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No.41

松代焼

戸隠インスタグラマー 林部良子さんのフェイバリット・ナガノ

現代によみがえった松代藩の遺産

文・写真 みやがわゆき

おそば屋さんのそば猪口に、栗菓子屋さんで出されたお茶碗に、喫茶店のコーヒーカップに…、青緑色の釉薬がかかった器が使われていたことはありませんか?知らず知らずのうちに、長野暮らしに溶け込んでいる、そんな焼き物が松代焼です。

松代藩が育んだ焼き物文化

真田幸村の兄信之が初代藩主となった松代藩。信之をはじめ、歴代の藩主は、町づくりや産業振興に力を尽くし、10代250年にわたり、10万石の城下町を守り継いだことで知られています。松代焼も、藩の産業開発のひとつとして、七代幸専(ゆきたか)の時代に、開発創始されました。もともと、寺尾名雲にあった窯を藩が巨額の資金を費やして買い上げ、京都から職人を呼び寄せて陶業が始まったとされています。

藩の権力によってひとつの窯から始まった焼き物は、その後、民間にも伝えられ、次々と新たな窯が開かれるようになりました。鉄分を多く含む松代の陶土の性質から、重厚な水がめ、鉢、壺など厚手の大きなものが多く焼かれました。庶民のための実用品として普及した松代焼。最盛期には北信濃(長野市・上水内・更埴市)の一帯で20の窯を数えたという記録が残っています。

ちなみに、「松代焼」という名前は、後世(昭和初期)に名付けられたもので、それ以前は、「寺尾焼」など各窯の名称で呼ばれていたそうです。

歴史的町並みが保存・整備されている松代の町並み

苦難の歴史を経て

明治に入ると、鉄道の発達により、他産地から安価で大量の陶磁器が流通するようになりました。県下最大の陶器産地として活況を呈していた松代の窯も、量産品に押され、昭和の初めに一時途絶えてしまったのです。しかし、地元の商家や旧家には、重厚で味わいのある松代焼の古陶や、陶片、古文書などが残されていました。

そして、昭和30年代の終わり頃から、残されたわずかな手がかりをもとに、松代焼の再興を目指した人物が唐木田又三さん(故人)でした。中学校の美術教師だった唐木田さんは、長年、松代焼の古陶の研究のほか、老陶工や関係者の話を記録して歩き、その陶土・製法等を再現するために力を注ぎました。退職後は、長野市篠ノ井の山中に登り窯を築き、松代焼の作陶に専念。その技術は次世代に継承され、現在では唐木田窯を含め、長野市内に4つの窯があります。

そして、平成26年には長野県指定の伝統工芸として松代焼が指定され、その作陶の技術は高く評価されています。

旧横田家の松代焼古陶(写真提供:長野県観光機構)

古きよき長野の焼き物

松代焼といえば、黒ずんだ土に、独特な青緑色の光沢ある釉薬がかかっている焼き物が定番です。陶土には、もともと鉄分の多い地元の粘土が使用されているため、黒く焼き上がります。そして、藁灰、白土、銅など天然素材で調合した釉薬を二十掛けすることで、素朴な造形と微妙な色合いを出しています。

唐木田又三さんに師事した弟子の1人である宮﨑知幾(あまかざり工房)さんは、語ります。

「松代焼は本来、この土地の実用陶器でした。今でも、毎日の生活の中で使っていただけることを願って制作しています」

宮﨑さんの作陶の材料は、松代の山の粘土と、日々の暖をとるための薪ストーブの木灰、わら灰など、身近な素材です。松代焼の釉薬として欠かせない白土は、江戸時代から伝えられた安茂里小市産のもが使われていました。(現在は採取禁止されているため、一部県外のものを使用)。

そんな郷土の素材を焼き込んだ陶器は、しっくりと手に馴染み、心温まる風合いがあります。

あまかざり工房には食器や花器のほか、心温まる動物の作品も多い

参考文献:「信州 松代焼」唐木田又三(信毎書籍出版センター)

<info>
あまかざり工房(清滝窯)
長野市松代東条1002-1
※松代焼の展示販売のほか、体験教室(要予約)もあり
TEL:026-278-9060
HP:http://amakazari-home.at.webry.info/
TEL:026-266-1088

(2017/01/20掲載)

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