ナガラボ ながの市の元気研究所

ナガラボとは!?

<念願の自分の店を立ち上げ、3年で目標を達成>

37歳を迎え「迷い続けて生きてきたことで、いよいよ人生の目的が信念としてわかってきた」と話す佐藤さん南千歳公園、通称「ぽっぽ公園」北側にあるセレクトショップ「La Barba(ラ・バルバ)」は、オリジナルブランドや上質な国内ブランド、流行をとらえたカジュアルウェア、イージーオーダースーツなど幅広く展開している人気店です。オープンは、2004年4月1日。ビル2階の15坪という非常に目につきづらい立地でスタートし、2011年に現在の場所に移転しました。そのオーナーが佐藤太一さんです。

もともと全国展開するセレクトショップの長野店で働いていた佐藤さん。その一人ひとりのお客様を大切にする姿勢と売上への貢献が会社から評価され、23歳で原宿店の最前線での接客に抜擢されると、同社の営業アイコンとしてさまざまな雑誌に登場しました。

南千歳公園の北側にあるビル1階が「La Barba」。2階は佐藤さんの妻が営むウエディングドレスショップ「Amarena」しかし、来客数が多い原宿店では効率性が求められ、1日中レジに立っていることもしばしば。「これは自分のやりたいことではない」と悩んだ末、退職して長野に戻ると、自分の店を立ち上げるために1年半の間、工場に勤務をして運転資金を貯金しました。こうして25歳でメンズセレクトショップ「La Barba」をオープン。とにかく資金繰りが厳しかったことから、物件は家賃が安い2階の15坪でしたが、それでも貯蓄は足りず開店直後はなりふり構わず必死に働きました。


「とにかく10年は続けたいと心に決めていました。というのも、当時から新規開店して3年間継続する店は半分、5年は約3割、10年続けられる人はほぼ2割しかいないといわれていたからです。だから3年をひとつのリミットと決め、売上の目標金額を定めて綿密に計画を立て、1日1日を営業してきました。そして、3年目に目標に達成したときに"思考は現実化する"と感じたんです」

こうして少しずつ商品数も増やして独自のスタイルを確立し、「大人の隠れ家」のような存在として周知されるようになった「La Barba」。新たにスタッフも雇用できるようになりました。


<病気と移転という人生の二大転機>

しかし、目標を達成した成功者としての驕りや甘え、若さもあり、その後の佐藤さんは自分のストイックなやり方をスタッフに押し付け、ぶつかってばかりいました。

普遍性が高いオリジナルブランドを軸に、カジュアルウェアやイージーオーダースーツなど幅広いアイテムを展開する「La Barba」。写真左に写るのが、現店長の清水英行さん「自分のやり方でなければ成果が出せる人間にはなれないと思っていましたし、そのほうがスタッフにとっても幸せだと考えていました。思えば、スタッフに対して感謝の"か"の字もなかったですね。完全に間違っていました」

そこで、3人目のスタッフとして、当時「La Barba」の常連客であり、以前に勤めていたセレクトショップの後輩でもあった現店長・清水英行さんを採用した2009年からは「スタッフを育成せず放っておく」方針に転換。すると、お互いにどんどん"ダメ人間"化し、比例するように売上は下がっていったそうです。
その頃、ひとつの転機が訪れます。佐藤さんが甲状腺の難病に冒され、半年ほど店に立てなくなってしまったのです。その間、清水さんが店を支えてくれ、お客様からは励ましの言葉をもらいました。

「そうした存在が、これまでの自分を築きあげてくれた"宝物"なのだと気付きましたし、お客様に喜んでいただくためには甘えがあってはいけないと思うようになりましたね」

レディースはベーシックで上質なアイテムからトレンド感の強いものまで、大人の女性が楽しめるセレクトを意識加えて、以前から移転先として目をつけていたテナントが空くという連絡が入ったのです。

「これまでの2階の店舗ではある程度認知が固まってしまったので、新しい顧客獲得のためにはコンテンツや立地の変化が必要だと思っていました。そこで、うちの妻が経営するウエディングドレスショップ『Amarena(アマレーナ)』の階下のテナントを、移転先としてずっと狙っていたんです。ここでも"思考が現実化"したんです」

こうして2011年に7年間を過ごした物件を離れ、現在の建物に移転。増床したことでレディースの取り扱いもスタートし、「Amarena」との共同事業も展開しました。


「僕はお客様の悩み(=潜在的ニーズ)はどういうものがあるのかをずっと考えていて、そうした"お悩み解決"の店をやろうと思っていました。そんな中で、結婚式場に出入りすることが多い妻の話を聞いたり、僕自身も結婚式にいくと新郎のスーツが妙に貸し衣装じみていると感じたり、オンとオフの両方で使える価格帯のスーツが意外と世の中にはないということに気づく中で、ウエディングとオーダースーツをドッキングさせた新しい衣装提案やサービスを展開していきたいと思ったんです」

こうして、顧客ニーズを拾いながらも自分の感性も頼りに、少しずつ取り扱いコンテンツを増やしていった新生「La Barba」。目立つ立地もあり、顧客の認知がぐっと増えて、来客数は1年間で2000人ほど増えたそうです。それに伴い、業績もV字で回復しました。

