲み込みながら、違うことをやってみながら、改善をして、『一歩一歩着実に』ここまで来た感じです」
近頃は、信州ブレイブウオリアーズの試合会場で販売したところ、1日最高400食も売れたとか。「これはビックリでした。何でもやってみないとわかりませんね」
夢は、「ドジャースタジアムにマッサンを出店すること」だそう。コツコツと小さな改善を積み重ね、より人々のためになるお店を目指していきたいと、まだまだ良くなっていく気満々のmassanに、これからも目が離せません。
(2025/11/18掲載)
長野市栗田1776
電話:026-217-2750
ホームページ:https://massan-ricesand.jp/
ホームページ:リンクはこちら
営業時間:11:00 – 14:00
定休日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始