ナガラボ ながの市の元気研究所

ナガラボとは!?

世の中には、プロレスラーでありながら政治家、主婦でありながら漫画家、お坊さんでありながらタレントであり実業家など、一人でいくつも肩書を持つ人がいます。

今回ご紹介するのは、普段はラーメン屋を営みながらも、山に猟に出て鳥を射止める"ハンター料理人"宮澤幸男さんです。

3月中旬のまだ肌寒い日に、私は佐久平国際射撃場に向かいました。
実はその数週間に宮澤さんのことを新聞で知り取材依頼をしたところ、残念ながら今は猟がシーズンオフとのことでした。
言葉に詰まる私に、「あっでもね、来週射撃をするから見においでよ」と気軽に声をかけてくれた宮澤さん。
まだ会ったこともない私を昔からの友人に声をかけるように、ごく自然に誘ってくださったことに感謝し、二つ返事で「行きます!」と答えました。

まさにハンターの眼になっている宮澤さん。銃を撃つまでの間、呼吸を止めたくなるほどの緊張感が走るフロントで宮澤さんの所在を尋ねていると「お~い新津さん、こっちこっち」と呼ぶ声がしました。そちらを向くと、赤いベストにオレンジのキャップそれに黄色の防音用イヤーマフという派手好きなドラえもんの様な方がいらっしゃいました。それが宮澤さんでした。

しかしタイミングが悪く、宮澤さんは数人の仲間の方とお昼ごはんの真っ最中。
それも、お肉や野菜やおにぎり、果物や漬物やお茶と、運動会で見るような御馳走の真っ最中。さすがに時間をおいてからお話を聞こうとしましたが、「全然、大丈夫よ」と、おにぎりをほおばりながら、食事中の取材を快諾してくれました。

「なんで猟をやっているかっていうとね、特に理由はないんだよね。ただね、人間生まれつき狩りをするDNAがあるんじゃないかなと思うよ。」

私の投げかけた最初の質問に、いたってシンプルにそして正に動物のような感覚で答えてくれました。

確かに、そうかもしれません。釣りをしたり、子供がカブトムシやトンボを捕まえるのも狩りと言えば狩り。それが宮澤さんにとってはたまたま鳥猟。そういう意味では、宮澤さんの言うことは、ズバリ的を得ていると思いました。いきなりハンター宮澤に射ち落とされた気分になりました。

宮澤さんが狩りをやりたいと思ったのは少年の頃からだといいます。

「親戚のおじさんが狩りをしていてね、山から獲物を捕って帰ってくる姿を見て、俺も狩りをしたいなと思ったね」

子供の頃は、私にもトンボやカブトムシを捕まえたいという願望はありましたが、鳥というのは頭にありませんでした。しかも、「捕まえたい」ではなく、「狩りをしたい」という願望があったというのですから、なかなかの根性の据わった少年です。そんな願望を抱いた宮澤少年は日本の法律上、猟銃の免許を取ることができる20歳まで待ちに待ち、ようやく猟を始めたそうです。

「初めて鳥を獲った日はね、山に入って2年目の年かな。15分くらいたってからね、10メートル先のほうから、カタカタゴトゴトって音がしてね、その音ですぐにキジとわかって、ドーンと1発で仕留めたね。すごい嬉しくてね、すぐに誰かに自慢したかったんだけど、一人で山に来たもんだからさ。とりあえず、はやる気持ちを抑えて、キジが腐らないように枝をこうやって、くの字に折り曲げて、それを肛門から入れて内臓を取って持ち帰ったのよ。その日に肉うどんにして食べたんだけど、おいしかったね」

驚いたのは、宮澤さんの記憶力。確かに人間は印象深い出来事はある程度は覚えているものですが、山に入ってからの時間や枝の曲げ方、その日に食べたうどんの種類など、記憶が実に鮮明なのです。

「好きなことに関しては、記憶力があるかもしれないね、皆もそうでしょ」

他にも、猟をした日の天気や時間、鳥の種類や場所などを質問するとポンポン答えが返ってきました。

いくら好きな事といえども、ここまで事細やかに記憶できるでしょうか。あくまでも謙遜する宮澤さんですが、猟をする上では狩りをしやすい場所、時間帯、天気、そして危険な場所を覚えておく必要があるため、自然と記憶力が鍛えられたのかもしれません。

しかし、そんな記憶力抜群の宮澤さんでも、思い出したくない危険なこともあったそうです。それは
「ダム湖に落ちちゃったの」
たくあんをかじりながら、あっさり言う宮澤さん。カモ猟をしていて、射止めたカモを拾おうとダム湖に手を伸ばすと、バッシャーン。気付くと、ただ一人山中のダム湖に。
真冬、湖、孤立無援。最悪の状況の中で、宮澤さんは、必死に捕まれそうな木の枝を探して難を逃れたとのことでした。

