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No.400

中村

嘉郎さん

カレーショップ山小屋3代目オーナー

「まちのためにも店を継ぎたい!」 後継者不在だった老舗カレー屋の3代目オーナーに

文・写真 島田 浩美

「元祖納豆カレーの店」として、県内外にその名を馳せる「カレーショップ山小屋」。1973年の創業以来、幅広い世代から愛され続けてきた人気店の3代目オーナーに就任したのが、親族間ではない第三者継承によって経営を引き継いだ中村嘉郎さんです。その思いを伺いました。

長年愛されてきた店がつくり出すまちのムードを守りたい

長野駅近くの細い路地。「こんなところに店が!」と驚くような隠れ家風の佇まいながら、創業45年を迎えた「カレーショップ山小屋」は、昼時ともなればいつも老若男女でにぎわいます。どこか懐かしい山小屋風の空間で提供するのは、納豆をトッピングした「納豆カレー」をはじめとする20種類のカレーと15種類のトッピング。変わらぬメニューで長年、長野市民の胃袋を鷲づかみにしています。
 

▲「カレーショップ山小屋」が発祥の店とされる「納豆カレー」
 
「こうして長く続けている店は独特のムードを醸し出していて、そういう店の集合体によって、まちの魅力も高まると思ったんです。だから、この店を変えることなく続けていくことはまちにとってもいいことで、『これは継ぐしかない』と思いました」
 
こう話すのが、2018年3月に3代目オーナーとなった中村さん。就任前は7年間、飯綱町に本店を構える「ワイナリーレストラン・サンクゼール」で働き、長年、店長職も経験しました。そして、接客業の楽しさから「いつか自分の店をもちたい」と思うように。そうしたなか、父が常連客として通っていた「カレーショップ山小屋」の2代目オーナーの体調が思わしくなく、「後継者を探している」と父から相談を受けたのです。
 
実はこの「カレーショップ山小屋」、かつては多店舗展開をしていましたが、現在、長野市内に残るのは、この駅前店だけ。その流れのなかで、2代目オーナーもまた、親族間ではない事業承継で店を守ってきました。そして、中村さんは父とこの店を訪れた際、いつか自分で飲食店を開きたい夢を2代目に話していたそうです。
 
「とはいえ、2代目は商工会なども通じて後継者を探していたので、親父も当初は軽い相談という感じでした。でも、2代目と話すうちに、どんどん僕のなかで『まちのためにもこの店を続けていきたい』という気持ちが出てきたんです」
 

▲常連客だった父の哲郎さん(左)からは「やりたいならやれ」と言われたそう。母の幸子さん(右)は当初驚いたそうですが、今はホールスタッフとしても活躍中
 

「お客さんに喜んでもらいたい」思いはどの店でも一緒

そのうち、中村さんのほかにも何人か後継希望者が出現。それでも、創業者である初代オーナーも交えて半年間話し合うなかで中村さんの熱意が買われ、とうとう3代目オーナーに決定しました。
 
しかしながら、サンクゼールといえばヨーロッパの農村リゾートを思わせる雰囲気で、提供している料理もカレーなどの大衆食とは異なります。経営者になることに対し、抵抗はなかったのでしょうか。
 
「確かにサンクゼールは客単価が高く、なかなか頻繁には行けないところですが、お客さんに喜んでいただきたいと思う部分はカレー屋と一緒。『また来たい』と思って帰っていただくことは変わらないと思っていました」
 
なるほど、まさにそれこそが接客業の原点。その力強い言葉に、中村さんの強い意志を感じました。
 

これからの時代に向け、第三者経営継承の成功を!

こうして前職を退職し、先代のもとで2カ月間カレー作りのノウハウを習得した中村さん。本格始動にあたり、心がけたのは「変わらない安心感」を与えられる店づくりです。そのためにも、変えるべきものと変えてはいけないことを一番に考え、床やトイレなどのハード面はきれいにしたものの、店の雰囲気を形づくる什器や備品、メニュー構成、値段、営業時間などは全て以前のものを踏襲しました。
 
「常連の人から『頑張ってね』とか『変わってないね、安心するよ』と言われるのが、いつも一番うれしいですね。応援してくれる方がいて、愛されている店なんだと感じると、やってよかったと思います」
 

▲今も変わらないノスタルジックな風情が漂う店内がいい感じ
 

▲メニュー表(左)は一新したものの、メニュー構成はそのまま。長年続いてきた自由ノート「何でも書いてみま帳」は300冊を超えるまでになりました
 

▲オリジナルソーセージは新メニュー。この日は「食べるラー油味(!)」と日々斬新なテイストが登場します。生ビールも飲めるように
 
そんな中村さんが今抱くのが、今後増えていくと予想される第三者継承をする人への思いです。
 
「他人が事業承継する形はこれからの時代に増えていくと思っています。そのためにも、いつもこの店にお客さんが入っていて、僕が楽しそうに働く姿を見せることが重要です。今はまだまだ成功とは言えません。接客をしながら厨房の仕事もこなし、お客さんの顔を見て手応えを感じていけるようになりたいですね」
 
ほかにも、普段は空いている2階のスペースを、将来、飲食店を開きたい人に時間限定で貸し出したり、定休日には大都市圏で流行している「間借りカレー(店舗の定休日などを貸し出し、個人がカレーを販売するスタイル)」に使ってもらうなど、いずれは夢をもった若者を応援する店にもしていきたいと話します。
 
「飲食を使って自分のことを表現したい人は少なからずいると思うので、こういうゆるい空気感の店を肩肘張らずに使ってもらえたらいいですね」
 
今や、どの業界においても後継者不足は課題。そんななかで「カレーショップ山小屋」の経営者リレーは、未来の個人店のひとつのあり方を示しているかのようです。それに、中村さんのユニークなアイデアから、いつか「納豆カレー」のようなセンセーショナルな文化が生まれるかも! そんな期待を抱かずにはいられません。
 
 
 

(2018/08/21掲載)

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会える場所 カレーショップ山小屋
長野市北石堂町1408
電話 026-224-3139
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