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No.51

鬼無里の乾燥野菜

わらべら〜ず(わらべうたサークル)古畑真規子さんのフェイバリット・ナガノ

谷の都のおいしい知恵

文・写真 みやがわゆき

「谷の都」の郷土食

切り干し大根や干し芋、干し柿、干ししいたけなど、乾物は日本独自の食文化。最近はヘルシーな常備食として、また、その軽量さからトレッキングやキャンプなどの携帯食としても注目されています。とはいえ、日常的に食べることはあっても、自ら作って干すことは、ほとんどないかと思います。

そんななか、長野市の中山間地・鬼無里地区では、野菜を切って、家々の軒先で干し、冬場の保存食として食べるという昔ながらの食文化が、今なお根付いています。

四方を山に囲まれた谷でありながら、日当たりがよく、水はけがよく、耕作地にも恵まれている鬼無里。たくさん採れた野菜を、工夫して乾燥させ、冬場の栄養源とする暮らしの知恵は、何世代も前から自然に受け継がれてきました。

鬼無里の農林産物直売所等で販売もされている乾燥野菜は、大根(一般的な切り干し大根)を始め、丸干しのシナ大根(青首の漬け物に適した大根)、なす、かぼちゃ、りんご等々。どれもからからに乾燥していて、どうやって食べるのか、戸惑ってしまうようなものもあります。そんな乾燥野菜は一体どのように作られているのでしょうか?

鬼無里・小林貞美さんの乾燥野菜。上から時計回りにナス、切り干し大根、丸干し大根、いんげん(七月ささげ)、ゴーヤ

太陽様の栄養たっぷり

鬼無里の方言で、野菜が乾燥することを「干る(ひる)」といいます。

「ナスは皮をむいて、薄く切って、トタンの上に並べて外に出しておけば1日で干るよ。ゴーヤも種をくり抜いてスライスして、半日ぐらいで干るね。」
そう教えてくれたのは、「乾燥野菜の名人」と呼ばれる、鬼無里生まれ鬼無里育ちの小林貞美さん(88歳)。

鬼無里の乾燥野菜は、トタンの波板の上に切った野菜を並べ、天日にさらすという方法で作られます。波板を使うのは、風が通り抜けて、早く乾燥することから。完全に乾燥するまでに数日かかるかぼちゃなどは、朝、日が当たって来たら波板を出し、日が沈む前に納屋などに取り込みます。

「かぼちゃはいい天気で2日はかかる。だから、天気予報をよく見て、2,3日晴天が続きそうな日を選んでね、容易じゃないよ」と、小林さん。

かぼちゃは、短冊状に細かく切って、10分程蒸してから干します。1kgのかぼちゃが2日干すと、140gになるというから驚きです。

「去年は秋にずっと雨が続いたから、かぼちゃを80個収穫したけど、50個は全然使い物にならなかったよ」

その年の作物の出来が、乾燥野菜の出来に直結しているというわけです。

「おいしい野菜が、お天道様の栄養をたっぷり受けて、おいしい乾燥野菜になる。いろいろ試してみたけど、かぼちゃでもなんでも、ちゃんとおいしいもの(品種)を使わないとダメだね」

長年の経験から、それぞれの野菜の、最良の干し方を知っている小林さん。

“1日で干る”というナスも、実は、乾燥してからもう1回蒸かして戻し、再び干すそうです。それによって、虫がつくのを防ぐことができるといいます。シナ大根は、生のまま干しますが、その行程も一筋縄ではいきません。12月中旬頃、まず1週間は、雪の上に直に置いて干します。雪の上でさらすことで、白くなり、旨みが増すそうです。その後、ドリルで首の方に穴を空け、ひもを通し、1年で一番寒い大寒を挟んで1ヶ月間、軒先に吊します。

こうして、手間暇かけてからからに干上がった大根は、切ってからぬるま湯で戻し、煮物などに。5月中旬のお田植えには、この大根が入った煮物が定番のおご馳走として登場するそうです。

下の写真のような波板を5〜6枚並べ、コンテナの上に置き、野菜を一斉に乾燥させます。上の写真はりんご(イメージ)

長野県が推奨する「おいしい信州ふーど(風土)」“乾燥野菜名人”にも認定されている小林貞美さん

食べて納得

取材を終えて、「名人」にお裾分けしていただいた干しナスと干しゴーヤを、教わった方法で、調理してみました。まずは、ぬるま湯に浸けて戻します。10分ほどで柔らかくなりました。

ナスは炒め物に。水気を軽く絞ってから、油を多めに敷いたフライパンで炒め、酒・醤油・みりん・砂糖で味付けをします。炒める前に水気を軽く絞ることがポイントで、これによって、味がしみこみやすくなります。

ゴーヤは、卵とじに。こちらは軽く搾った後、砂糖を少しまぶしてから油をしいたフライパンへ。頃合いを見て溶き卵を回し入れ、塩こしょうで味付け。砂糖をまぶすことで、苦みがなくなると教わりましたが、食べて納得。ほとんど苦みがなく、卵とよく絡んで、恐る恐る箸を口に運んだ子どもたちも驚いていました。ちなみに、砂糖をまぶさなくても苦みは少ないので、ゴーヤの苦みが好きな方にはちょっと物足りないかもしれません。とはいえ、地元で採れた夏野菜の風味を、雪のある季節に味わえるのは、最高の贅沢。鬼無里の人々の知恵は、貴重な文化遺産。山の暮らしの豊かさをしみじみと感じました。

予想以上に手軽にできる乾燥野菜料理。上:乾燥ナスの炒め物 下:乾燥ゴーヤチャンプルー(玉ねぎ入り)

Information
鬼無里の乾燥野菜は、鬼無里農林産物直売所「ちょっくら」等で販売されています(1月〜3月は休業)
鬼無里農林産物直売所「ちょっくら」
長野市鬼無里1669-2
TEL026-256-2450

(2017/03/07掲載)

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