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No.47

上条なごみ館

医療法人清水会 更水医院 院長 清水慎介さんのマイ・フェイバリット・ナガノ

第二の我が家のような
介護付きの頼りになる宿

文・写真 オギノフミエ

介護付きの宿とは?

長野市信州新町の国道19号沿いに、築100年以上の大きな民家をリフォームした介護付きの簡易宿泊所「上条なごみ館」はあります。観光客なども訪れますが、宿泊者の大半は軽度の介護を必要とする高齢者です。宿を切り盛りしているのは、創設者で運営者の吉澤和子さん。車で数分の距離に家族が暮らす自宅はありますが、1年のほとんどをここで利用者とともに過ごしています。

制度に縛られない手助けを

上条なごみ館をオープンする前は介護施設に勤務していた吉澤さん。
介護の勉強をすればするほど、経験を積めば積むほど、「利用者本位のサービスを」という理想と現実とのずれや矛盾を感じるようになり、「介護保険の枠組みに縛られず、困っているお年寄りの手助けをしたい」と施設を退職。
改めて介護の勉強をしなおし、いくつもの資格を取得しながら、上条なごみ館を立ち上げました。

当初は高齢者の下宿にしようと考えましたが、相談に訪れた保健所で「下宿は契約が1か月単位という規制がある。簡易宿泊所は日帰りでも1泊でも連泊でもいいから、誰にとっても使いやすいのでは」というアドバイスを受け、現在のかたちになりました。
年齢、宿泊の目的、介護保険認定の有無にかかわらず、移動、食事、排泄、入浴など日常生活の基本的な行動が自分でできる人は利用可能です。

とはいえ、上条なごみ館の利用者は見守りが必要な高齢者ばかり。
介護保険の施設ではありませんが、介護保険の認定を受けている宿泊者は、自宅にいる時と同じようにデイサービス、ショートステイ、訪問診療など介護保険のサービスを利用しています。
年単位で暮らしている人、退院後のリハビリ期間として数か月を過ごす人、あるいは1泊や日帰りまで、利用のかたちはさまざま。ニーズに応じた柔軟なサービスを用意していることも特徴のひとつです。

建物は築100年以上の古い民家ですが、必要な場所にはスロープや手すりが設置され、高齢者が安全に過ごせるよう全面的に改修されています

困っているお年寄りの拠り所

持病が重篤でひとり暮らしは困難と判断されながら、病気を理由に複数の介護施設に入所を断られたAさん。

本人や親戚から強く要望された吉澤さんは、Aさんの病気について学び、医師に相談したうえで受け入れを決断しました。

デイサービスの送迎車も担当のケアマネジャーも、Aさんを訪ねてここにやって来ます。時には自宅に戻ることもありますが、ここがAさんの住まいになって5年が経ちました。

最晩年の4年間を上条なごみ館で暮らしたBさん。持病の影響で体調が徐々に悪化し、医師の判断で入院が決まりました。2か月後に病院で息を引き取ったBさんの家族に請われて、吉澤さんは通夜から納骨、四十九日にも参列。
「ずっとBさんに『看取ってほしい』と言われていて、『わかったから安気にしてなよ』って言ってたんだけどね。約束を守れたことになるかな…」

「遠くの親戚に急な不幸があって留守にしなければならないが、おじいちゃんに長時間の移動は無理だし、かといって家に一人で残していくのは不安」と、家族が留守になる数日だけ滞在する人。

古い自宅は寒く、ストーブに灯油を入れるだけでもひと苦労。山間部では雪かきや食料品の買い出しも大変だから、と冬季だけ避寒にやって来る人。
配食サービスを利用しているものの、1食分を1日3回に分けていたため栄養失調になりかけ、ここで3食を共にする人。

同居する家族に虐待されていたことが発覚して緊急避難してきた人。

上条なごみ館は、さまざまな事情をもつ高齢者の我が家であり、拠り所です。

長期滞在者の個室には身のまわりの必需品や生活雑貨が置かれ、それぞれに心地良い部屋づくりがされています。亡き夫の位牌を安置する人も

細やかな手当てと気配り

「私にできることならなんでも手助けしたい。できることは限られているけれど」と吉澤さんはいいますが、実際にはかなりきめ細やかな対応をしています。

足元がおぼつかない利用者が夜中にトイレに起きれば、5回でも6回でもそれに付き添います。

3度の食事は、高齢者が好むものを、栄養価や食べやすさを工夫して提供しています。

ときにはみんなで外食に行ったり、買い物を楽しんだり、春はお花見などにも出かけます。

「デイサービスに通うバッグがダメになっちゃった」と利用者が言えば、「布がいっぱいあるから縫ってみようかね」と、トートバッグを手作りしてプレゼントします。

いつからか、利用者に「おかあさん」と呼ばれているそうですが、その理由がわかる気がしました。

いつも笑顔でほがらかで「人が良すぎる」という評判通り、面倒見の良い吉澤さんは、年齢に関係なく「おかあさん」と呼びたくなる雰囲気に満ちているのです。

短期滞在の観光客向けの食事はボリュームあるメニューですが、長期滞在者は家庭的で飽きないごはんをマイ箸マイ茶碗で。宿泊者は居間で一緒に食事をとります。「事前に了解を得ているせいか、観光の方もお年寄りとの会話を楽しんでくださいます。お年寄りにとってもいい刺激です」

多彩なスキルと人の良さで突き進む

介護の仕事に就く前は、親戚の仕事を手伝ったり、家族の介護をしたり、鍼灸院に勤めたり(整体師の資格あり!)と複数の職業を経験し、幅広い技能を持つ吉澤さん。

本人は謙遜しますが、料理の腕は抜群で、裁縫や編み物もかなりの腕前。植物を育てるのが上手で、畑仕事も得意。いまも近くの畑で何種類もの野菜を育て、ご近所さんにお裾分けして喜ばれています。

介護保険や福祉制度では対応しきれず、かといって民間のサービスを利用するのは経済的に困難な高齢者を支えることは容易ではなく、「たしかに経営的にはかなり苦しい」と吉澤さん。

「でも私も年金をもらえるトシになったし、なんとか生きられるから。そりゃ大変なこともいっぱいあるけど、利用者さんやご近所さんがずっと気にしてくれるし、周りの人に支えてもらって本当にありがたい。いろいろあったけど、なんとかここを続けられて、いまは幸せね」

みんなの「おかあさん」は、今日もぴかぴかの笑顔でがんばっています。

介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネ)、認知症予防支援相談士、認知症ケア指導管理士、認知症ライフパートナー、介護口腔ケア推進士、介護予防運動指導員等々、多数の資格と知識、経験に加え、面倒見の良さとスキルで、年上の利用者からも「おかあさん」と頼りにされている吉澤和子さん

〈info〉
上条なごみ館
長野市信州新町上条94番地1
TEL・FAX 026−262−4520

《料金》
1泊3食付5,000円(8日目以降は4,500円)
素泊まり1泊2,000円〜(1食プラス500円)
夕方休憩サービス1時間500円 など

※ご予約、料金やサービスに関するお問合せはお電話でお願いします

(2017/02/23掲載)

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