根元「八幡屋礒五郎」新たな価値創造の場
CEVEN LAB(セブンラボ)さん
2025年3月にオープンした「CEVEN LAB(セブンラボ)」は、創業1736年(元文元年)の老舗七味唐辛子メーカー・根元 八幡屋礒五郎が開設した新施設です。
サービス開始から10周年を迎えた業務用七味の調合サービス「カスタムブレンドPRO」を中心に、「七味唐からし」の新たな価値を創造する場として注目を集めています。
文・写真 半田莉幸(文)、吉田淳子(写真)(株式会社ビー・クス)
創業1736年(元文元年)の老舗・根元 八幡屋礒五郎。善光寺門前に本店を構え、300年ものあいだ信州の食文化と共に歩んできた「七味唐からし」は、地元の食卓はもちろん、県内外の観光客や飲食店からも長年にわたり愛されてきました。
この伝統を礎に、2025年3月、柳町の本社向かいに位置するDevelopment Center(開発棟)1階に、新たな価値創出に取り組む場として開設されたのが「CEVEN LAB(セブンラボ)」です。10年前に開始された業務用七味調合サービス「カスタムブレンドPRO」を中心に、企業や飲食店とのコラボレーションに加え、商品開発や地域文化の発信など、多様な取り組みを展開する、まさに「食のクリエイション拠点」となっています。
「CEVEN」は造語で、「七味=seven」と、Chili pepper(唐辛子)、Culture(企業文化)、Create(商品開発)など「CEVEN LABが叶える7つのこと」を象徴する頭文字「C」を掛けたもの。空間設計は、数々のミュージアムや展示施設を手がける乃村工藝社との共同デザインです。
エントランスから一歩中へ入ると、まず目に飛び込んでくるのは、さまざまな形にくり抜かれたモチーフが白く浮かび上がる壁面。これらはすべて同社が取り扱ってきたスパイスを象ったもので、手前には創業当初から使われているスパイス、奥へ進むほどに新しいスパイスが加わり、製品の進化を視覚的に表現しているそうです。
施設の内部は木の温もりと洗練された美しさが共存した空間。同社の「伝統」と、これから歩む「未来」を感じさせます。
ひと際目を引くのが、奥に鎮座する巨大な七味缶と、中央に設置された円形のキッチンカウンター。内部にはシンクやIHコンロ、電子レンジなどが完備されており、飲食店関係者が実際に料理を持ち込んで、その場で調合・試食しながら理想のブレンドを探ることができます。
そのほか、歴代商品やコラボ製品の展示、使用スパイスや同社の歴史についての紹介コーナー、七味の素材カラーを反映したテーブルを配した打ち合わせスペースなど、調合にとどまらず、アイデアを刺激し多様なクリエイティブを生み出す共創の空間が広がります。一般公開していないのはもったいない!と感じるほど。
根元 八幡屋礒五郎では、これまでにイタリアン、ラーメン、中華、カレー、さらには市町村やイベント企画向けなど、ジャンルを問わず数多くの「○○専用七味」を生み出してきました。
「サービス開始当初は、本店併設の『横町カフェ』で打ち合わせや調合を行っていたんです。でも隣には普通のお客さんがいらしたり、設備にも制約があって。『もっとじっくりと商談や開発を進めたい』という思いが強くなりました。調合・試作・試食が同時に行える施設を作ろう、との取り組みでできたスペースなんです」
そう説明してくれたのは、同社常務取締役の室賀ゆう貴さん。
「カスタムブレンドPRO」によるオリジナル七味開発は、同社の営業担当者が飲食店などのお客様の要望を丁寧にヒアリングするところからスタートします。使用する料理や用途に応じて、過去の事例や経験に基づいた素材を提案。プロの料理人でも「イメージはあるけれど、どう表現すればよいかわからない」というケースは多いそうで、素材を実際に手に取り、香りを確かめながら、納得のいく味わいを共に創り上げていきます。
今回、特別に調合を体験させていただきました。営業部主任の清水義雄さんと一緒にどんな料理に合わせようかと考えながら、まずは唐辛子の試食からスタート。辛味がほとんどなく、ほんのり甘みを感じる「万願寺唐辛子」、あとから強い辛さが押し寄せる「バードアイ」、信州大学と共同開発された「信八唐辛子」など、唐辛子だけでもそれぞれに味があり、とても個性的です。今回は「万願寺唐辛子」をベースに、カレーやエスニック料理に合うようなブレンドを提案していただくことに。
「クローブを入れるなら、クミンやコリアンダーも加えると香りのバランスが取れそうですね」「レモンは苦みと甘みを足すことができます。辛さも和らぎますよ。多めに入れてみましょうか」などと、スパイス同士の相性や香りについて、プロならではの細やかなアドバイスをいただきながら調合を進めました。
完成した七味は、カレーはもちろん、チャイティーやスパイスケーキのアクセントにも活用できそうな、奥行きのある風味に仕上がりました!
「七味唐からしは、素材の香りや辛味、風味が合いそうなものを足していけば良い…などという単純なものではありません。その真価は実際に料理にかけてみて初めて発揮されるもの。一見、単体で味わっても物足りない調合が、料理と合わさることで格別の美味しさを生み出すこともあるんです」(清水さん)
同社は、長野市に根ざした老舗企業として、単なる食品メーカーの枠を超え、地域の「文化的象徴」としての存在感を発揮してきました。長い歴史と確かな品質に裏打ちされたそのブランド力は、企業や自治体をはじめ、アニメ、映画作品、ファッションブランドなど、ジャンルを問わず多彩なコラボレーションに活かされています。
2006年からは、パッケージに描かれた善光寺本堂の絵柄部分に、毎年異なる長野市や県内にまつわる象徴的なモチーフを取り入れた「イヤーモデル缶」を発売。地域とのつながりを感じられる企画として、毎年注目を集めています。
地域スポーツチームとの連携にも積極的で、信州ブレイブウォリアーズやAC長野パルセイロのスポンサーも務めています。会場では、観客用に設置されていたドラム缶型テーブルを七味缶デザインのテーブルにするなど、同社らしい遊び心とブランド力が融合した、ユニークな演出で会場を盛り上げています。
「長野市の企業として、地域の魅力を発信する役割を担えればと思います。私たちが『長野市に行く理由のひとつ』になれるよう、より良いサービスと商品開発に努めていきたいですね」(室賀さん)
さまざまな魅力を秘めたCEVEN LAB。カスタムブレンドPROをはじめとする多彩な取り組みを通じて、信州の魅力と食の可能性を全国へ、さらには世界へと発信する拠点となることでしょう。
(2025/08/22掲載)
本社/〒380-0805 長野県長野市柳町102-1
Development Center/〒380-0805 長野県長野市柳町83
ホームページ:https://yawataya.co.jp/
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