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No.108

大西

浩次さん

国立長野高専教授/理学博士

手に届かない宇宙の魅力を伝える

文・写真 Rumiko Miyairi

瞬間の楽しみ

「星は手に届かないものだからこそ、魅力があります。日食や月食のような天体現象から、銀河系中心にある巨大ブラックホールの物理現象まで、その劇的な変化に大変ドキドキします」

長野市にある国立長野高専、教授の大西浩次さんは、物理学の教鞭をとる一方、ニュージーランドの天文台で系外惑星を探す研究を行うなど、日本を代表する天文学者として活躍しています。

大西さんは「物理学は非常にシンプルなのに、天文学は複雑すぎる」と考えて、物理学から宇宙を極めようと大学時代を過ごしたといいます。そして、子どものころから星を見ることが好きで宇宙への魅力を感じていたと話します。

「子どものころから、毎日、星を見ていましたね。夏は、もちろんペルセウス座流星群を観察しましたよ。それから、太陽と月の織り成す現象も好きです。皆既日食の瞬間は最高に感動しますね」

大西さんの話を聞きながら、私は2009年に起きた部分日食(一部地域は皆既日食)のときのことを思い出しました。

当時、就園前の娘を連れて長野市立博物館で開かれた観測会に参加。日食メガネをかけて見た太陽が、あっという間に欠けていく様子が不可思議で、何が起きたか分からない娘もキョトンとしたまま、しばらく黙って見入っていたこと。

大西さんは、そのときの観測の様子で気になったことがあったと話します。

「太陽を見るとき、普通の下敷きを使って見るのは極めて危険です。あの強い太陽光線で、目を傷めてしまうからです。特に、子どもたちはじっと太陽を見つめてしまうので、注意が必要です。2009年の部分日食のときに、目を傷めたという事例が多数ありました」

そして、2012年の金環日食。

大西さんは日本天文協議会金環日食日本委員会の副委員長として、日食メガネの安全性の調査と研究をし、また、安全に観察する方法を知ってもらうための活動をしました。

惑星や恒星など、星それぞれの特徴とその観察の仕方を習得すれば、その瞬間の現象に立ち会えたという感動と喜びが誰でも味わえるという大西さん。

「星の見え方や観察の方法を知れば知るほど、その世界が広がります。広がった世界の向こうに、まだ世界があると分かると、また知りたいって。そうなると天文学にどんどんハマっていきますよ」

星を見るのは明け方が多いそうです。寒さ対策も万全に星を撮影する大西さん[写真・大西浩次さん]

市街地から満天の星空を

「長野市内からでも、良く星が見えると思っている方が多いようです。しかし、飯綱や戸隠などに少し足を運べば、もっと素晴らしい満天の星空が待っています」

普段、街明かりがある中で見上げた星空は、本来の姿ではないという大西さん。

見え方は、その土地の地形などにも左右されますが街明かりが星空を見えにくくしていると話します。

「長野市街地は千曲川などの影響もあって、そもそも霧が発生しやすい場所です。その霧が市街光を反射させているので、空が明るく、星があまりきれいに見えません。この市街の照明を見直していくと意外と星が見えるはずです」

「それには、なるべく四方八方を照らさないようにするんです。すると、もともと素晴らしい環境のポテンシャルをもった長野市なので、市街地からでも天の川が楽しめるはずです。そうなると、さらに飯綱や戸隠は日本でも有数の星空の名所になるでしょう」

満天の星空がどこでも見られるように、誰でも今からできることがあるという大西さん。

「2015年は『国際ひかり年』です。来年は色々な活動やイベントが行われると思います。今の星空は、まわりが明る過ぎて天の川も見えにくいですから。ひかりの害を減らすためにライトダウンしようとか、長野市街地から天の川を見てみようとかね」

素晴らしい北アルプスの山脈と長野市の夜景。光を慎ましやかに受け止める大西さんが撮る写真は美しい[写真・大西浩次さん]

宇宙を旅した星の光

大西さんは25年ほど前から、山や里の自然など風景を入れながら星の撮影をする星景写真を撮り始めました。今も、ときどき、戸隠や志賀高原などに出掛けています。

「戸隠では、星と自然が調和した世界を撮影することができます。肉眼でも天の川がよく見えますから、まだ見たことがない人にはお勧めの場所ですね」

季節は秋になりましたが、夏の風物詩である七夕(織姫と彦星の星)にもふれ、天体観測とその魅力を分かりやすく教えてくれました。

「星の距離って意識したことありますか?七夕の織姫と彦星、これらは私たちから比較的近い星です。七夕伝説では、一年にわずか一度しか会えないという。だから、なかなか会えなくて悲しいことだと思われていますね。しかし星の一億年は人間でいうと一歳くらいに相当します。ですから、宇宙のタイムスケールでは、織姫と彦星はいつでもデートしているような状態ですよ(笑)」

「そんな感覚で改めて宇宙を眺めると、自分が今ここに存在することが、まさに奇跡のような瞬間だと思えてきます。こんなスケール感も天文学の魅力なんだろうなあと」

戸隠から見る天の川。雄大な星空を幻想的にみせてくれる大西さん撮影の写真[写真・大西浩次さん]

星を謙虚に観測していると世紀の大発見にもつながるかもしれない、そんなチャンスが誰にもやってくるともいいます。

「今見えている星の光。これは、はるか昔に放たれた光が、今まさに、この瞬間に自分の目の中に飛び込んできたものです。星を見ることは、過去に放たれた手紙を受けとるようなものなのです。星には寿命があって、自分の受け取った光が、まさにその星の最期の輝き(超新生爆発)のときの光なのかもしれない。さらに、大きな望遠鏡を使えば深宇宙の数千万年前、数億年前に放たれた光をも、この目で受けとることができるのです」

光を慎ましやかに受け止める姿勢を、示してくれた大西さん。

「今、流れた流れ星と、次の流れ星は決して同じではないのです。超新星からの光もそうで、これらの瞬間に立ち会えるのが天体観測のおもしろさ。星を見る、すなわち、宇宙を旅した光の最期を自分の目で受け止めてあげることなんです」

話を聞いて、星の光は果てしてない時間の流れに乗って、はるか彼方から遠い未来まで、これからも私たちに降り注ぐのだと思うと、宇宙にロマンを感じますます興味が湧きました。

戸隠からはこうこうと輝く北斗七星が観測できます[写真・大西浩次さん]

(2014/10/06掲載)

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