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No.007

中島

さん

信州大学特任教授/ぎんれいプロジェクトマネージャ

信州発、世界初の
可視光通信人工衛星打ち上げに成功

文・写真 Takashi Anzai

宇宙にロケットを飛ばす―。
それは少年少女が一度は夢見るロマンではないでしょうか。
物理のテストが赤点ばかりだった僕ですら憧れを抱いていました。

2014年、信州大学が県内企業と共同開発した超小型人工衛星「Shindai Sat」(愛称・ぎんれい)が宇宙へ飛び立ちました。世界で初めてとなる、可視光通信を使って地上と宇宙の間でデータをやり取りする人工衛星です。

中島教授はそのプロジェクトのマネージャです。航空宇宙に関する専門の学科がない信州大学で、ゼロから打ち上げまでプロジェクトを導いてきました。

「ぎんれい」はJAXA(宇宙航空研究開発機構)のH2Aロケットに、他の衛星と一緒に搭載された相乗り衛星。初めての信州製人工衛星です。部品の殆どを県内企業が寄付、供給しています。

「ぎんれい」のCG画像。一辺40センチの立方体で地球側の一面に32個のLEDライトが配置されている

可視光通信とは、目に見える人体に害のない帯域の光でデータを送受信する技術のこと。地上を飛び交う電波が飽和状態となっている中、電波に代わる通信手段として注目されています。
今後、1年間にわたり、超長距離の可視光通信実験を行います。

中島教授は可視光通信の可能性に期待しつつも、「ぎんれい」にこの装置を搭載した理由についてこう語ります。

「可視光なら人工衛星から光を出して、われわれが直接見ることができます。そのときに光をモールス信号で点滅させると、地上の人に直接メッセージを伝えることもできるんです」

「子どもから大人までが興味を持って夜空を見上げて、人工衛星から出る光を見てもらう、そこが非常に面白いのではないかなと思うのです。人工衛星、宇宙に対して興味が湧くプロジェクトかな、と。技術的な意義もありますが、むしろ皆さんに楽しんでもらうという方がウェイトは高いですね」

最先端の技術を集めて作られた「ぎんれい」ですが、黒い小さな立方体という見かけによらず、とてもロマンチックな思いが詰まっているようです。
「ぎんれい」が発する光は、地上の私たちに一等星ほどの明るさで見えるそうです。

中島教授は信州大学工学部、同大学院工学研究科の出身。60歳までJAXAに在籍し、宇宙工学の研究に携わってきました。
平成20年4月から信州大学工学部に自動車、船、飛行機などの制御システムを指導する講座が開設され、中島教授は専任で5年間、宇宙関連、その中でも人工衛星を担当してきました。
可視光通信が専門の教授とともに今回の人工衛星の企画を考案。H2Aロケットの相乗り衛星に応募して、平成23年12月採択され、それからプロジェクトが正式にスタートしました。

プロジェクトのメンバーは先生が5名、学生が約30名。
中島教授は、ゼロからのスタートに携わってきた学生たちの成長に目を細めます。

「数名の学生は過負荷でしたし、精神的にも相当きつかったと思います。しかし、社会に出ればそういう経験は当然あります。プロジェクトは期限がありますし、次々と要求がきて、短時間でこなさなければなりません。普通に大学生活を送っていればあまりないことです」

「それと、企業とのやり取りがたくさんありますから、企業でどういうような動き方をしなければならないかが理解できて、そのまま社会に溶け込めます。自分たちが参加したものが宇宙へ行ったということが心の糧になっていると思いますし、心の支えにもなっていくのかなと思います」

自らも学生時代に学んだ信州大学工学部。その学生にはこんなメッセージを送ります。

「インターネットもそうですけれど、今は外に自由に広がっていますし、私の頃から比べると地理的な不利はなくなってきています。モチベーションさえあれば何でもできます。何の目的もないと、だらだらと過ぎてしまいますから、自分で機会を見つけて、今回のようなプロジェクトなどに積極的に参加してもらいたいですね。自分で飛び込んでいかないと、埋もれてしまいます」

研究室で「ぎんれい」と通信する中島教授

今回のプロジェクトで苦労した点については、「どこでもそうですが」と前置きした上で予算と期限の二点を挙げます。

「時間がちょっと短かったですね。立ち上げから2年間でした。普通でも小型なら2、3年かけるのですが、信州大学の場合ゼロからのスタートでしたから、かなりタイトでした。終盤間に合うかどうかというところでしたが、打ち上げが延びたので助かったところはあります」

「お金がないので、その中でいかにやりくりするかが大変でした。普通は打ち上げる衛星のほかに殆ど同じ衛星をつくるんです。エンジニアリングモデルという。それがありませんでした。いきなり本番でしたから。どんなプロジェクトでも制約はありますが、もっと予算があれば楽だったのかな」

そう苦笑いしながら振り返ります。

しかし、今回の打ち上げは信州大学のステータスを上げただけでなく、信州の製造業にとっても大きな収穫となったのではないでしょうか。宇宙産業で求められる精度は、自動車などの産業に比較してかなり高いものです。ほぼ信州の製造業各社だけで高精度の衛星を作り上げたことは、長野県のモノづくりのレベルを内外にアピールできたと言えるでしょう。

「信州大学だけでやろうとしても絶対できませんでした。信州の企業が補てんして、モノや人を出してくれて打ち上げられた衛星です」

実験はまだ始まったばかりです。
中島教授や学生たちがホッとしたのは束の間。これから一年間、衛星を運用していかなければなりません。取材した3月下旬は「ぎんれい」からの電波を受け取り健康状態をチェックしていました。

「今も電波は昼も夜も来ますから、気は抜けません」

淡々とそう話す中島教授ですが、表情は自信に溢れていました。

夜空を見上げる楽しみが一つ増えました。

中島教授の研究室が入る長野市ものづくり支援センター(UFO)

(2014/05/13掲載)

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