「あれは、5分くらい湖にいたかな」

こんな危機的状況下でも、時間を記憶している冷静さ。そして、こんな危険な目にあった話でも楽しく聞こえてしまうのは、宮澤さんの親しみやすいキャラクターあってのことでしょう。

「あとね、撃ったヤマドリが、顔面に直撃して眼の周辺を打撲したことがあったね。」

宮澤さんいわく、ヤマドリは一番狩りが難しい鳥そうです。まず、圧倒的に数が少なく、山の奥の日の当たらない薄暗い場所にしかいないからだといいます。

「究めつけにね、とにかくスピードが速い。石が飛んでくるような感じ。」

ヤマドリいう名前を聞くと平凡な鳥のように思えますが、ハンター仲間からは、ヤマドリを獲ると一目置かれるらしいのです。釣りでいうところのカジキマグロくらい難しい獲物だそうです。

そんな危険と隣り合わせの猟ですが、その魅力はどこにあるのか尋ねました。

「自然が相手だから、思うようにはいかないんだけど、だからこそ成功した時は嬉しいんだよね。」

4つ目のおにぎりを食べていた宮澤さんが、口にご飯粒をつけながら微笑みました。
そして、宮澤さんが猟をするうえで大事にしていることがあります。
それは、「命を大事にする」ということです。
猟をしているのですから、矛盾しているように感じるかもしれません。しかし、宮澤さんはこう語ります。

「狩りをしたら、必ず獲物を回収するね。捕まえたからには最後まで責任を持たないと」

当日はラーメン屋で働いているアルバイトの女の子も射撃の見学に。宮澤店長は知識が豊富で学校の先生みたいと人気者この言葉の奥には、人間は生き物の命を戴いて生かされている、だからこそ命を最後まで粗末にせず戴くという意味が込められているのでしょう。その気持ちを大事にしているからこそ、真冬にダム湖に落ちてまでカモを拾ったのです。
宮澤さんからは、動物としての原点を教えられたような気がしました。

ようやく昼食が終わり、射撃場へ向かう宮澤さんに同行しました。
先ほどの陽気な宮澤さんとは打って変わり、射撃レーンに立つと、まさに獲物を狙うハンターの眼に豹変します。
宙に舞うクレー(円盤)を、爆音を立てながら次々に命中させ、たまに外すと首を横に振り、悔しがる宮澤さん。射撃は猟の腕前を落とさないためとのこと。
見れば見るほど、実際に猟をしているところを見たくなりました。シーズンが始まったら、是非同行させてもらおうという気持ちを抱き、3ラウンド終えた宮澤さんに、聞き忘れた事を聞いてみました。

「そういえば、ラーメン屋さんでも、猟の獲物を使って料理しているのですか?」
「そうだよ、かもなんラーメンに、ヤマドリラーメンね」
「是非、食べたいのですが」
「いいよ、じゃあね、射撃が終わったら、お店においでよ」

これまた、近所の子供に声をかけるような感じで、快く誘っていただきました。

ランチタイムを過ぎても厨房でメニューと闘う宮澤さん。被っている黒のハット以外にも10種類以上はあるという大のハット好き当日は時間の関係で伺えず、後日お店に伺うと、ランチタイムを過ぎた14時近くにもかかわらず、お店は大繁盛でした。
店内では、黒のハットを被り、ネイビーのポロシャツというカフェスタッフのような宮澤さんがいました。しかもニッコリ笑顔。無精ひげにねじりハチマキで無口という、いわゆるラーメン屋の頑固おやじとはかけ離れていました。しかし、オーダーが入るや否やフライパンを握り次々と来る注文と格闘する宮澤さん。その姿は、数日前に見た"ハンター宮澤"そのものでした。

ようやく一段落すると、宮沢さんがお店で一番人気の味噌ラーメンの上に大きなかも肉がトッピングされた「かもなんラーメン」を作ってくれました。正直かも肉は食べたことがなくドキドキでしたが、味噌のスープにかも肉の味が絶妙にマッチして、かも肉デビューの私もかなりおいしく食べられました。
かもなんラーメンは、冬季限定800円。一羽で5~6人前のかもなんラーメンが作れるそうです。おすすめの逸品です。是非、ご賞味ください!

帰り際、ヤマドリをワイルドに片手で持ちながら、満腹の私を見送る宮澤さんに夢を聞いてみました。

「俺本当はね、船が一番好きなのよ。だから、船を作りたい。」

還暦を迎えた宮澤さんに、また一つ肩書が増えようとしています。

これが冬季限定かもなんラーメン800円。早く冬よ来い!

(2014.05.09 掲載)

会える場所:八珍

住所 長野市篠ノ井山布施8733
TEL 026‐229‐3727
営業時間 11時~21時(定休日 第3木曜日)

八珍味噌ラーメン    680円
信州味噌ラーメン    650円
ちゃんぽんめん     750円
ピリ辛八珍みそラーメン 730円
おいしい餃子      300円
など。
その他、季節限定らーめんや、セットものもあり。

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