<書物やセミナーを通じて人生観が変化>

病気を経て健康管理の大切に気づいた佐藤さん。2014年には東京マラソンにも出場したそして、いよいよ大きな目標に掲げていた「10年」を翌年に控えた開業9年目。「この先の設定をしないと、それも"現実化"するぞ」と危機感を抱いた佐藤さんは、かねてから愛読していたナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』やデール・カーネギーの『道は開ける』『人を動かす』といったビジネス書や自己啓発書を再読したり、経営者のためのセミナーや講習会に参加してみることにしました。すると、過去の10年間の自分のできごとに対し、さまざまなことが実感として理解できたのです。

「書籍やセミナーで"人生において大切にしなければいけないもの"を学ぶと、その1つひとつが腹落ちレベルでわかりました。思えば、当初はスタッフに誠実に接せず感謝もしていなかった。それが彼らに伝わって店を離れてしまったんだな。でも、強く欲しいと願ってやってきたことは確かに現実化した。楽しく店だけやればいいという思いだったら、10年は続けられなかった。だから、この先の目的やビジョンなど、人生の原理原則を明確に決めなければと考えたんです」

そして、どんな会社にしたいか、アパレルを通して何を成し遂げたいか、人のためになりながらどういう人生を歩みたいかを自分自身に尋ね、「売上額ばかりを気にするのではなく、たくさんのお客様に囲まれて、その出会いに感謝し合いたい」という考えに至ったのです。

また、人は人によって支えられていることを学び、スタッフや現在の環境に感謝して、負の感情が生じたときは愛を持って接すれば伝わると考えて周囲と関わり合うようになりました。するとスタッフからも感謝されるようになり、自分自身の心も豊かになって世界観が変わったそうです。その結果、スタッフ数が増えて定着率も上がり、各自のパフォーマンスも向上して売上アップへとつながりました。

「つまり、感謝や誠実さ、愛など目に見えない無形のものを大切にすると、お金や人材など有形の資源が生まれることを肌で感じ、それが人生の豊かさにつながるとわかるようになったんです」

「4D Studio NAGANO」グランドオープンの日に撮影したスタッフおよび関係者の集合写真さらに、大病も経たことから、自分自身の幸せや夢を叶えるためには健康管理が最重要事項だと考えるようになりました。そして、マラソンに挑戦するようになったのです。今の自分自身の夢のひとつは、大好きなハワイで開催されるホノルルマラソンに出場すること。その言葉の裏には、熱い思いがあります。

「人生の成功とは、周りの人のためになる質と量を最大化することで、自分が本当に進みたい人生を歩むことだと思っています。多くの人がお金や時間がないという理由で夢を諦めてしまいがちですが、人生は片道切符しか持っていません。だから、やりたいことをやる本当の成功を掴みたいんです」

<「4D Studio NAGANO」を通じて地方創生を考える>

設計事務所の中にアパレルとカフェを併設した「4D Studio NAGANO」。住まいやインテリアから衣服まで、ライフスタイルをさまざまな角度からトータルに提案するそんな佐藤さんに、今年、さらなる転機が訪れました。セミナーや講習会に通ううちに、長野市にある(株)太陽電気工事(たいようデンキ)の佐藤僚太郎社長に出会い「埼玉の建築事務所の力を借りてカフェを併設した設計事務所を始める予定なので、ジョイントしないか」と誘われたのです。

「たくさんのお客様に囲まれたい」と考えていた佐藤さんにとっては、大きなチャンスでした。また「カフェ」と聞いて佐藤さんが思いついたのは、店主が同年齢で学生時代からの知り合いであり、小さなワークショップもたびたび開催している松本市の人気カフェ「amijok(アミジョク)」。

そこで、「amijok」の小島 剛さんにも声をかけました。こうして、住宅やインテリア、洋服、雑貨、カフェなど、こだわりをもった豊かなライフスタイルをトータルに提案する設計事務所「4D Studio NAGANO」が、7月31日、長野市北石堂町に誕生したのです。

「4D Studio NAGANO」では、住まいづくりとインテリアを同時に考えるセミナーを開催。次回は9月19日(土)に開催予定「『4D Studio』は思いがけない展開でした。でも、僕は少子高齢化を迎えるこれからの時代、地域の中で問題を解決するコミュニティが必要だと思っていたので、アパレルや住まいにとどまらず人と人をつなぐような場、情報共有の場になりうる『4D Studio』には大きな意義があり、地方創生のモデルケースになるのではないかと考えています。そして、僕たちの役割は、メンター(人生の助言者)としてお客様に感動を提供し続けること。その結果、ここが常に強いエネルギーを発する場となることで、地域とお客様に貢献したいと考えています」



4D Studio NAGANOの中に「shop in shop」という形態でオープンした松本市の人気カフェ「amijok」。現在は週末(金~日曜)限定で営業している
人はとかく人生に迷い、失敗や困難にもぶつかりますが、それをいかに乗り越えるかがその後の人生を大きく左右します。佐藤さんからは、それらを全力で乗り越えてきたからこその芯の強さと信念が感じられました。実は、インタビュー前日はちょうど佐藤さんの37歳の誕生日。スタッフからサプライズのお祝いを受け、心から幸せを感じたそうですが、その幸せも佐藤さん自らが掴み取ったものです。不惑(40歳)を前にすでに惑いのない人生を歩む佐藤さんが営む「La Barba」と「4D Studio NAGANO」。これらが長野市に新たな価値観を創造し、地域発展の起爆剤になるのではないかと自然と期待も高まります。

(2015.09.01 掲載)

会える場所:

セレクトショップ「La Barba」
住所:長野市南千歳1-7-13
電話:026-225-0076
http://labarba.jp/

4D Studio NAGANO
住所:長野市北石堂町1440
電話:026-266-0901
http://4dstudionagano.com/

ホームへ戻る
トップへ