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No.283

高野

勝人さん

しなの星空散歩会きらきら会長

自作の双眼望遠鏡を使った展望会で
雄大な宇宙のロマンを体感

文・写真 島田浩美

夜空を身近に感じ、仲間との交流も楽しめる星空散歩の魅力

夜空にオリオン座が見られ、冬の訪れを感じる季節となりました。自然豊かな長野市は、市街地から少し離れると星空観察に適したスポットがたくさんあります。望遠鏡を使ってそうした星空を眺める観望会を開催しているのが、発足20数年を迎える「しなの星空散歩会きらきら」です。

「望遠鏡を使った星空観察の魅力は、光の速さ(秒速約30万㎞)で数年から数百年もかかるほど遠くにある恒星を見ることができることです。いま見えている星の光は、数百年も前に放たれた光だと思うと、ロマンがありますよね。それに、世界中どこにいても同じ星が見れるのも魅力ですね」

そう話すのが、現在、会長を務める高野勝人さん。入会20年を超えるベテラン会員です。

子どもの頃から望遠鏡があった高野さんは、中学生になるとレンズだけを購入して紙で筒を作り、自作の望遠鏡で星空の鑑賞を楽しんでいました。高校に入るとアルバイトで貯めたお金で初めて4万円ほどのメーカー製の望遠鏡を購入。遠くにある星が近くに見えるのには感動したそうです。

高野さんが自作した2台目の双眼望遠鏡である「反射双眼望遠鏡」。1本15万円を超える鏡筒を2台並べ、縦方向と横方向に微調節ができるほかに、覗き穴の目の幅も見る人に合わせて調整できるようになっている

社会人になってしばらくは仕事の忙しさから天体観測は疎遠に。しかし、10年ほど経ったある日、ふと思い立って久しぶりに天体望遠鏡を購入しようとカメラ屋に出かけたところ、店主から誘われたことで「しなの星空散歩会きらきら」に入会しました。

「一番おもしろさを感じたのは、活動内容ももちろんですが、そのあとの慰労会なども含めて、いい仲間ができたことです。私は機材をいじること自体が得意なんですが、カメラが得意な人は天文写真を撮る時にアドバイスをしてくれたり、パソコンが得意な人はブログで発信したりと、それぞれ得意分野を生かしてみんなで協力しながら活動しているのがいいですね」

現在の会員は30名ほど。会員は「ながはくパートナー」という市立博物館のボランティアスタッフも含めると20代から70代と年齢層も広く、さまざまな仕事をしている人がいるので、異業種交流ができるのも高野さんにとっての楽しみだといいます。

長野市の八幡原史跡公園内にある長野市立博物館。プラネタリウムも併設されていて、季節に応じた星空の投影を楽しむことができる

機械好きが高じて「双眼望遠鏡」を自作

光害(街の過剰な光による公害)調査なども行っている「しなの星空散歩会きらきら」ですが、現在の主な活動は不定期の戸隠スキー場での観望会です。

「長野市でも街の明かりが増えてきてしまって、なかなか街なかで暗い星雲を見ることは難しくなりました。その点、戸隠スキー場は市街地から遠くなく、周囲に電灯がないのがいいんです」

また、今年の善光寺御開帳ではセントラルスクゥエアで開催された「にぎわいイベント」の一環として「まちかど星空観察会」と題した参加無料の鑑賞会も行いました。

「会員がセントラルスクゥエアに天体望遠鏡を持ち寄って、御開帳に来られた方々に月や土星、木星、金星などを見せました。これが結構好評で、当初は週1回で予定していたものの、最終的には追加でも開催し、なかには『御開帳よりよかった』という人もいたほどでした(笑)」

環境省が2003年から呼びかけている「ライトダウンキャンペーン」の一環として長野駅前で夏至の日に開催されている「キャンドルナイトコンサート」。ここでも毎年、観望会を開催している(提供:しなの星空散歩会きらきら)

実際に私もこの「まちかど星空観察会」に足を運んだのですが、普段はなかなか触れることがない天体望遠鏡にいくつも触れられ、明るい街のなかから星が観察できるうえに、スマートフォンで月が撮影できるなど機材も工夫されていて、思っていた以上に楽しく、また新鮮に星空を満喫することができました。そして何より、会員の皆さんが自分の望遠鏡を誇らしげに紹介している姿が印象的でした。そんな天体望遠鏡のひとつが、高野さんが自作した「双眼望遠鏡」です。

「私は機械いじりが好きなので、天体望遠鏡もメーカーのものをアレンジして使っています。普通、望遠鏡は片目で覗きますが、両目の方が楽で立体感も得られますよね。ただ、メーカーからは両目で見られる望遠鏡は販売されていないので、自分で作る必要がありました。そこで、メーカー製の同じものを2つ組み合わせて作ったんです」

初めて制作したのは15年ほど前。天文雑誌を見たり、メーカーや天文ファンが集まる県内外の星まつりイベントや双眼望遠鏡の集まりに出かけてノウハウを学び、試行錯誤の末に完成させました。

善光寺御開帳のにぎわいイベントに合わせてセントラルスクゥエアで開催された「まちかど星空観察会」。毎回、5台ほどの天体望遠鏡を用意し、数百人が参加するほどの盛況だった(提供:しなの星空散歩会きらきら)

「双眼望遠鏡の難しさは、同一のものを見るために左右を完全に一致させなければいけない点です。少しでもずれていると二重に見えてしまうので、アジャスターを組み込んで縦方向と横方向に微調節できるようにしました。完成まではしばらく思案して、作っては直し、の繰り返し。1年以上かかりました」

メーカーが双眼望遠鏡を作らない理由は、こうした微調節が難しいからだそう。また、天体望遠鏡を2本使うことから金額も高くなってしまうので、売れ行きも見込めない点もネックになっています。
こうして高野さんが制作した双眼望遠鏡には、普段、望遠鏡に触れている会員も驚いたそうです。現在は、3本目となる双眼望遠鏡を制作中の高野さん。今回は子ども向けの望遠鏡キットを使い、それを2本並べた小型のものを考えています。

「今回はなるべくお金をかけず、気軽に作って見ることができるものがいいと思って、双眼望遠鏡としてはこれまで世の中に登場しているなかで一番小さいものを狙っています」

さて、どんな双眼望遠鏡が誕生するのでしょうか。

「まちかど星空観察会」で用意された望遠鏡の中には、スマートフォンで月の撮影ができるものも。人気を集めていた

大気が安定する秋は天体観測に最適

ご紹介したイベントのほかにも、毎年、夏至に合わせて長野駅前で実施されるイベント「キャンドルナイトコンサート」でも観望会を実施したり、8月12日にはペルセウス座流星群を泊まりがけで観測する恒例行事を行っている「しなの星空散歩会きらきら」。定期的に訪れる流星群に合わせて、有志が集っての観望会も行っています。

「流星群は、年によって見え方の違いはあるものの、毎年同じ時期に現れます。特に、しし座流星群は見えるときと見えないときの差が激しく、2000年頃に現れた流星群は絶え間なく流れて印象的でしたね」

こうした流星群や彗星と合わせてしばしば起こるのが天文ブーム。しかし、天体望遠鏡を購入したものの、ブームが去ると押入れに眠っている、という人も少なくないのではないでしょうか。「天体望遠鏡は安くはなくもったいないので、星好きな人はぜひ私たちの会に入会してほしいですね」と高野さん。目下の目標は「会員を増やすこと」といいます。

「例えば、花火大会の駐車場や、一般道からの出入り口がある高速道路のパーキングエリアで観望会を実施したらおもしろいな、と思っています。私の場合はどちらかというと機材に興味があるのですが、会員の中には望遠鏡を持っていなくて星そのものに興味を持っている人も多いので、気軽に参加してほしいですね」

市立博物館内にある望遠鏡を覗く高野さん。「しなの星空散歩会きらきら」の会員には日食好きも多く、5年ほど前には会員同士で中国の日食を見に行ったのだそう。ちなみに長野市では2035年に皆既日食が見られるという

冬は空の透明度が澄み、星空観測に適しているといわれていますが、高野さん曰く、いまの時期のほうが安定していることが多いそうです。

「星空観測には、大気が安定していることが大切。星がキラキラと瞬くのは、大気が不安定だからで、落ち着いていると星がくっきりと見えるんです。そういう意味ではいまの時期は観測にいいんですよ」

奇しくも、今年、2015年は国際連合によって国際光年(光を知り、楽しむ活動が世界中で行われる1年)と宣言され、国際天文学連合(IAU)は、”宇宙からの光”(Cosmic Light)をテーマに国際光年の活動を進めています。この国際光年に、天体観測に最適な秋から冬にかけて、いま改めて長野市の星空を眺めてみませんか。

以前は市立博物館のボランティアとして長野市各地に出向いて月1回の観望会を行っていた「しなの星空散歩会きらきら」だが、数年前に博物館内に天文ボランティア団体が立ち上がったため、現在は協力という形でボランティアに携わっている(提供:しなの星空散歩会きらきら)

(2015/11/06掲載)

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会える場所 しなの星空散歩会きらきら

電話 入会の問い合わせは長野市立博物館 026-284-9011
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